まぼろしの バナナ饅頭について

2006年06月13日 | 日記
我が家にいらっしゃるお客さんには
和菓子をお求めにいらっしゃるお客さんと
洋菓子をお求めにいらっしゃるお客さんがいらして
和菓子のお客さんはだいたい千代田せんべいと高峰饅頭を
目指していらっしゃる方が多いです。
その多くは昔ながらの常連客の方。
昔話やここでの思い出話もちょくちょく教えてくださいます。

さて、“おじいちゃんの作っていたお菓子”にまつわる思い出話。
その上位が“バナナ饅頭”という かた焼き饅頭に関する話です。

鉄の焼き型でちょっと洋風な仕上がりになるバナナ饅頭は
外がサクサク、ほんのりアンモニアの香りが鼻をつき
やわらかい生地と、中の何ともいえないやわらかなバナナ餡が最高にいい香り。

「素朴なのに味わい深い」まさにその一言に尽きるお饅頭です。

そのバナナ饅頭の復活を願って今でも多くの方がいらっしゃいます。
「あの、おじいちゃんの作っとったバナナ饅頭、まだ作らんかいのぅ?」
何度も何度も聞かれるこの質問。 
「いつかは作りたいのですが。。」と答えるしかないのです。
何故ならあの製法は受け継がれていないからなのです。
店主も何度か試みたものの 駄目だったとか。。
とりあえず現在、和洋菓子の生、焼き菓子全てを手作りしているため
これ以上の仕込みに足を踏み入れる事自体、まず限界を超えているとも言えますが・・・


と いうわけで残念ながら今のところ、お作りできる見込みはありません。
なので、そういうお客さんがいらした時は
“作る側”というより、“共におじいちゃんのバナナ饅頭を愛した側”
として会話させていただくことが多いのです。

今日も例の如く、トラ焼きとバナナ饅頭の話題になり

お客さん; あのバナナ饅頭の味はどうしても忘れられん。
    私; そうですね、皮がサクサクしてて 本当に美味しかったですよね。
お客さん; あの味には他のお店では絶対作れんもんがあったね!
       あれはなんだったんじゃろうね?
    私; おじいちゃんの・・魔法じゃないでしょうか?(笑)
お客さん; あぁ!そうじゃ!!おじいさんの魔法の味だったに違いないよ!

     

満面の笑みで お客さんはお店を後にされ、
私も不意に自分の口から出てきたその言葉が
  まんざら嘘でもない気がしてならないのでした。。