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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

春の儚い妖精・節分草がやっと咲いた北信濃の遅い春(妻女山里山通信)

2012-03-21 | アウトドア・ネイチャーフォト
 暖かい春ならば3月上旬に咲く千曲市の節分草がやっと咲き始めました。千曲市には二カ所の群生地があります。戸倉駅の西のキティーパークの近くにある群生地と、倉科の杉山にある群生地。前者の方が大規模で観光化されています。日当りもいいので咲き始めもやや早いようです。

 例年通り、倉科の三滝近くにある群生地に寄ってみました。ここは半日陰の杉林の林床に群生地があるため咲き始めも遅く、戸倉ほどの群生もありませんが、訪れる人も少ないので静かに撮影ができます。今春は寒さで開花が昨年より1週間ほど遅れています。そのせいか先日出会ったニホンカモシカは、まだ冬毛のままでした。

 節分草やカタクリのように早春に咲き、2、3ヵ月でその年の生活サイクルを終え消えてしまう植物は、スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral、春の妖精、春のはかない命)と呼ばれます。節分草は、万葉集には詠われていませんが、平安時代の「本草和名」や「倭名類聚鈔」に「以倍仁礼(いえにれ)」という古名で登場します。

 節分草の種には、アリをひきつけるエライオソームという物質がついていて、種と一緒にアリが巣に運んで発芽する虫媒花(アリ散布植物)です。日本には200種類以上あり、アリが絶滅すると絶えてしまう植物です。種子から開花まで3年以上かかるので、林床の環境が良い状態で続かないと生育ができません。昔は雑木林に入って薪広いや草刈りをしたので、明るい林床にセツブンソウがたくさん咲いたのです。カタクリと同様、人の暮らしと密接な関係にある植物だったのです。ですから、自生地の環境が破壊されると真っ先に消える植物です。(絶滅危惧植物II類)

 節分草はキンポウゲ科セツブンソウ属で、本州の関東地方以西に分布する高さ10センチほどの小さな多年生草本。花の直径は約2センチ。花びらに見えるのは萼です。先が黄色く見えるのが退化して蜜腺になった花びらです。雄しべのスモーキーヴァイオレットと白、黄色の組み合わせが、北欧の妖精の様な雰囲気を感じさせる可憐な花ですが有毒です。

 帰りに立ち寄った三滝は、月の名所鏡台山を水源とする三連の滝で、普段は水量が少ないのですが、雪解けの水が滔々と流れていました。
「三瀧山岩の苔間に住ながら思ひくらせし瀧の水かな」(西行法師)
 此歌里俗の口碑にして、確乎たらず。(倉科村誌)

 北信濃の里山では、まもなく梅、壇香梅(だんこうばい)、木五倍子(きぶし)が咲き始めます。

【信州の里山】春の花 Spring Flowers in Shinsyu


フォト・レポート「花と新緑の鞍骨城跡」

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