おっきな太陽に背を向けるように、僕はどこかの街のどこかの道の端っこを歩いていた。
もう歩き出してから何ヶ月、いや何年経っただろう。ひたすら土やアスファルトとにらめっこを続ける毎日だった。
と言っても、僕は特に歩くことが好きなわけではない。むしろ常にやめどきを考えていた。歩くことで何かを得た実感もなかったし、快楽や満足感を味わったこともない。ただ、歩くことをやめたら大事な何かを失いそうな気がして、歩くことをやめそこなっていたまでだ。
バックグラウンドが朝日なのか夕日なのか、季節が春夏秋冬のどれなのかさえも分からぬままに、ふと少しだけ顔を上げてみる。真っ先に目に入ってきたのは薄ピンクのジャージ上下、両耳にイヤホンをはめた若い女性だった。
彼女は走っていた。それもかなりのスピードで。風をみじん切りで切り刻むように、荒い息遣いで駆け抜けてゆく。なのに表情は僕よりずっと明るくずっと爽やかだ。
車も次々と通り過ぎてゆく。当たり前だけれど、僕より速いスピードで。そんな片田舎の片隅で、走ることもできず、止まることもできず、ただぼんやりと歩く僕がいる。取り残されゆく僕がいる。そんな不器用な僕がいる。
誰が作ったのかも分からない轍の上をただ歩いたって、その延長線上にきっと幸せな未来なんて描かれないのだろう。やりがいのある仕事と出会うことも、誰かと結婚することも、普通の人が当たり前に享受できる幸福が僕にとっては夢のまた夢だ。幸せはいつも僕の隣をスポーツカーのスピードで駆け抜けてゆく。
でも、ここで歩みを止めたら今度こそ粗大ゴミの日に捨てられてしまいそうな気がして、周りの風景から目を背けたままに、僕はもうちょっとだけウォーカーズハイを信じてみようと思った。
もう歩き出してから何ヶ月、いや何年経っただろう。ひたすら土やアスファルトとにらめっこを続ける毎日だった。
と言っても、僕は特に歩くことが好きなわけではない。むしろ常にやめどきを考えていた。歩くことで何かを得た実感もなかったし、快楽や満足感を味わったこともない。ただ、歩くことをやめたら大事な何かを失いそうな気がして、歩くことをやめそこなっていたまでだ。
バックグラウンドが朝日なのか夕日なのか、季節が春夏秋冬のどれなのかさえも分からぬままに、ふと少しだけ顔を上げてみる。真っ先に目に入ってきたのは薄ピンクのジャージ上下、両耳にイヤホンをはめた若い女性だった。
彼女は走っていた。それもかなりのスピードで。風をみじん切りで切り刻むように、荒い息遣いで駆け抜けてゆく。なのに表情は僕よりずっと明るくずっと爽やかだ。
車も次々と通り過ぎてゆく。当たり前だけれど、僕より速いスピードで。そんな片田舎の片隅で、走ることもできず、止まることもできず、ただぼんやりと歩く僕がいる。取り残されゆく僕がいる。そんな不器用な僕がいる。
誰が作ったのかも分からない轍の上をただ歩いたって、その延長線上にきっと幸せな未来なんて描かれないのだろう。やりがいのある仕事と出会うことも、誰かと結婚することも、普通の人が当たり前に享受できる幸福が僕にとっては夢のまた夢だ。幸せはいつも僕の隣をスポーツカーのスピードで駆け抜けてゆく。
でも、ここで歩みを止めたら今度こそ粗大ゴミの日に捨てられてしまいそうな気がして、周りの風景から目を背けたままに、僕はもうちょっとだけウォーカーズハイを信じてみようと思った。