初夢「一富士・二鷹・三茄子」
葛飾北斎 「神奈川沖浪裏」 (富嶽三十六景)
富士山を主題とし、様々な場所、角度から富士を描いたこの編纂集は、
始め表題が示す通り三十六枚の揃物として刊行を予定されていたが、人気を呼んだため
追加作品が刊行され、計四十六枚の揃物となった。
主な線描が、藍で摺られているもの(正編)と、墨で摺られている別摺集とに分かれ、
後者は俗に「裏富士」と呼ばれる追加出版である。
巨大な波が、飛沫をあげ小舟に襲いかかろうとしている。波間に富士が遠く悠然と
そびえている。北斎の代表作のひとつである。
「神奈川沖」(※2008年撮影)
初夢に見ると縁起が良いものを表すことわざに
「一富士(いちふじ)、二鷹(にたか)、三茄子(さんなすび)」というものがある。
この三っの組み合わせは、江戸時代初期にはすでにあったが、その起源については
次のような諸説がある。
▲徳川家縁の地である駿河国での高いものの順。富士山、愛鷹山、初物のなすの値段
▲富士山、鷹狩り、初物のなすを徳川家康が好んだことから
▲富士は日本一の山、鷹は賢くて強い鳥、なすは事を「成す」
▲富士は「無事」、鷹は「高い」、なすは事を「成す」という掛け言葉
▲富士は曽我兄弟の仇討ち(富士山の裾野)、鷹は忠臣蔵(主君浅野家の紋所が鷹の羽)、
茄子は鍵屋の辻の決闘(伊賀の名産品が茄子)