愛知の史跡めぐり

愛知県の史跡を巡り、その記録を掲載します。

専福寺 岡崎市

2013年11月17日 22時51分41秒 | 岡崎市


 久しぶりのアップです。先日岡崎に行ったときに、ついでにみてきました。
 専福寺は、三河一向一揆のときに家康側と一揆側の調停に当たったお寺です。家康から依頼され、専福寺の住職祐歓らが調停に当たりました。しかし、調停はまとまらず、祐歓は上方の方に逃げ去ったということだそうです。

参州一向宗乱記より
・・・
 去ば、一向宗の風俗は、手の舞、足の踏事も、皆是報仏応化の妙用にして、自力にあらず、しからしむるは、不可思議光如来御はからひ也と解して、墳墓を築く事をせず、其寺を先祖の廟堂として、雑業雑修の心を打捨て、一心一向に、身命を阿弥陀如来に抛(なげう)つの宗門也。されば、岡崎の御家中も、大半は此宗旨たる故、夜半までは殿中に在て夜詰をせし輩も、今朝は土呂・針崎へ立退て、一揆に同意して力を合わせければ、殿も難儀に思し召れ、残り止る者共も、もし内通する事もやあらんと、暫も御心の易き事はましまさず。然ども、一揆に与する者共も、譜代旧功の御家来なれば、猶しも御憐愍(ごれんびん)の思し召し有て、何とぞ戦わずして、無事になさばやとて、岡崎の一向宗専福寺祐歓、同宗渡村の善秀といゝし此両僧を召れて仰られけるは、「一向宗一揆の者共、無道の振舞なれども、我家人どもも多く徒党に与せし事なれば、誅戮せんも不便なり。汝等、いかにも取結びて、事を静むべき也」と仰有ければ、両僧、畏て領掌仕り、先佐々木へ至り、三浦四郎右衛門を語らひ、種々様々に詞を尽して、和順の事をすゝむるといへども、三浦敢て許容せず。されば両僧も為方なく、直に土呂へ趣き、扱ひの方便を廻らしけれども、一円承引せず。剰へ却て怒をなし、「今度の儀におゐては、仏祖如来へ恩徳報謝の為の企なれば、門徒・旦那は申すに及ばず、他宗の輩さへ与する処に、同じ宗旨の分として、いらざる事を取持て、兎角沙汰する条、各の本意に背けり。已後のこらしめの為なれば、両僧の生首引抜て、軍の血祭に軍門に晒さん」とひしめきける程に、両僧大に肝を寒し、早々其場を逃去けり。斯ては事もとゝのはず、面目もなき事なれば、当国に住居なるべからずとて、両人とも上方さして立退ける程に、扱の術も絶たりけり。
 伝曰、祐歓は、其後大坂に居たりしが、一向宗治りて後、石川日向守の母儀、彼僧が一揆の節、罪なきよし、愁訴申上られける願に依て、最初に御免有、頓て帰参仕、御城下におゐて屋敷拝領す。夫故、一番の道場と申たりき。今、岡崎の専福寺是也。
・・・・

大変興味深い記事です。

一揆衆と家康のはざまで
 まず、専福寺の側に立って考えます。家康から「家来を討つのは忍びない、調停してくれ」と頼まれたときに、どのような考えになったのでしょうか。専福寺は、一向宗です。今も大谷派です。しかし、寺の場所は材木町(今は祐金町)で、家康のお膝元です。「できることならば、土呂や針崎と一緒に戦いたい、しかし、専福寺は岡崎城のお膝元、戦って勝ち目はない、ここは調停に全てをかけてなんとか一向宗も家康も立ち行くようにしてみよう。」などと考えたのではないでしょうか。
専福寺は、調停が失敗した後、大坂に立ち退いていますが、大坂とは石山本願寺のことだと考えられます。ということは、一向宗の立場を変えずにいたということで、家康に与して一向宗の宗旨を変えるという考えは全くなかったと思われます。したがって、調停が失敗したときに、家康と一向宗の戦いが始まり、専福寺が一向宗徒として家康に立ち向かえば、一番に攻められると考え、早々に大坂に逃げたということでしょうか。

毒には毒で
 家康の立場から考えると、史料にもあるように家臣から一向宗を何とか切り離したい、そして一向宗を潰してしまいたい、そこで「毒には毒をもって制す」ではありませんが、一向宗を利用しようと、わざわざ一向宗の専福寺に調停を頼んだのではないでしょうか。おそらく専福寺が一揆側につかないようにとの作戦と思われます。万が一調停が成功したときには、一向宗側に不入の権の解消など無理難題を押し付けていったのではないでしょうか。歴史に「たられば」は禁物なので、これくらいにしておきます。

案内板と「参州一向宗乱記」との違い

境内に案内板がありましたが、「参州一向宗乱記」の記述と若干異なる点がありました。
住職の名前が「乱記」では「祐歓」ですが案内板では「祐欽」になっていました。
「乱記」では家康が調停を祐歓に依頼していますが、案内板では祐欽が家康に和議をすすめたとありました。
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