雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

コウモリは鳥か ・ 小さな小さな物語 ( 494 )

2013-08-17 10:27:06 | 小さな小さな物語 第九部
TPP交渉参加表明に関する議論が多発しています。
農業を護れ、国民皆保険制度が壊される、非関税障壁と呼ばれる部分で大きな打撃を受ける、食などの安全基準が犯される・・、等々、反対論が多数展開されています。
首相の正式表明で安心したのか、賛成意見はあまり取り上げられず、何故こんなに悪いことばかりある交渉に、遅れて、頼み込むようにしてまで参加するのかと考えてしまいます。

農業などのある分野は、致命的な打撃を受けて消滅してしまいそうな話も聞きます。
米なども、完全自由化がなされれば70%が輸入米にとって代られるという意見を述べている人もいるそうです。本当にそうなのでしょうか。日本のコメは、外国産のコメに品質と価格を加味した場合、それほど値打ちのないものなのでしょうか。もしそうだとすれば、国民は毎年大変な金額を第二の税金のような形で取られていることになります。

個々の品目や制度については、これから多くの意見が交わされることでしょう。従って、この欄ではその面は少し離れて、何故賛否両論のTPPに参加しようとしているのかについて考えてみます。
TPPに賛成であれ反対であれ、わが国が自由貿易から離れて自立していくことなど出来ないことは承知していると思います。現に、私たちは他国との貿易において関税や輸入制限によって、ある分野を護り、他国への売り込みにも制限を懸けられたりしています。さらには、通貨制度(円安・円高)による束縛がどれほど大きなものであるかということは、この数カ月の変化で身にしみたはずです。
TPPに関わらず、私たちが世界と付き合っていくためには複雑な問題や多くの矛盾があることも覚悟しなくてはならないのです。
そして何より大切なことは、TPPに正式参加できたとしても、それによる経済的利益など大したことではないのです。それでも、なぜ参加するのか。その理由の一つは、世界の動きは多国間による貿易協定を締結する方向に動いていて、TPPに不参加だけで済む話ではないのです。つまり、国家の安全保障とも無関係でないということも考える必要があるのです。

コウモリは鳥か獣か、といった物語を聞いたことがあるような記憶があります。
コウモリのように、ある時は鳥として振る舞い、ある時は獣として振る舞うことが出来ればいいのですが、お前は鳥だ、いやお前は獣だと両方から拒絶される恐れがあります。
わが国の国力からすれば、もはやコウモリのような行動では生き延びることは無理で、どちらかの旗幟を鮮明にする必要があるのです。
鳥になるのも一つの方法ですし、獣になるのも一つの方法だと思います。ただ、コウモリが鳥だといって頑張り抜くのは少々無理があるようにも思うのです。
さて、私たちはどちらを選べば良いのでしょうか。

( 2013.03.20 )

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