【新たなビジネスモデル、それが「フリー、ソーシャル、価格差別、データ」】4095
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授、山口真一氏の心に響く言葉より…
「今までのビジネスのやり方では、立ち行かなくなっている」
あなたのいる業界や周囲の業界を見ていて、このように思ったことはないだろうか。
今、あらゆる分野において既存ビジネスモデルが危機を迎えている。
たとえば、かつ栄華を誇った新聞業界も、この10年ほどで日々発行部数を計1000万部も落し、あたらしいビジネスモデルの模索を余儀なくされている。
それなら紙の新聞の販売からネット配信すれば良いではないか、と思いがちだが、他社と明確に差別化されている日経新聞を除き、どこの新聞社もネットでは苦戦を強いられているのが現状である。
小売業も大きな転換期を迎えている。
今やアマゾン・ジャパンの推定国内売上高は1.5兆強と、セブンイレブンの国内売上高(1兆円)をはるかに超える。
さらに、この流れは2020年に押し寄せた新型コロナウイルスの影響で加速している。
ウイルス感染拡大防止のため「外出自粛要請」が出され、多くの産業が打撃を受けることになった。
グローバル単位で人の移動が制限される中、既存ビジネスは深刻なダメージを受け、グローバルな危機に対する脆弱性が明らかになった。
他方、社会の情報化によって新たに誕生したサービスは好調なものが多い。
動画配信サービスのネットフリックスは、新型コロナウイルス感染を防ぐ「巣ごもり」を背景に有料会員を増やして2020年1〜3月期で最高益を更新している。
マイクロソフトもクラウドの利用拡大、ゲーム利用の増加により、前年同期比15%増の売上高を第3四半期決算にて計上した。
GAFAといわれる米国の巨大4企業群もそれぞれ業績悪化どころかむしろ好調になっている。
このような既存ビジネスモデルの行き詰まりや、それに気づいた企業の方針転換は、世界共通で起こっていることである。
しかし残念なことに、とりわけ日本企業は、この変化に完全に取り残されてしまったと指摘される。
そのことを端的に表しているのが、日本企業の時価総額の推移だ。
世界の時価総額ランキングを見ると、平成元年にはベスト10にNTTや日本興業銀行など日本企業7社がランクインしており、まさに「経済大国日本」を象徴していた。
ところがそれが令和元年には、ランクインしている日本企業は0社になる。
代わって入ってくるのが、アップル、アマゾン、アルファベット(グーグル)といった、新たなビジネスモデルで覇者となった米国の企業群である。
8社が米国企業で、残りの2社は中国企業が占める。
これを打開する施策(しさく)を検討しなければならない。
しかし、そもそもなぜ最近になってこのようなパラダイムシフトが各産業で起こっているのだろうか。
その理由は、テクノロジー側の「技術革新」と、人々の「価値観の変化」という2つに集約される。
1つ目の技術革新は、昔から数多くのビジネスを破壊してきた。
たとえば身近なところでいうと、交通手段がわかりやすい。
かつて徒歩や馬車が主流だった時代から、技術革新によって鉄道、自動車、飛行機が次々と新しく生まれ、最終的にはほぼ完全に置き換わって現代にいたっている。
馬車というとはるか昔のことのように思うが、実は20世紀初頭まで実用的な交通手段として盛んに使われていたものである。
コミュニケーション手段も同様の変遷をたどった。
手紙・書簡が主流だったものが、電報という画期的なものが生まれて急速に普及した。
しかしそれも、固定電話の普及により劇的に量を減らし、その固定電話ですら最近では携帯電話にとって代わられて姿を消しつつある。
2つめに挙げた「価値観の変化」とは、近年の若者を中心に見られる極めて大きな変化である。
昔の消費者は物の所有に価値を見出していたが、現代の消費者、とりわけ若者は、つながりや体験を重視する価値観を持つようになったということだ。
「若者が車を買わなくなった」というニュースを読んだことがあるのではないだろうか。
実際、世帯主が29歳以下の乗用車保有率(新車)は29.9%と、40〜59歳の61.2%の半分にも達していない。
この「若者の車離れ」の理由として挙げられるのが、経済的な事情である。
確かに、そもそも世帯主が29歳以下の家庭は40〜59歳よりも圧倒的に収入が少ないため、新車購入率が低いのは当然である。
さらに、長年にわたり所得が伸びづらい状況が続いたことから、若者の経済事情は良くない。
では、本当に経済的な理由だけで若者は車を買わなくなったのだろうか。
そのような若者の消費行動を考える際には、若者の価値観の変化も見逃してはいけない。
つまり、車を「買えない」のではなく、そもそも買いたいと思わないということである。
