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言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

移民のもたらす経済的利点

2011-05-02 | 日記
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.359 )

 どうやら左派は、独占が悪いことだとは考えていないらしい。だが制限的な移民政策が実施されてアメリカ人の独占になったら、アメリカ経済は伸び悩むことになるだろう。移民はアメリカの大きな比較優位の一つである。
 移民を制限するのはまちがっている(*28)。経済的観点から見ただけでも、多くの理由から、移民は活力源になっているからだ。第一に移民の就業率はきわめて高く、重要なニーズに応えてアメリカ経済の効率化に大きく貢献している。過去二五年間、移民がアメリカ生まれの労働者を押しのけたり、平均賃金を押し下げたという事例はほとんどない。移民人口の比率が高い州は、そうでない州よりも失業率が低いのである。
 第二に、移民の多くは勤勉で生産的であり、成功の階段を着々と上がっていく。国勢調査局人口現況調査の最新データ(二〇〇五年)をみると、移民世帯(外国生まれでアメリカの市民権を取得した世帯)の平均所得は六万五三〇九ドルで、アメリカ生まれの世帯(六万一二六四ドル)よりも高いことがわかる。連邦税の納税額も、前者が六九二三ドル、後者が六二〇二ドルで、移民世帯の方がわずかとは言え多い(*29)。
 第三に、移民はハイテクの爆発的発展に欠かせない存在である。その端的な例がシリコンバレーで、同地で働く科学者と技術者の約三分の一は移民だと言われる。著者の一人であるムーアがカトー研究所のために行った調査によると、インテルなど著名なハイテク企業一〇社は、移民が創業者であることがわかった。この一〇社の売上高は二〇〇五年に八八〇億ドルに達し、二三万人以上のアメリカ人を雇用している(*30)。
 そして何よりも重要なのは、移民が他国からやって来た「無料」の人的資本だということだ。彼らの頭脳や才能や勇気は、他国からアメリカへの贈り物なのである。移民の多くは、働き盛りの年齢でアメリカへやって来る。移民の七〇%以上は、初めてアメリカに来たときの年齢が一八歳以上だ。つまり今日のアメリカには、出身国で教育を受けた、言い換えれば出身国の国民が教育費を負担した移民が、二六〇〇万人いることになる。この教育費は、ざっと計算しただけでも二兆八〇〇〇億ドルに達する。アメリカの納税者の懐を痛めずにこれだけの人的資本が得られるとは、アメリカにとってはまさに天からの授かりものと言えよう。移民は、他国からアメリカへの何兆ドルもの富の移転と考えることができる(*31)。
 移民への門戸を閉じ、アメリカへの入国を厳しく制限すれば、経済が伸び悩むことは確実である。「移民問題」はむしろ「移民利得」と言うべきであり、最善の移民政策は、アメリカに来たい人にどしどしグリーンカード(永住権)を発行し、合法的にアメリカで働けるようにすることである。けっしてフェンスを張り巡らし、雇用を制限することではない。
 だがどうしても移民を締め出したいという政治家には、一つ妙案がある。増税をはじめ本書で指摘したさまざまな誤った政策を総動員して、経済を崩壊させることだ。これは、効果絶大である。大恐慌のときは、アメリカに来る移民より出て行く移民の方が多かったのだから。


 アメリカの「移民問題」は、じつはアメリカの「移民利得」である。なぜなら移民は経済の活力源であり、勤勉で生産的であるうえ、ハイテクの発展をもたらすからである。そしてなにより、移民は他国からやってきた「無料」の人的資本だからである、と書かれています。



 アメリカは欧州からの移民によって建国された国だからでしょうか、もともと移民に寛容な国ですが、

 日本の場合、移民に対して閉鎖的ともいえる現状があります。



 日本が移民に閉鎖的なのは、日本にやってくる移民とは中国人であったり、韓国人であったりする場合が多いところ、彼らが日本で「好ましくない行為」をするケースが多い、という現実に根ざしているのではないかと思います (「労働力不足の解決策」参照 ) 。

 しかし在日中国・朝鮮人のすべてが問題を起こすか、といえばそうではなく、なかには日本人よりも勤勉で、熱心に働く人々もいるわけです (「中国人研修・実習生の賃金例」参照 ) 。

 したがって日本としては、移民の「好ましくない面」に着目して移民を排除する道と、移民の「好ましい面」に着目して移民を歓迎する道とがあり、そのどちらを選択するかは、(日本) 国民の選択にかかっているわけです。

 日本では得てして、移民推進派の人々は経済的利得の面を強調し、移民反対派の人々は在日中国・朝鮮人の問題行動を強調する傾向にあると思います。それぞれが自分の主張ばかりをしているのでは、話はいつまでたっても平行線のままです。

 私としては、どちらを選んでもよいと思いますが、どちらを選ぶにしろ、その結果は必然的についてきます。どちらを選ぶのか、結果のプラス面・マイナス面双方を比較した、冷静な議論が必要なのではないかと思います。



 というわけで、移民を受け容れる場合の「利点」をまとめた記述として、上記部分を引用しています。移民問題を考えるうえで、有益な資料になるのではないかと思います。このブログでも今後、(機会があれば) 移民の是非について考えたいと思います。