言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

江沢民理論=「三つの代表」論

2010-11-12 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.50 )

 しかし、なかにはどんなに勧められても入党を拒む学生もいる。彼らは外国留学志望者だ。欧米諸国では共産党員をスパイ要員と見做してその留学を許可しない国が多かった。これを隠して留学しようものなら強制送還ということにもなりかねない。日本のように、共産党員であっても分け隔てなく留学生を受け入れる国は、先進国のなかでは非常にめずらしかった。以前ほどではないが、その傾向は現在も残っている。北京大学には留学志望の学生が多いので比較的入党志願者が少ないのだ。

(中略)

 方針転換がはかられたのは、二〇〇〇年代に入ってからだった。〇二年一一月の第一六回党全国代表大会で、当時の江沢民国家主席は「人材強国」のスローガンを打ち出し、国内での人材育成、とくに大学での人材発掘と養成に力を注ぐようになる。また、この大会で党規の改定が為されたが、その冒頭の文言は次のようなものだ。
「中国共産党は中国工人階級の先鋒隊であり、同時に中国人民と中華民族の先鋒隊であり、中国の特色ある社会主義事業の指導的核心である。中国の先進的生産力の発展を代表し、中国の先進文化の前進方向を代表し、中国の最大多数の人民の根本的利益を代表する」
「三つの代表」と称される江沢民理論である。七八年の改革開放政策以来のことだが、階級闘争史観はますます薄まり、経済建設が強調された。この「三つの代表」は、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、小平理論に次ぐ党の指導方針となった。
 そして、ここで新たな入党条件が追加されることになる。工人・農民・軍人・知識人 (学生を含む) に加え、「その他の社会階層の先進分子」という項目が付記されることになったのだ。漠然とした表現で誤魔化しているが、ようするに資本家、あるいは企業家のことである。これはまさに、中国共産党の一大方針転換と言わなければならない。
 一九二一年の結党当時、「中国共産党綱領」には「プロレタリア独裁を採用し、階級闘争の目的である階級消滅を達成する」と謳われていた。また「プロレタリア革命軍をもってブルジョア階級を転覆する」とも明記されていた。その転覆すべき階級敵であるブルジョア階級=資本家に入党資格を与えたのだから、中国共産党はもはやプロレタリア政党でも共産主義政党でもないと宣言したに等しい (もっとも、中国はとうの昔にプロレタリア共産主義国家ではなくなっていたのだから、名が体を追認したということでもあるのだが) 。
 党規を修正したことについて共産党は、「党の階級基礎を増強し、党の大衆基礎の拡大に有利となり、全社会における党の求心力と影響力を高める」と、もっともらしく言い訳したが、これでは修正主義どころか初志撤回の謗り (そしり) は免れない。
 しかし、これによって共産党への評価は一八〇度変わった。
 文革の狂気や天安門事件の悲劇など、過去の度重なる強権発動のせいで、中国の若者にとって共産党のイメージは決して芳しい (かんばしい) ものではなかった。ところが、この〇二年の方針転換によって情勢はがらりと変わってしまった。一気に入党ブームが巻き起こったのである。
 共産党に殺到したのは大学生ばかりではない。民間の企業家たちまでがこぞって入党申請を提出した。〇七年の一年間に入党した企業家はおよそ四万五〇〇〇人を数える。


 中国共産党は変質した、共産主義を捨てた、と書かれています。



 引用部分は、「中国人が共産党に入党する動機」で引用した部分に続いて書かれている部分です。

 前回の引用部分と、今回の引用部分を併せ (あわせ) 考察すれば、

   中国人が共産党に入党する動機が「個人的な損得」であるなら、
       共産党に入党しない動機も「個人的な損得」である、

ということになります。

 北京大学といえば、中国で文系トップの大学です (理系のトップは清華大学) 。日本でいえば東京大学にあたるものが (中国の) 北京大学であり、その「北京大学の学生たちが共産党に (あまり) 入党しようとしない」ことからも、中国人にとって「個人的な損得」がいかに重要かがわかります。そしてさらに、

   中国人にとって共産党の魅力とは、出世・特権・利権等の
    「個人的な利益」を得る手段としての魅力にほかならない、

ということも読み取れます。



 さて、江沢民理論 (「三つの代表」論 ) ですが、これは要するに「共産党は中国のリーダー (指導者) である」ということです。そしてこの「三つの代表」論をもとに、

   中国共産党は資本家の入党を許可した、

というのですから、著者が述べているように、すでに中国共産党は (本来の) 共産党ではない、といえます。共産主義という理念・主義主張は捨てたが、あくまでも共産党は中国の指導者である。その正当性は「三つの代表」論で説明される、ということなのでしょう。

 とすれば、中国共産党それ自体も、一般の中国人と同様に「損得」で動く、とも考えられます。あくまでも (共産党の) 特権・利権は捨てない、と受け取れるからです。



 著者によれば、「〇二年の方針転換」と「三つの代表」論によって
 共産党に殺到したのは大学生ばかりではない。民間の企業家たちまでがこぞって入党申請を提出した。〇七年の一年間に入党した企業家はおよそ四万五〇〇〇人を数える。
というのですから、中国人にとって、共産党の魅力 (特権・利権) がいかに大きいかがわかります。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 中国人が共産党に入党する動機 | トップ | 中国共産党の官僚化=エリー... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。