モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

信州で蕎麦を食らう

2006-08-11 | 歴史・地理・雑学
信州に帰ると必ずどこかの蕎麦屋に寄る。戸隠の「うずら屋」、軽井沢の「水音」、小諸の「富士屋」「草笛」、稲荷山の「つる忠」等々。中でも真田十万国の松代の佐久間象山記念館近くにある「沙羅寿庵」は、お気に入りで、ほぼ毎回立ち寄っている。体育会系のご主人が打つ蕎麦は細く角が立っている。ザルをひっくり返して盛るようなけちなことはしない。並でもかなりの盛りだ。

今回は、田毎の月で有名な姨捨に寄ったついでに、ネットで見つけておいた「まる天」という蕎麦屋に寄った。立つことで人気が出たアライグマがいることで有名になった茶臼山動物園の麓にある。
店の特徴等は、ホームページによると・・・
●長野県信濃町産霧下そば使用●石臼挽き手打ちそばの提供
●普通細切蕎麦●普通太切田舎蕎麦●幻の寒晒蕎麦(3月から6月ころのみの限定)
●健康と美容にも力を入れており、 納豆そば、おろしそば、カモセイロそばなども 用意致しております。
とある。

写真左上は、太切田舎おろし蕎麦。左下がもり蕎麦。右は大盛り。太切田舎蕎麦は、直径が40センチぐらいの漆の皿で出てくる。粋にすすれる蕎麦ではないが、咬めば咬むほどに蕎麦の甘みがにじみ出てくる。出汁はもり蕎麦とは分けているようで、カツオ風味にアジ節やアゴ節のような野趣豊かな風味が加わり、それが田舎蕎麦ととてもよく合っている。おろしは、本来は冬のもので、更級名物の中之条大根(ねずみ大根・辛味大根)を絞った汁に信州味噌を溶いて食べる「おしぼり」が正統だが、夏なので仕方がない。けれども、大根に味噌を混ぜ、出汁を適当にはって蕎麦をからめて食べると絶品である。もり蕎麦は580円だが、大盛りが100円増しというのがなんとも嬉しい。実に良心的な店だ。昨今、江戸では趣向に走った高くて旨い蕎麦屋が増えているが、本来蕎麦は日常食だ。こうでなきゃ。(残念ながら閉店しました)

信濃出身の小林一茶には、蕎麦を詠んだ句が35句あるそうだ。
「蕎麦の花 江戸のやつらが なに知って」とは、粋な食い方はこうだとかと知ったようなことを言う江戸っ子に対する皮肉なのか。
「蕎麦時や 月の信濃の 善光寺」善光寺の屋根越しに昇る月を愛でながら蕎麦をすすったのか。
「山鼻や 蕎麦の白さも ぞっとする」とは、どんなおぞましい事を連想させる風景なのか。
「そば屋には 箸の山あり 雲の峰」洗った箸を積み重ねた様だろう。昔は使い捨ての割り箸は無かった。
「信濃では 月と仏と おらが蕎麦」は、最も有名な句なのだけれど、一茶の句ではないという説があるそうだがどうだろう。うんちくはどうでもいいが、旨い蕎麦がいつまでも食べられるようにと願う。
コメント (5)
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