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言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

共産党は「優れた」リーダーである

2010-11-22 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.178 )

 世界恐慌の渦に呑み込まれた中国経済はこの先どこへ向かうのか。この危機を小康状態にとどめてやり過ごし、ふたたび成長に向かうことができるのか。それとも急降下して、またもや貧苦に喘ぐことになるのか――。答えは三年以内に出るだろう。
 しかし、たとえ経済が失速しようと、それは中国共産党の政権機構の維持とはほとんど関係がない、というのが中国の、あるいは共産主義の国家体制である。なぜなら、共産主義国家は市場原理などあっさり無視することができるからだ。日本の中国崩壊論者たちはここのところを間違えている。
 彼ら論者たちが中国共産党の一党独裁体制崩壊の原因として真っ先に挙げるのが、経済破綻の問題である。
 専門家たちの論法に小異はあるが、大同は概ね次のようなものである。
 北京五輪後、中国国内のバブル崩壊と世界経済の失速が⇒不動産・株価の暴落と輸出急減を招き⇒企業倒産が相次ぎ⇒国中に失業者が溢れて不会不安が拡大し⇒不満を募らせた民衆が各地で暴動を起こし⇒それが現政権に対する反乱へと発展してゆく……。
 反乱がやがて内乱、内戦へとつながってゆくのではないか、という「予測」もある。もちろん仮定の上ではどんな予測も成り立つわけで、その可能性を一〇〇%否定することはできない。
 しかし、これまで見てきたような中国共産党の精緻な国家統治システムを考えたとき、人々の不満が現政権に対する大規模な反乱へと転化してゆく公算は限りなく低いと見做さざるを得ない。
 すでに何度も述べたた通り、中国の国家体制を支えているのは、北京の中国共産党中央政治局常務委員会を頂点とするピラミッド型の党細胞機構である。この強固な骨組みは、容易なことで壊れないし、壊してしまったらそれに代わる器がない。そして、そのことを一番よく知っているのは中国人自身である。つまり、バブル崩壊は共産党独裁体制維持の阻害要因とはなり得ない、と考えるのが常識的な線なのだ。
 実際問題として、土地と株のバブルはすでに崩壊しはじめており、人々の不満は充分燻って (くすぶって) いるにもかかわらず、それを原因とした暴動はほとんど起こっていないし、(チベットやウィグルなどの民族問題を別とすれば) この先にも大規模な暴動が予想されるような兆候もあらわれていない。


 共産主義国家の中国においては、経済が失速しようと独裁体制は崩壊しない、と書かれています。



 この主張には説得力があると思います。

 ここまで、私がこの本を読みつつ考えてきたところによれば (私の引用は部分的なので、必要であれば本を買ってください。いい本だと思います) 、

  1. 中国人は「独裁そのもの」を否定していないうえに (「中国人は民主化を望んでいない?」参照 ) 、
  2. 中国共産党は分裂しない」し、
  3. 中国人民解放軍は共産党の一部であり、党に反抗することはあり得ない。民衆による反乱が起こっても即座に鎮圧される (「中国人民解放軍における軍内党組織 (政治委員)」「林彪事件と人民解放軍人事」参照 ) 。
  4. 共産党は民衆の不満を解消すべく手を打っている (「中国共産党の「ガス抜き手法」」「中国における戸籍制度改革」参照 ) 、

と考えられます。したがって、私も著者と同様に、共産党の独裁体制は簡単には崩壊しないと思います。



 しかし、私は著者の主張に完全に納得しているわけではありません。中国人の圧倒的大多数がいま、中国共産党を支持しているのは確かだと思いますが、その支持が完全に失われれば崩壊してしまうかもしれない、と思ってしまうのです。



 中国人が共産党を支持している理由は、なんといってもやはり、

   共産党は「優れた」中国のリーダーである、

と (中国人が) 思っていることに尽きると思います (「江沢民理論=「三つの代表」論」参照 ) 。

 そしてなぜ、共産党が中国の「優れた」リーダーかといえば、なんだかんだ言っても (小さな不満はあるものの、トータルでみれば) 、

   中国は侵略されず、徐々に中国が大国になった
       (政治的・経済的・軍事的など、さまざまな面で)

