藤井聡 『公共事業が日本を救う』 ( p.63 )
「そのまま放置し続ければ、いつ落ちてもおかしくはない」橋は、日本全体で約4000橋あると推定される、と書かれています。
引用文中には、
「国土交通省」の「地方公共団体管理橋梁の点検実施状況」
によれば、この数年、急ピッチで橋の点検が行われていることがわかります。平成22年(今年)4月1日の時点においては、全体の62%の市区町村において、橋の点検に「着手」しています。それでもなお、全体の4割の市区町村では点検が「始まっていない」状況ではありますが、橋の点検に向けた動きは急速に進んでおり、状況は着実に改善されつつあるとみてよいのではないかと思います。
なお、
「国土交通省」の「全地方公共団体の進捗一覧」
を見れば、あなたの住んでいる町の進捗状況がわかります。私の住んでいる町では、かなり進んでいるようです。
この「進捗一覧」を見るかぎりでは、平成24年末時点、つまりあと3年ほどで、ほぼすべての橋の検査が終わり、修繕計画も策定されることになっているようです。
「修繕計画の策定」は「修繕完了」とは異なりますが、着実に状況は改善されつつある、とみてよいのではないかと思います。
修繕のために必要な予算は、(おそらく) 誰も「ムダ」とは言わないはずです。
■関連記事
「公共事業における 「ムダ」」
「社会資本の更新」
「国債の 60 年償還ルール」
1960年代後半にはおおよそ7兆円規模であったアメリカの道路予算は70年代に徐々に減少し、1980年頃には5兆円程度にまで低下してしまった。その結果、道路の「メンテナンス」に十分な予算を割くことができなくなり、アメリカのあちこちで、"ボロボロ" のままに放置されてしまう橋が増えていった。
そしてこの事態はついに、1983年のコネチカット州にあるマイアナス橋の崩壊に繋がった。
この橋は、1日の交通量が約9万台という地域の大動脈であった。そのため、この橋の崩壊は3名の人命の損失とともに、3ヵ月にもわたるアメリカ北東部の経済混乱をもたらすことになった。
また、ニューヨークのマンハッタン島にかかる橋にも、様々な問題が起こった。
まず、1973年には、ウェストサイドハイウェイが部分崩壊し、その後、あまりの老朽化のために、その一部が解体されることとなってしまった。1981年には、ブルックリン橋でケーブルが破断し、それによって橋の通行者(日本人カメラマン)が死亡するという事故が起こった。
その他の橋も老朽化が激しく、補修しなければいつ落ちてもおかしくないような危ない状況に陥っていた。そのため、1980年代前半には、マンハッタン橋、クイーンズボロ橋、ウィリアムズバーグ橋などのマンハッタン島の主要な橋のいずれもが、大規模な補修工事をしなければならない状況に追い込まれた。
こうして「危ない橋」が、アメリカのあちらこちらで見られるようになっていった。そして、様々な橋で「通行の規制」や「通行止め」がかけられることとなった。
言うまでもなく、橋は極めて重要な交通の要である。そのため、橋の通行規制は、経済や社会生活に大きな影響を及ぼした。
(中略)
もちろん、現在の日本では、アメリカのように橋が落ちたことで人命が奪われた、という惨事は起きてはいない。しかし、それはあくまでも「たまたま」であったに過ぎない。事実、冒頭の記事が言うように「大袈裟でなくいつ崩れても不思議ではない状態」の橋は、我が国にたくさん存在しているのである。
まず、日本政府が直接管轄する橋は全国に約1万8000橋ある。それらは自治体が管轄する橋よりも丁寧に検査されている。そして、その検査を通じて、橋の損傷、老朽化の度合がどの程度なのかが定期的にチェックされている。その結果、とりわけ老朽化が激しく、放置しておけば通常の通行が保証できないような、「緊急対応の必要有り」と認定されてしまう橋が、106橋あることが知られている。つまり、全体の1万8000橋の約0・6%にあたる橋が、そのまま放置しておけば「いつ落ちてもおかしくない」ような状態にあるのである。