これは先に挙げた「技術革新」の結果でもある。
技術革新によりネットが普及し、さまざまな人が頻繁にコミュニケーションをとる「情報社会」になった結果として、若者たちを中心に価値観が大きく変化している。
それは、物の豊かさや富を築くこと、所有することを重視していた従来の価値観から、つながりや感謝されること、そして心の豊かさを重視する価値観への変化である。
ここでいう「つながり」とは、親友との強固なつながりというよりは、ネットが可能にしたより緩いつながりである。
動画共有サイトで他の人の作った動画を観て楽しみ、ソーシャルメディア上で友人・知人と交流するというようなつながり方のことで、このことを車を買ってドライブをするよりも楽しいと感じているのだ。
ソーシャルメディアが若者の目に非常に魅力的に映るのは、そこで簡単に自己を表現することができ、同時に、他者の表現を受け取ることができる点にある。
今の若者にとってのヒーローは、人気ユーチューバーであり、インスタグラムで多くのフォロワーを抱えている人なのである。
それらが魅力的に映るのは、それによってお金を稼いでいるからではなく、多くの人を喜ばせるような価値を提供していて、実際に感謝されたり称賛されたりしているからだ。
社会の情報化が人々の価値観を変えているのである。
このように価値観が変化している中では、従来のようなビジネスモデルやマーケティング手法では収益を上げることができない。
このような背景を無視して、売上の低下を「若者がお金を使わなくなった」からだと、どこかで聞いたような言葉で片づけてしまうと、情報化社会のビジネスから取り残されるだけである。
『なぜ、それは儲かるのか』草思社
https://amzn.to/3ngevj1
山口真一氏は、「技術革新」と「価値観の変化」が起きたことにより、ビジネスモデルが変わったという。
それが「FSP-D」。
それは、「フリー(Free)」「ソーシャル(Social)」「価値差別(Price disucrimination)」「データ(Data)」という、たった4つのキーワードで構成される。
これら4つのキーワードは、これまで個々に論じられることは多かった。
しかし、今やそれらは有機的に組み合わされて利用されるようになった。
フリーの興味深い事例はいくつもある。
その中の一つに、YouTubeでミュージックビデオの無料配信を行うことで、楽曲の売上が増加するという事例がある。
500以上の楽曲の半分の時系列データを分析した結果、YouTubeで無料公開すると、そうでない場合に比べてCDの販売数が約19%増加するというものだ。
さらに、長時間のフルバージョンのものの方が、短時間の区切ったものより、販促効果は高かったということだ。
そして、歴史を紐解くと、ある大きな革命が起きて新たな時代が始まったときには、それが200年ほどの社会の基盤・主たる価値観となることがわかる。
産業社会の「物の豊かさ・富を築くことを重視」する価値観から、「つながり・感謝されること・心の豊かさを重視」する価値観に変化してきている。
これまでの情報技術の革新や、それに伴う人々の価値観の変化にも目を見張るものがあったが、それはまだ情報社会の黎明期にすぎず、今後本格的に情報社会の発展があると考えるのが妥当だ。
今の状態は、かつて産業革命でいえば画期的な製鉄方法が登場して人々が沸き、盛んに新しいことを始めようとしている時期に過ぎない。
産業社会において駆動力である石炭の消費量が飛躍的に増加し始めたのも、主要産業である銑鉄産出高が急速に増加し始めたのも、産業革命から数十年経ってからである。
そのような情報社会において、無料化の流れ、ソーシャル化の流れは今後も止まらないであろうし、効率的に収益化する多段階価格差別もビジネスの核をなして行くだろう。
このビジネスモデルの変革は、これから100年以上続くまったく新しい時代において競争力を獲得するには必須の変革なのである。
以上、本書より抜粋。
「フリー、ソーシャル、価格差別、データ」という、新たなビジネスモデルを極めたい。
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国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授、山口真一氏の心に響く言葉より…
「今までのビジネスのやり方では、立ち行かなくなっている」
あなたのいる業界や周囲の業界を見ていて、このように思ったことはないだろうか。
今、あらゆる分野において既存ビジネスモデルが危機を迎えている。
たとえば、かつ栄華を誇った新聞業界も、この10年ほどで日々発行部数を計1000万部も落し、あたらしいビジネスモデルの模索を余儀なくされている。
