雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

『逃げる勇気』を ・ 小さな小さな物語 ( 487 )

2013-08-17 10:40:15 | 小さな小さな物語 第九部
犯罪のない社会など望むべくもないと思うのですが、知恵や努力によって減少させることは可能だと思うのです。
その証拠として、国家によって犯罪に対する危険性に差がありますし、わが国内においても地域格差があることはデーターに示されています。
しかし、犯罪を減少させることは出来ても、完全に無くすことは不可能です。

ただ、犯罪といえば間違いなく犯罪なのですが、何とも悲しく、虚しくなってしまうような犯罪が、このところ数多く報道されています。
体罰、いじめ、パワハラ、セクハラ、ストーカー、家庭内暴力等々、犯罪というにはあまりにも人間臭く、ニュースとして接するだけでも切なくなってしまいます。そして、この種の犯罪は、一般的な犯罪と違って、加害者も被害者も傷を負い、命を失う恐れがあるのです。

上に挙げたいずれの犯罪についても、それほど勉強しているわけではありませんので、あまり不用意な発言は控えるべきだと思うのですが、ただ、その中の幾つかを防げるのではないかと思われる『手段』があります。
それは、『逃げる勇気』を教えていくことだと思うのです。
『逃げる』という言葉は、ややもすると負けを連想させます。
「三十六計逃げるに如かず」という言葉がありますが、「負けるが勝ち」とほぼ同意語に使われます。どちらの言葉も意味としては決して弱者の行動を指しているわけではなく、むしろ知恵者の行動として使われるものです。それでも、「逃げる=負ける」という連想が働きがちで、「弱者の論理」、すなわち「負け惜しみ」として受け取られがちです。

しかし、絶対にそんなはずはありません。
『逃げる』には、とてつもなく大きな勇気が必要なのです。そのことを、私たちは幼い時から子供たちに教えていかなくてはなりません。
子供たちが、指導や養育の能力に欠ける人たちのために、体罰にあい、いじめにあい、虐待を受けています。保護者や指導者を教育することが先決ですが、その教育の成果には時間がかかります。そのためにも、子供はもちろん大人にも、『逃げる勇気』をしっかりと根付かせることが必要です。
「あの時、逃げ出していたら」「あの時、誰かに泣きついていたら」「あの時、子供を育てるのが無理だと訴えていたら」「あの時、学校など行く必要がないことを知っていたら」等々、『逃げだす勇気』を持っていたら、最悪の事態に至らなかったかもしれない事件は数多くあります。事件として表面化しないものは数え切れないほどの数になることでしょう。
私たちは、大きな声をあげて、『逃げる勇気』の大切さを多くの人に知ってもらいましょう。
それと同時に、『逃げる勇気』を素晴らしい行動として定着させるためには、「逃げ込める先」が広くて暖かい門を開けていることが絶対条件なのです。
「逃げ込める先」についてはまた意見を述べさせていただきますが、とりあえず、一人でも多くの人が、周囲の人たちに『逃げ出す』ためにはとても勇気がいるけれど、『逃げる勇気』はとても大切な知恵であることを伝えて欲しいと願っているのです。

( 2013.02.27 )

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