へんくつゃ半睡の「とほほ」な生活!

 奇人・変人・居眠り迷人。医療関連を引退⇒
某所で隠遁準備中。性質が頑な、素直ではなく、
偏屈でひねくれています。

【語】言い替え語 少額収入生活者!@日々のなりわい

2009年01月15日 | 日本語入力

言い替えは要するにごまかしである。  


 大正時代、東京府庁社会科では、貧民や細民と言う語が「帝都の名目上耳障り」と
あって、「少額収入生活者」と改称することに決定したそうである。
 改称の理由も凄いが、「少額収入生活者」も、役人が考えそうな言葉である。
こちらの方が、よっぽど人を見下ろしている
 同じ頃、某銀行も、従来の「小口当座預金」の名称を「特別当座預金」と改めたという。

大正期は、名称改正が流行したらしい。大正デモクラシーであろうか。

女中」という語が問題になっている。「お手伝いさん」と言い替えられたのは、
昭和三十年代だが、大正時代には次のような案が出たという。
 いわく、「家庭手」。いわく、「家庭婦」。いわく。「家事取締」。
 いわく、「保母兼家事婦」。いわく、「主婦の助手」。いわく、「家政補助者」。
 家庭手と家庭婦の他は、文章で使う名称だろう。

 家庭手だが、この頃、京阪電車では、「運転手」を「運転士」と改めたそうだ。
法学士、弁護士、弁理士にならったらしい。家庭手を家庭士にせよ、との意見は
なかったのだろうか。?
    ☆
 他にどんな言い換え語が生まれたかというと、こうである。
 (荒木良造著「詭辯の研究」昭和七年刊、による)

 産婆が、助産婦。強姦が、暴行。處女会が、女子青年団。軍国主義が、ミリタリズム
一等卒二等卒が、一等兵二等兵。輜重輸卒が、特務兵。小僧が、小店員。便所が、化粧室
催眠術が、心霊術。高等女学校が、女子中学校。借金が、債務。手品が、魔術
    ☆
 更に、「舶来品」なる語は「輸入品」または「外国品」に、「国品」は、「国産品」に
改められた。他にもたくさんある。「廃兵」が「傷兵」。「不良少年」が「保護少年」。
「木賃宿」が「軽便宿」または「簡易宿」「大正宿」「貸宿」などなど。

    ☆
 「巡査」という名称は、文字の意味が「(めぐ)って(しら)べる」で感じが悪いから、
改めてもらいたい、という要望が、大正十二年の警察部長会議で出た、とある。当然、
おまわりさん」という愛称も、議論にかけられただろう。
    ☆
 私の友人の子が三歳か四歳のころ、駅前の交番の前を通るたび立ち止まって、その当時
流行していた「いぬのおまわりさん」という童謡を声高らかに歌いだし、友人は大いに閉口
したらしい。交番の「巡査」は、しかし笑顔でうなずいていたという。

 

 

出久根 達郎
セピア色の言葉辞典 より
文藝春秋  文春文庫  税込価格:¥660

コメント (5)
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