   中国人の生活レベルは、確実に上昇してきた

という、この二点に尽きるのではないかと思います。中国の地位も、中国人の生活レベルも向上している以上、共産党は「優れた」リーダーである、と (中国人は) 思っているのではないかと思います。



 逆にいえば、この二点が崩れれば、共産党の独裁体制は崩壊する (可能性が高くなる) と考えられます。それはたとえば、台湾問題での中国の譲歩 (中国が台湾を放棄し、独立を認める) であったり、中国人の生活レベルの低下 (これは格差の拡大とは異なります。「自分の」生活レベル=「絶対評価の」生活レベルです) であったりするのですが、この二点が崩れないかぎり、中国人は共産党を支持し続けるのではないかと思います。

 そしてこの観点からみれば、

   中国が台湾を「あきらめる」ことも、
   中国が「大幅な」人民元高を容認することも、あり得ない、

という予測が成り立ちます。これらは、共産党が中国人の支持を失うことにつながりかねないからです。

中国における戸籍制度改革

2010-11-21 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.106 )

 中国にはあからさまな農村差別がある。
 共産党政権成立以来、農村の住民が都市に移り住むことはできても、戸籍の移動は絶対にできないようになった。
 おなじ都市住民といっても、戸籍があるのとないのとでは、大違いである。
 仮に上海に住んでいたとしても、上海市に戸籍がなければ上海の役所や企業に就職できないし、子供を学校に入れることもできない。都市で働く農村出身者といえば、民工 (建設現場などの出稼ぎ労働者) やメイドなどいくつかの特殊な職種に限られる。
 また、農村の女性が都市の男性と結婚しても都市の戸籍には入れず、生まれた子供の戸籍も農村になる。あるいは、都市間での移住にも制限がある。たとえば大都市から中小都市への戸籍の移動は許されるが、中小都市から大都市への移動は原則的に許されない。国民を都市に集中させないのは、そのほうが公安の戸籍管理がやりやすいからだ。
 農村出身者が正攻法で都市戸籍を取得する唯一の道は、大学に入学することである。大学生の戸籍は大学の所在地に帰属することになるので、これが地方出身者が北京や上海などの大都市の市民権を獲得するにあたっての唯一の抜け道と言える。中国の教育熱が高い理由の一つは、ここにある。


 原則として農村出身者は都市戸籍に入れず、中小都市出身者は大都市の戸籍に入れない。唯一の抜け道は大学に入学することである、と書かれています。



 しかし、この戸籍制度は、徐々に改革されつつあるようです。



Record China」の「13省で「農業戸籍」を撤廃、進む戸籍制度改革―中国」( 2008-12-10 14:02:31 )

2008年12月9日、中国公安部はウェブサイトで、これまで農業戸籍と非農業戸籍に分けられていた戸籍制度を撤廃し、統一した戸籍制度を導入した省レベルの自治体は河北省、遼寧省など13の省・自治区・直轄市に及ぶと発表した。中国新聞網が伝えた。

中国はこれまで農業戸籍と非農業戸籍に分けられ、厳格に管理されてきた。農業戸籍に生まれた者は、都市部への移住を一生許されない。運よく都市部で就業できたとしても、戸籍がないため都市住民と同じ社会保障が受けられず、差別を強いられてきた。政府はこうした格差をなくそうと戸籍制度の改革を推進。現在までに13の省・自治区・直轄市に及んだ。

公安部はこのほか、不動産を購入した都市への戸籍移転を認めるなど7項目の改革措置を徐々に追加し、流動人口に対する治安管理や権利保護などを強化する方針を示した。(翻訳・編集/NN)


 13 の省・自治区・直轄市において戸籍制度が改革され、「これまで農業戸籍と非農業戸籍に分けられていた戸籍制度を撤廃し、統一した戸籍制度を導入した」と報じられています。



Record China」の「中国13紙が異例の共同社説、戸籍制度改革求め人権宣言」( 2010-03-02 19:19:06 )

2010年3月2日、中国各地の新聞13紙が、異例の共同社説を一斉に掲載し、近く開会する全国人民代表大会と全国政治協商会議(両会)の代議員に対し、職権を行使して戸籍制度改革を迅速に実現するよう呼び掛けた。2日付シンガポール紙・聯合早報が伝えた。

中国の戸籍制度は、国民を都市部と農村部の2種類に分けて登録させる。一種の身分制度で両者は固定され、農村部から都市部へは簡単には移せない。起源は建国直後の1951年にさかのぼり、近年は改革を求める声も強い。13紙は代議員に対し、戸籍改革のタイムスケジュールを出すよう職権を行使して中国の行政府に促せと主張している。

社説は「わが億万の国民が地域の南北、都市農村の区別なく、就職・医療・養老・教育・自由な移転の権利を与えられるよう望む。数十年にわたる悪政はわれらの世代で終わらせてもらいたい。後の世代には憲法が保障した自由、民主、平等の神聖な権利を与えよ」とした。

社説は、「経済観察報」から始まり、11の省・自治区・直轄市で順次転載された。新聞13紙の他、新浪網、鳳凰網、経済観察網などネットメディアも転載した。(翻訳/編集 東亜通信)


 中国各地の新聞各社が「戸籍制度改革を迅速に実現するよう呼び掛けた」。それをネットメディアも転載した、と報じられています。



 とすれば、改革が進むとともに、中国内陸部の人が沿海部の都市で働く際にも、職種が限られなくなると考えられます。また、公共サービスも (もともとの) 都市住民と同様のサービスが受けられるようになるものと考えられます。

 このような改革が「なぜ、なされたのか」を考えると、

 (本の) 著者が述べているように、これまでの制度で「国民を都市に集中させないのは、そのほうが公安の戸籍管理がやりやすいからだ。」とすれば、電子化 (コンピュータ化) などによって、国民が都市に集中した場合であっても、公安の戸籍管理に問題がなくなったからではないか、とも考えられます。

 しかし、たんにそれのみにはとどまらず、海外からの批判や、さらには、

   内陸部の経済発展がなかなか進まないので、
     移動の自由を与えることで、その代わりにする

という側面も、戸籍制度改革の原因として作用しているのではないかと考えられます。



 この戸籍制度改革は重要です。

 なぜなら、中国崩壊論 (分裂論) の主要な論拠のひとつが、中国内陸部と沿海部の経済格差にあるからです。つまり、内陸部の経済発展が難しいので、内陸部の経済発展は遅々として進まないはずだ。現に経済格差はどんどん開いていっている。したがって民衆の不満が暴発し、中国は崩壊 (分裂) する、という予測がなされているのですが、

 戸籍制度改革により、誰でも都市に引っ越してよい。誰でも (生まれながらの) 都市住民と同等の扱いを受けられる、ということになれば、内陸部が経済発展しないことは、暴動の原因にならない、すくなくとも原因になりづらい、ということになります。

 もちろん、この制度改革によって大都市部におけるホワイトカラー賃金が下落するなど、(生まれながらの) 都市住民にとっての「マイナス」も発生すると予想されますが、全体としては、中国において暴動が発生しづらくなる方向へと、改革が進んでいるものと考えてよいと思います。



 したがって、この観点でみた場合にも、中国は崩壊・分裂しないと予想されます。

台湾問題についての米中台の姿勢

2010-11-20 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.95 )

 二〇〇五年七月に開かれた中国外交部主催の記者会見の席上、中国国防大学・防務学院長の朱成虎少将は居並ぶ記者たちを前にこう述べた。
「今後、台湾問題をめぐって中米間に衝突が発生した場合、もしアメリカがミサイルを使うのなら、中国も躊躇なく (ちゅうちょなく) 核兵器の使用を決断するだろう」
 また、
「その場合、我々は西安 (陝西省) 以東のすべての都市が破壊されることを覚悟している。だがもちろん、アメリカも一〇〇、あるいは二〇〇の都市、さらに多くの都市が中国に壊滅されることを覚悟しなければならない」
 とも語った。
 朱成虎は中国人民解放軍の元老で、十大元師のトップであった朱徳の孫 (第四夫人の長女の子) であり、十数人いたなかでも朱徳が特別眼をかけた秘蔵の孫だ。現在は、将来を期待される人民解放軍の将軍候補の一人でもある。
 このように、半分はポーズとしても、解放軍の軍事エリートたちが「すでにアメリカと互角に戦う準備ができている」と豪語するほどに、中国軍は力をつけている。この強大な軍隊を相手に攻め入ろうと考える外国勢力はそう簡単にはあらわれないだろうし、逆に国内でどんな動乱が起ころうとも一瞬のうちに圧し潰してしまうことは確実である。


 台湾問題に米国が軍事介入した場合の中国の対応を述べた、中国国防大学・防務学院長 (朱成虎少将) の発言が紹介されています。



 著者が述べるように、半分は「口だけ」のポーズだと思います。

 しかし重要なのは、

   人民解放軍の軍事エリートたちが
    「すでにアメリカと互角に戦う準備ができている」と豪語している

ということです。私は著者とは異なり、それほどまでに「中国軍は力をつけている」とは思いませんが、中国人民解放軍の幹部達が「自信をもっている」ことはきわめて重要だと思います。

 人民解放軍の実力はともかく、中国はアメリカと戦うこともいとわないと考えられるからです。



 とすれば、「三峡ダムの問題点」で述べた私の予測、すなわち、「(よほどのことがないかぎり) 中国には米国と戦う意志はない」という分析は、外れているとも考えられます。

 しかし、中国にとって「台湾」は「よほどのこと」にあたると考えられるので、とくに予測が外れているともいえないでしょう。



 問題は、中国はどこまでアメリカと戦う覚悟をしているのか、です。それによって、本格的な戦争になる可能性がどの程度なのかが決まります。

 中国側の「覚悟」の程度を知るには、さらに詳細な資料が必要になると思いますが、どこまで資料を集めて分析しても、最終的には「わからない」としか言えないのではないかと思います。とすれば、



民主進歩黨」の「馬英九、CNNインタビューで語った「NEVER」説は中国に媚を売る謬論」( 2010-05-03 )

馬英九氏はこのほど米国CNNのインタビューに答え、台湾海峡で戦争が勃発しても決して (never)米国に台湾への支援を求めたりはしない、などと語った。蔡其昌スポークスパーソンは3日、「馬英九のこの発言は台湾海峡の戦略目標について、米国の「模糊」原則を破壊し、東アジアの戦略的バランスと台湾海峡の安全を完全に破壊する軽率なものだ。それは中国に媚を売り、塩を売るものではないのか?馬氏に明確な説明を求めたい」と語った。

台湾海峡問題や軍事専門家であれば熟知していることだが、米国は台湾海峡で紛争が起こった場合、必ず参戦するかどうかは曖昧にする戦略である。この米中台関係の「曖昧」戦略こそが、米国の基本原則であり、それこそがまさに台湾海峡の紛争の抑止につながっている。しかし今回馬氏は「NEVER」ということによって、この「曖昧」戦略を破壊し、米国が介入する可能性を自ら否定した。これは対米関係にとって大きなマイナスである。

また、中国側はECFAについて「利益供与説」を言っていることから、馬氏の今回の発言は馬氏側の中国に対する利益交換条件としての「対中利益供与」ではないかという疑いを持つ。


 台湾の馬英九総統が米CNNのインタビューに対し、「台湾海峡で戦争が勃発しても決して (never)米国に台湾への支援を求めたりはしない、などと語った」ことは、台湾の「対米関係にとって大きなマイナスである」、と批判されていますが、



 たしかにその批判は当たっていると考えられるものの、逆に、(中国は米国への核攻撃も辞さないと言っている以上)「対米配慮」と取れなくもありません。

 馬英九総統のこの発言は、今後の台湾政治の動きをみつつ、(大きな文脈で) 判断しなければならないのではないかと思います。

尖閣沖に中国の漁業監視船 (ヘリ搭載)

2010-11-20 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「尖閣沖に中国漁業監視船、「正当な任務」と応答」( 2010年11月20日12時59分 )

 海上保安庁によると、尖閣諸島の周辺海域を哨戒していた海保の航空機が、20日午前8時25分、尖閣諸島の魚釣島の西北西約37キロの接続水域(日本の領海の外側約22キロ)で、中国の最新鋭漁業監視船「漁政310」を発見。

 同8時47分には、別の漁業監視船「漁政201」を確認した。その後、2隻は接続水域内を航行しているが、領海内には侵入していないという。

 海上保安庁の巡視船や航空機が、無線などで領海内に侵入しないよう警告したが、漁業監視船は「我々は正当な任務に当たっている」と応答したといい、海保では監視警戒を続けている。漁業監視船が現れた海域には、中国漁船は確認されていないという。