しかし、財源が乏しく、予算を十分に橋のメンテナンスに割くことができない地方自治体では、事態はもっと深刻だ。専門的な検査をすれば「緊急対応の必要有り」と認定されるであろう橋でも、そうした定期点検ができないため、そのまま放置されてしまっているからだ。橋のメンテナンスについての調査によれば、都道府県や政令市はある程度定期点検を実施しているようだが、全国に1800ある市区町村においては、実に8割以上の1500の市区町村が、予算も技術力も不十分だという理由で、定期点検ができていないようである。
つまり、ほとんどの自治体が、定期点検をせずに、橋を放置しているのである。
そんな状況では、誰の目から見てもおかしい、というようなほぼ手遅れの状態になった時に初めて、当局が知ることとなる。
そうなると後は、「通行止め」や「通行規制」をせざるを得なくなる。
例えば、都道府県や大阪、横浜などの政令市の場合、実際に通行止めになったり通行規制されたりしている橋は91橋ある(平成19年時点)。
そして、政令市を除く全国の市町村が管轄する橋においては、通行止め、あるいは通行規制がかけられている橋は、実に593橋にも上っている。
つまり、地方が管轄するもので既に規制されている橋が合計で684橋あるのである。
しかし、定期点検をまめに行えば、もっと多くの橋が「危ない」状況にあることがわかるはずだ。繰り返しとなるが、そもそも、8割の市町村が定期点検をせずにそのまま放置しているからである。
例えば、もし国が全ての橋を点検したとすれば、「緊急対応の必要有り」と認定されるような橋は、上記の684橋を遥かに上回る数となろう。例えば「緊急対応の必要有り」と認定された政府管轄の橋の割合である「0・6%」という数値を用いれば、全国に架けられている67万8000橋全体の中で約4000橋が、実際には「緊急対応の必要有り」という状況にあることが推察される。
全国4000橋、つまり、一つの都道府県について、平均で約85橋もの橋が緊急の補修を必要としているのである。つまり、我々が日常的に使っている橋の中に、既に、「そのまま放置し続ければ、いつ落ちてもおかしくはない」、というような危険な状態にある橋が潜んでいる可能性は、極めて高いのである。
「そのまま放置し続ければ、いつ落ちてもおかしくはない」橋は、日本全体で約4000橋あると推定される、と書かれています。
引用文中には、
しかし、財源が乏しく、予算を十分に橋のメンテナンスに割くことができない地方自治体では、事態はもっと深刻だ。専門的な検査をすれば「緊急対応の必要有り」と認定されるであろう橋でも、そうした定期点検ができないため、そのまま放置されてしまっているからだ。橋のメンテナンスについての調査によれば、都道府県や政令市はある程度定期点検を実施しているようだが、全国に1800ある市区町村においては、実に8割以上の1500の市区町村が、予算も技術力も不十分だという理由で、定期点検ができていないようである。とあります。しかし、
つまり、ほとんどの自治体が、定期点検をせずに、橋を放置しているのである。
「国土交通省」の「地方公共団体管理橋梁の点検実施状況」
によれば、この数年、急ピッチで橋の点検が行われていることがわかります。平成22年(今年)4月1日の時点においては、全体の62%の市区町村において、橋の点検に「着手」しています。それでもなお、全体の4割の市区町村では点検が「始まっていない」状況ではありますが、橋の点検に向けた動きは急速に進んでおり、状況は着実に改善されつつあるとみてよいのではないかと思います。
なお、
「国土交通省」の「全地方公共団体の進捗一覧」
を見れば、あなたの住んでいる町の進捗状況がわかります。私の住んでいる町では、かなり進んでいるようです。
この「進捗一覧」を見るかぎりでは、平成24年末時点、つまりあと3年ほどで、ほぼすべての橋の検査が終わり、修繕計画も策定されることになっているようです。
「修繕計画の策定」は「修繕完了」とは異なりますが、着実に状況は改善されつつある、とみてよいのではないかと思います。
修繕のために必要な予算は、(おそらく) 誰も「ムダ」とは言わないはずです。
■関連記事
「公共事業における 「ムダ」」
「社会資本の更新」
「国債の 60 年償還ルール」