世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

聖バルバラ

2016-08-26 04:14:37 | 霧の風景


ヤン・ファン・エイク、15世紀ネーデルラント、北方ルネサンス。

聖バルバラは塔に閉じ込められた処女だ。永遠に出てくるなと呪いをかけられた。なぜなら美しい彼女が外に出てくれば、外の世界にいる偽物の美女の正体がばれるからだ。本物の美女は永遠に出てきてはならない。なぜなら美女が馬鹿でなければ、男は悪いことができないからだ。だが美女は塔の中で勉強をしているうちに、天使の翼が生えてきた。そしてその翼で塔を出て、草原に降り立った。その美しさを見た地上の人間たちは驚き、一斉に彼女を殺そうとした。あまりにも美しく、良いことばかりをする女が一人いるだけで、人間の世界はすべて駄目になってしまうからだ。だがどんな人間の攻撃も、彼女を殺すことはできなかった。彼女は神の前に正しい美しさを全うして死んだ。ただそれだけで、世界中の女が駄目になり、男が駄目になった。
人間はやっとわかったのだ。すべては女を嘘にしてしまったから、できていたことなのだと。






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする