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石綿(アスベスト)による肺がん(労災)

2005-07-17 02:55:52 | Weblog
 ここ数日,アスベストによる肺がん(中皮腫)による死者が相次いでいることが報じられている。また,労災,それも職業病の分野について新たな問題が提起されたといえよう。

 最近の調査によると,平均潜伏期間38年,平均発症年齢61歳ということであり,アスベストを扱う職場を離れて長期間経過してからの発症になることも多く,これまでは労働者の側に肺がんの原因がアスベストであるとの認識がないため,労災の申請も,5年の時効で阻まれることも多いとのことである。

 こうなると,かなりの確率で,企業に対する損害賠償請求訴訟が提起されると予想される。労働環境による疾病を原因とする損害賠償請求訴訟は,じん肺や六価クロム(がん)などの先例がある。じん肺や六価クロムによる各種の障害については,そのような障害が生じること自体は随分古くから知られていたもののようであり,時代が下るにつれて,その健康被害の実情が明確にされるとともに,職場環境の対策も次第に工夫されてきたという経過がある。

 これに比べると,石綿による肺がんは,WHOが石綿を発がん物質と認定したのが昭和55年(1980年)ということであり,原因物質への暴露と疾病との因果関係が明確に認識されたのも,かなり新しいことだということになる。このあたりが,訴訟でのしY庁立証に何らかの影響を及ぼす可能性がある。

 あるいは,石綿がじん肺を起こす物質であることは古くから知られており,じん肺防止と発がん防止の対策は共通している(要するに吸入しないこと)ことからして,じん肺防止の方策があることから,肺がんもという,ちょっとショートカットの理屈が展開される可能性もあり得ることだろう。

 それとともに,国家賠償請求訴訟も起こる可能性がある。これまでの職業病では,余り国家賠償請求は起こされてこなかったが,この前の炭鉱じん肺訴訟で,最高裁が国の責任を認めたことから,これを追及しようとする動きが出てきてもおかしくはない。炭鉱じん肺訴訟では,エネルギー政策の転換(石炭から石油へ)を受けて,多くの炭鉱が閉鎖され,炭鉱を経営していた会社も消滅して,使用者に対する損害賠償請求訴訟を起こせないじん肺患者が多かったという特殊事情があったが,最高裁での勝訴を受けて,じん肺以外の職業病でも,国家賠償が可能かどうか試してみようとするのは,それに興味のある弁護士としては当然のことともいえる。

 これからしばらく,どのような動きが生じるか興味のあるところである。

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