雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

プラシーボ効果 ・ 小さな小さな物語 ( 495 )

2013-08-17 10:24:06 | 小さな小さな物語 第九部
いろいろと噂されていた日銀の総裁・副総裁人事は意外なほどスムーズに国会の承認が得られ、新しい体制での通貨政策が実施されていくことになりました。
「アベノミクス」という言葉も、すっかり定着してしまい、日銀首脳の交代により首相提言の金融政策が正式にスタートしたわけです。
三本の矢などと、何とも古めかしい喩が首相の経済政策のスローガンになっているわけですが、喩は古くとも新鮮な息吹を吹き込んで強力な経済政策を展開してくれることを期待しています。

次は新年度予算の規模と内容が経済政策の次の柱ともいえます。首相の思惑通りの予算が組めれば、第一と第二の矢は放たれたことになります。
もっとも放たれた矢は、いくら強弓であっても風の影響も受けるでしょうし、障害物にぶち当たれば止まってしまいます。一旦弦を離れれば、後は矢の気の向くままというわけにはいかず、適切で強力なフォローが絶対に必要です。
株高・円安と、新首相就任以来、様変わりの好転を見せていますが、まだまだ株価も円相場もこれからが正念場です。
少し円安に振れたからといって、まだまだ「円」は世界最強ともいえる通貨です。強い商品はどんどん販売すればいいのです。販売すべき「円」は、どんどん発行すればよろしい。国債を発行すればよいのです。
財政規律がどうと難しいことを仰る方が登場してくれることでしょうが、今更五十兆円や百兆円程度の借金が増えたからといって、どうってことはありませんよ。何もしなくじっとしていれば、そのくらいの借金は間違いなく積み上がっていきます。どんと、経済対策につぎ込めば、後から税収がついてきてくれますよ。

「プラシーボ効果」という言葉があります。
「プラシーボ」というのは「偽薬」と訳されるそうですが、つまり「偽物の薬」のことです。
「プラシーボ効果」というのは、信頼される人から、良い薬だといって飲まされると、それが水とか小麦粉であっても、病状に良い効果を与えることがある、ということを指します。
このような話は、日常生活でも時々目にすることがあります。お母さんが幼い子供に、「痛いの痛いの飛んで行け!」と呪文を唱えますと、幼い子供の痛みは本当に軽減されるそうですから、これもこの効果の一つではないでしょうか。

実は、順調に船出をした新政権ですが、経済政策で見た場合、それほど具体的な政策が実行されたわけではありません。
言うならば、「プラシーボ効果」のような状態なのです。「痛いの痛いの飛んで行け!」と同じで、このお母さんの言葉はとても大切で有効なのですが、いついつまでも効果が続くものではありません。
要は、そして最も大切なのは、第三の矢である具体的な経済政策がどのように打ち出され実行されるかということです。
そのためにこんな提案はどうでしょうか。
一つは、キプロスの預金に対する課税のまねではありませんが、わが国を代表するような有力企業の社内保留金の一定割合を強制的に何らかの形で支出させるのです。社員への配分、地域への配分、設備投資など使途は企業に任せればよろしい。
そしてもう一つ、消費税の引き上げを二年ばかり延期させることです。それによる税収の落ち込みなど大したことではありません。むしろ、上向きかけている景気動向の頭を押さえることの方が遥かに経済的な損失ですよ。
当然、こんなことを上回るような施策を考えてくれているのでしょうが、「ブラシーボ効果」が切れた後には、本当に有効な薬が必要だということだけはお忘れなく。

( 2013.03.23 )

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