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役に立たない法律のお話をしましょう

基本法行政に対する批判 = 日経のコラム

2005-08-14 00:31:47 | Weblog
 8月2日の日経新聞の「大機小機」というコラムが,「基本法行政の経済学」という見出しで,「なんとか基本法」という法律による行政の問題を取り上げている。

 いわく,基本法によって必要な施策が実施されるのは結構なことだが,これを経済的な視点で見ると,
(1) 行政の肥大化
(2) 合成の誤謬,すなわち,基本法は当の政策的課題が重点的に扱われることを期待して制定されるが,基本法が多数できてしまうと,結局どれも優先されないことになって,何もやらないのと同じことになる
(3) 費用と便益の関係,すなわち,基本法の制定にエネルギーを費やすことや,基本法によって国会等への報告事項が増えることは,かえって費用を増すだけで,それなら予算措置で住ませた方が効率的だ
という問題がある,今必要なのは,「基本法を整理する基本法」ではないか,というのである。

 なるほどね,というところではある。

 そこで,ちょっとコメントしてみたい。


 まず,行政の肥大化であるが,これは,行政を非難するよりは,むしろ何でも行政頼みという国民と,その意を受けた国会議員の意識改革を図る必要があると思う。いつも,マスコミの論調を見て思うのだが,基本的には行政の過剰介入を非難していながら,民間ではコントロールできなかった都合の悪いことが生じると,行政が介入しなかったことを非難している。しかし,行政の肥大化の背景に,民意があるということは見逃してはならないことのように思える。


 合成の誤謬も,そういえばそうだな,というところではある。多分,各省庁で少なくとも1本くらいは基本法を持っているであろうから,省庁レベルで考えると,そろそろ合成の誤謬か,という印象も確かに感じられる。農水省などは,「森林・林業基本法」「食料・農業・農村基本法」「水産基本法」と3本もあって,農水省の所管分野で基本法のないものがあるのか?,と思えてしまう。しかし,そうはいっても,まだまだ行政の守備範囲は広いから,各省庁の内部で見れば,力を入れている分野と,そうでない分野があるということになるのであろう。まあ,合成の誤謬になるまでには,もう少し時間がかかりそうに思える。


 3つ目の費用と便益の問題で,ご指摘はごもっともという感じもするが,私としては,どうも,予算措置による行政というものには,かなりの抵抗がある。確かに,行政の側としても,法律がなければ新規の予算を取るのは難しい(財務省が認めてくれない)ということもあるので,ある意味「仕方なく」法律を求めるのであろうし,予算措置でできる方が機動的でよいという考えもあるのだろうが,やはり「法律による行政の原理」からすると,どうも,法律に確たる根拠のない,予算措置による事実上の施策というものには,個人的には抵抗がある。


 「基本法を整理する基本法」は,なるほどね,ではあるが,こんな省庁横断的な法律ができるわけがないというのが正直なところである。


 ただ,指摘はごもっともといわざるを得ない。行政で難しいのは,スクラップができないことである。一旦施策が始まってしまうと,人もついているし,予算もついている,単純にスクラップしてしまうと,人を動かすポストはないし,予算は削られておしまい,スクラップアンドビルドのビルドの部分ができない,ということになるらしい。

 そんな融通の利かないことでどうすると言いたいところだが,かつて,どこかの雑誌に,どこかの地方自治体で,予算を削れば,その削った分の幾らかは(全額ではない),新規事業を認めてやる(無条件で?),という施策を採ったところ,行政改革が進んだという記事があったように覚えている。

 人の問題はさておき,予算の問題だけからすると,このような施策は,結構効果的ではないかと思うのだが,多分,国レベルでは,財務省の査定権限を制約するようなこんな意見は,通らないというのが現実であろう。そうなると,結局のところ,今ある施策は堅持する,新規の施策は立法の援助を得てでも(スクラップなしに)獲得していく,という方向しかないことになる。

 これではねぇ,というところか・・・



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