 政府は20日午前9時、官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置した。中国漁船衝突事件以降、中国の漁業監視船が接続水域内に現れたのは、今回で4回目とみられる。


 尖閣沖に中国の漁業監視船が現れた、と報じられています。



 この漁業監視船、名前が「漁業監視」船ですし、報道文には「漁業監視船が現れた海域には、中国漁船は確認されていない」とあります。

 とすれば、中国漁船が日本領海内に侵入するのを防ぐ (あるいは、尖閣沖で操業するのを防ぐ) 目的の「監視」船ではないか、とも思われます。

 しかし、



産経ニュース」の「尖閣周辺にヘリ搭載監視船 中国初、南シナ海も航行」( 2010.11.16 21:16 )

 ヘリコプターを搭載した中国初の漁業監視船が16日午前11時(日本時間同正午)ごろ、中国広東省広州市を出港し、中国漁船保護のため東シナ海の尖閣諸島周辺へ向かった。中国の通信社、中国新聞社などが伝えた。

 中国はヘリ搭載の漁業監視船を、周辺国と領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)、西沙(同パラセル)両諸島周辺にも航行させる考え。農業省当局者は「中国の漁業権益を守る有力な武器となる」と強調している。

 この漁業監視船は2機のヘリを搭載し、最新の通信システムを備えているという。(共同)


 尖閣周辺に派遣された中国の漁業監視船について、中国当局は「中国の漁業権益を守る有力な武器となる」と考えており、かつ、「2機のヘリを搭載し、最新の通信システムを備えている」と報じられています。



 「2機のヘリを搭載し」ている漁業監視船が、日本の海上保安庁によって尖閣沖にいるのを確認された漁業監視船「漁政310」と「漁政201」なのか、定かではありませんが、時期的にみて、おそらく同一であるとみてよいでしょう (仮に違う漁業監視船であるとすれば、さらに新たな漁業監視船が尖閣沖に現れる、ということになります) 。

 さて、この「漁業監視」船ですが、中国当局は「中国の漁業権益を守る有力な武器となる」と述べています。とすれば、中国漁船が日本領海内に侵入するのを防ぐ (あるいは、尖閣沖で操業するのを防ぐ) 目的ではなく、日本の巡視船によって、中国漁船・中国人が逮捕・拘束されるのを防ぐ目的である、と考えるのが適切だと思います。つまり、「漁業監視」船という名前は「名目にすぎない」と思われます。



 とすれば、搭載されているヘリも、中国漁船の監視用ではなく、(中国漁船の監視を名目に) 日本側の動きを「監視」する目的ではないかと思います。すくなくとも、その疑いがあります。仮にそのヘリが攻撃用ヘリだった場合、日本への攻撃も想定している、と考えなければなりません。



 日本の内閣は異常なほど、中国に「配慮」していますが、その中国は日本への強硬姿勢を示しています。内閣には、海上保安官・自衛官との信頼関係の構築が求められていると思います (「民主党には、現場に対する敬意が欠けているのではないか」参照 ) 。

林彪事件と人民解放軍人事

2010-11-19 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.86 )

 中国人民解放軍のなかでクーデター計画が練られ、これが未遂のうちに鎮圧されたことが過去に一度だけあった。言わずと知れた林彪事件である (七一年九月一三日に起こったので9・13事件とも呼ばれる) 。

(中略)

 国防部長だった林彪は六九年に唯一の党副主席となり、毛沢東の後継者と目されるまでになった。しかし、いったん毛に叛意を怪しまれるや、執拗な追及に遭うことになる。以来「毛沢東天才論」を唱えるなど見え見えの阿諛 (あゆ) 追従を繰り返して絶対服従の姿勢を示し続けた林だったが、ついに毛の疑念を晴らすことはできなかった。七〇年前後になると、「右派」の汚名を着せられた林彪は、自身の粛清が近いことを悟るにいたる。
 死は間近に迫っている。こうなったら最期。殺られる (やられる) 前に殺る (やる) しかない。林彪の息子で空軍作戦本部長だった林立果が中心となり、毛沢東爆殺計画が練り上げられた。林彪一族によるこのクーデター計画は、事件後立果の部屋で発見された「571工程紀要」という文書にまとめられていた (571の音は「ウーチーイー」で武起義 (ウーチーイー)〈=武装蜂起〉に通じる) 。それによれば、地方視察から帰る毛沢東の専用列車を爆破して政権を転覆した後、林彪を首班として広州に新政権を樹立することになっていた。

