先日の名波選手の引退試合は、久しぶりにサッカーの楽しさを味合わせてくれたイベントでした。Jリーグの往年の名選手が一堂に会してのプレーの数々は、サッカーって見るのもやるのも本当に楽しいスポーツなんだなと再認識させてくれました。名波選手の浮き球のパスとか、ラボーナとか、オーバーヘッドにボレーシュート。魅せてくれました。本来サッカーは、play footboll,jogar futebolというようにplayもjogarも遊ぶという意味です。
そんな中で、久しぶりに見た中田英寿のプレーは、往年のものとは違うとはいえ、今の日本代表に欠けているものを思い出させてくれました。久しぶりに彼のプレーが見たくなって探すとたくさんありました。そんなひとつがこれ。迫力のある力強いプレーに圧倒されます。スピードも結構あります。Hidetoshi Nakata in Serie A !
忘れられないのは、ローマでスクデットを勝ち取るきっかけになった豪快なミドルシュート。
彼の凄かったところは、その適応力。セリエA仕様に躰とプレースタイルを変えていったこと。彼は非常にインテリジェンスに溢れたプレーヤーで、Jリーグとのサッカーの違いを適格に見抜いて、躰やプレースタイルを変えました。その柔軟性は見事で、現在の欧州組で適応できないでいる選手を見ると、彼の凄さが分かると思います。今の欧州組で同じような片鱗を見せているとしたら、若くして渡欧した森本は別として長谷部があげられます。結局は、才能があれば後は適応力ということになるのでしょう。代表も同じで、チームとは別の適応力が求められるはずです。
中田のプレーは、倒れない。たとえ倒れてもパス、シュートはする。プレスがきついからといってダラダラと下がってこない。不必要なバックパスはしない。トップスピードでドリブルしながら相手をかわせる。速く正確なパスを出せる。ミドルも果敢に狙う。常に周りを見るけれども、ひとりで勝負できるところはひとりで行く。南米すら欧州化した現在のプレースタイルではスピードとフィジカルは不可欠、判断の速さも必須。
彼の戦績はセリエAの歴代の名選手と比べてみても、下記のように全く見劣りしません。
ジダン 5seasons 151matchs 23goals
ベロン 9seasons 25matchs 28goals
ルイ・コスタ 11seasons 313matchs 42goals
中田英寿 7seasons 182matchs 24goals
今現在の欧州組と比較すると、いまだに彼を抜いた選手はいないということがよく分かります。
そんな訳で今の代表に彼がいたらと、ないものねだりをついしてしまう訳です。足元でこねくりまわすだけのプレイや、バックパスの連続、バイタルエリアの外でパス交換を延々とするサッカーでは世界に通用しないのは明白。彼なら森本や本田、長谷部達とならどんなサッカーをするんだろうと。どういう戦術が成り立つのだろうと想像してしまう訳です。森本や岡崎なら彼のキラーパスを受けられるのではないかと。当時は、彼だけ別次元にいました。それは試合を実際に見ていても感じました。これは無理だなと思ったものです。ピッチにいる他の代表選手は、それを肌で感じていたに違いありません。結果いじけてしまう選手が出てチームは空中分解。本来それをまとめるのが監督の役目なんですが、監督は若葉マーク。結果は見えていました。
現在の代表を見ても、やはりアジア仕様の感は拭えません。現実的に下から数えた方が早い実力なんですから、それに見合ったメンバー構成とチーム作りをすべきだと思うのです。自分たちのサッカーを貫くなんていうのは強豪チームのみに許された言葉。善戦したなどという言葉のみの敗戦よりも、現実的対応であげた一勝の方が、後々のためになるでしょうし、記憶に残るでしょう。
現代表の課題は、ワントップが機能したためしがないのによく使う。プレスが90分もたない。相手にプレスされると打つ手が無くなる。フリーでも(バック)パスを選ぶ。右サイドが確実に弱く狙われる。センターバックの足が遅い。バイタルエリアでもまずパスを選択する。相手チームが分析し、確実に狙ってくるだろう弱点に対して現実的な対応策と、そこから勝機を見出す策をたてて欲しい。
中田の東京での代表の試合は、ほとんど見に行ったと思うのですが、複数の敵に囲まれながら脱出し、即座にピッチの対角線上にいるFWにロングパスを正確に出し、観客をオーッ!とどよめかせるようなプレイヤーは、今のところいませんね。観客はスタジアムの高いところから俯瞰して見ているわけですから、プレーヤーよりも全体が見えているわけです。その観客がどよめくのは、俯瞰しているにもかかわらず、パスを受けた選手をボールが行って始めてそこに味方がいることに気が付いたからなんですが、そのくらい視野が広かった。彼には自分の視野を高所から瞬間的に俯瞰して見る能力があるのではないかと思いました。こういう能力がどうやったら身に付くのか分かりませんが、通常のトレーニングとは違う方法が何かあるのではないかと思ったりします。
昨今の各年代の成績やトップに上がってくる選手の層の薄さやタレント不足をみると、なにか育成方法が間違っているのではと思わずにはいられません。タレント(才能)の発掘にもっと優秀な人材を宛ててもいいんじゃないかと思います。そして圧倒的に足りないのは高レベルでの経験。文化や人種の問題にすり替えていては、日本サッカーに将来はないわけで、ブラフではなく本当にジュール・リメ杯を目指せる、獲得できるチームを本気で作って欲しいものです。生きているうちに日本のW杯優勝を見てみたい。それが日本の全サッカーサポーターの願いであるはずです。
岡田監督にはどういう意図があるのか全く不明です。
学習能力があるなら大久保のFWはないでしょう。MFでそこそこ動いたのは地元だからでしょうが、実効性は?ファウル連発は危険すぎます。
前線で犬走りしても二列目はフォローに行かない。サイドを使えない。足元パスばかり。裏を狙うは完全に読まれた。
あの程度のプレスで、中盤はパス回しどころかビルドアップもできない。ボランチがバックスに吸収される体たらく。
選手のこの試合に対する動機付け(モチベーション)も不明確。
興行的にみても大失敗。お金を払って見る試合ではなかったですね。
いったいなにがしたかったんですかね。岡田監督!?
誰か、そのコンセプトが間違っているんですよという評論家やマスコミはいないものですか。いくらなんでも、この三試合見れば子供でも分かります。
そして、問題は選手がそのコンセプトに疑問を抱き始めた。或いは、ダメだと思い始めたこと。岡田ジャパンの崩壊です。
韓国戦で明らかになるでしょうと言いたいところですが、韓国もあの体たらく。但し、シュートへの意識は日本よりかなり上。
犬走りとパス回しに狂想曲を奏でている日本よりはかなりマシです。W杯で笑い者になる前に大鉈を振るいましょうよ!
代表監督の仕事は、戦術、連携以上に、チームをひとつの戦う集団にまとめるということでしょう。
「あんたを男にしてやるよ!」と言ってピッチに出ていったあのときの仏代表のように。
今の日本代表には全くそれが感じられません。
一刻も早く監督を、カリスマ性のある人心掌握に長けた監督に代えるべきです。