(中略)

 結局、毛沢東らが北京に戻る直前になって情報が漏れたため、この暗殺計画は頓挫してしまう。

(中略)

 ともかく、国防部長を務め、解放軍の陸海空すべての部門の司令官が側近であり、また軍内総政治部、総参謀部、総後勤部のトップもすべて自分の部下であった林彪ですらクーデター発動にまでいたることができなかったのである。このとき、暴発を未然に防いだのは、軍のなかに細密に張り巡らされた党の情報網と、毛沢東に絶対の忠誠を誓わせる共産党の日常的な洗脳教育の成果だったと言えよう。
 林彪亡きあと、十大元帥の一人葉剣英が国防部長に就任し、劉少奇とともに失脚して江西省の片田舎にいた小平も復活を果たした。は林彪のライバルだった。
 林彪事件があってからというもの、毛沢東が常に気に病むようになったのは、軍によるクーデターの懸念だった。一時は後継者にすら指名し、側近中の側近だった林彪に反旗を翻されたショックは、さすがに大きかったようだ。
「どうしたらクーデターを未然に防げるだろうか?」
 と、毛沢東は復活したばかりの小平に相談を持ちかけた。
「……将在軍、君命有所不受 (将が軍に在ると、君命を聞かなくなることがある)」
 少し考えてから、小平はそう答えた。
 これは紀元前の春秋時代に『兵法』で名高い孫子が説いた教えで、司馬遷の『史記』のなかにも採録されている有名な言葉である。つまり、将が軍に居続けると独立王国を築いて勝手なことをやり出す、という意味だ。
「所以 (だから)」
 と、小平は続けた。
「軍の司令官は一個隊に長く留まらせず、できるだけ頻繁に移動させることです。そうすれば隊長と兵士たちのあいだに特別な関係が生まれるのを防げます」
 これを聞いた毛沢東は即座に膝を打ち、眼の前の小さな男の頭のよさに舌を巻いたという。そして直後に小平が副首相に昇格したのは、この卓抜なアイデアを提供したことに対する褒賞人事であったと伝えられる。以後解放軍では、軍区のトップはもちろん、各軍の将校クラスの幹部たちにいたるまで、時期を置かず繰り返し移動させられることになった。


 林彪事件のあと、人民解放軍では人事移動が頻繁になされるようになった、と書かれています。



 中国の「国防部長」は、日本でいえば「防衛大臣」にあたります。日本語の「部長」のイメージとは異なり、「大臣」です。

 その国防部長ですらクーデターに失敗したというのですから、党中央に対するクーデターは、事実上不可能だといってよいと思います。そしてまた、林彪事件以後、人民解放軍における人事移動が頻繁になされるようになった、というのですから、「ますます」クーデターの可能性は低くなっているとみられます。とすれば、

   中国においては、軍が党に反旗を翻すことはありえない、

と考えてよいと思われます。



 「中国は分裂する」と説く人がいますが、

 国が分裂しそうな状況になれば人民解放軍が動き、分裂を阻止しようとするはずです。したがって、人民解放軍の協力 (または黙認) がなければ、中国は分裂しないと考えられます。

 むかしとは異なり、現代の武器は殺傷力が高くなっています。一昔前ならいざ知らず、現代においては、軍隊が動けば民衆の分離独立を求める動きはまず間違いなく、鎮圧されるでしょう。

 そして、その人民解放軍は、「中国人民解放軍における軍内党組織 (政治委員)」の存在、および上記引用で説かれている「頻繁な人事移動」によって、党中央の意向に逆らうことは「まず、ありえない」と考えられます。

 とすれば、軍が党中央に反旗を翻す可能性はほとんどなく、さらに「中国共産党は分裂しない」と考えられる以上、「中国は分裂しない」のではないかと思います。