それなら紙の新聞の販売からネット配信すれば良いではないか、と思いがちだが、他社と明確に差別化されている日経新聞を除き、どこの新聞社もネットでは苦戦を強いられているのが現状である。
小売業も大きな転換期を迎えている。
今やアマゾン・ジャパンの推定国内売上高は1.5兆強と、セブンイレブンの国内売上高(1兆円)をはるかに超える。
さらに、この流れは2020年に押し寄せた新型コロナウイルスの影響で加速している。
ウイルス感染拡大防止のため「外出自粛要請」が出され、多くの産業が打撃を受けることになった。
グローバル単位で人の移動が制限される中、既存ビジネスは深刻なダメージを受け、グローバルな危機に対する脆弱性が明らかになった。
他方、社会の情報化によって新たに誕生したサービスは好調なものが多い。
動画配信サービスのネットフリックスは、新型コロナウイルス感染を防ぐ「巣ごもり」を背景に有料会員を増やして2020年1〜3月期で最高益を更新している。
マイクロソフトもクラウドの利用拡大、ゲーム利用の増加により、前年同期比15%増の売上高を第3四半期決算にて計上した。
GAFAといわれる米国の巨大4企業群もそれぞれ業績悪化どころかむしろ好調になっている。
このような既存ビジネスモデルの行き詰まりや、それに気づいた企業の方針転換は、世界共通で起こっていることである。
しかし残念なことに、とりわけ日本企業は、この変化に完全に取り残されてしまったと指摘される。
そのことを端的に表しているのが、日本企業の時価総額の推移だ。
世界の時価総額ランキングを見ると、平成元年にはベスト10にNTTや日本興業銀行など日本企業7社がランクインしており、まさに「経済大国日本」を象徴していた。
ところがそれが令和元年には、ランクインしている日本企業は0社になる。
代わって入ってくるのが、アップル、アマゾン、アルファベット(グーグル)といった、新たなビジネスモデルで覇者となった米国の企業群である。
8社が米国企業で、残りの2社は中国企業が占める。
これを打開する施策(しさく)を検討しなければならない。
しかし、そもそもなぜ最近になってこのようなパラダイムシフトが各産業で起こっているのだろうか。
その理由は、テクノロジー側の「技術革新」と、人々の「価値観の変化」という2つに集約される。
1つ目の技術革新は、昔から数多くのビジネスを破壊してきた。
たとえば身近なところでいうと、交通手段がわかりやすい。
かつて徒歩や馬車が主流だった時代から、技術革新によって鉄道、自動車、飛行機が次々と新しく生まれ、最終的にはほぼ完全に置き換わって現代にいたっている。
馬車というとはるか昔のことのように思うが、実は20世紀初頭まで実用的な交通手段として盛んに使われていたものである。
コミュニケーション手段も同様の変遷をたどった。
手紙・書簡が主流だったものが、電報という画期的なものが生まれて急速に普及した。
しかしそれも、固定電話の普及により劇的に量を減らし、その固定電話ですら最近では携帯電話にとって代わられて姿を消しつつある。
2つめに挙げた「価値観の変化」とは、近年の若者を中心に見られる極めて大きな変化である。
昔の消費者は物の所有に価値を見出していたが、現代の消費者、とりわけ若者は、つながりや体験を重視する価値観を持つようになったということだ。
「若者が車を買わなくなった」というニュースを読んだことがあるのではないだろうか。
実際、世帯主が29歳以下の乗用車保有率(新車)は29.9%と、40〜59歳の61.2%の半分にも達していない。
この「若者の車離れ」の理由として挙げられるのが、経済的な事情である。
確かに、そもそも世帯主が29歳以下の家庭は40〜59歳よりも圧倒的に収入が少ないため、新車購入率が低いのは当然である。
さらに、長年にわたり所得が伸びづらい状況が続いたことから、若者の経済事情は良くない。
では、本当に経済的な理由だけで若者は車を買わなくなったのだろうか。
そのような若者の消費行動を考える際には、若者の価値観の変化も見逃してはいけない。
つまり、車を「買えない」のではなく、そもそも買いたいと思わないということである。
これは先に挙げた「技術革新」の結果でもある。
技術革新によりネットが普及し、さまざまな人が頻繁にコミュニケーションをとる「情報社会」になった結果として、若者たちを中心に価値観が大きく変化している。
それは、物の豊かさや富を築くこと、所有することを重視していた従来の価値観から、つながりや感謝されること、そして心の豊かさを重視する価値観への変化である。
ここでいう「つながり」とは、親友との強固なつながりというよりは、ネットが可能にしたより緩いつながりである。
動画共有サイトで他の人の作った動画を観て楽しみ、ソーシャルメディア上で友人・知人と交流するというようなつながり方のことで、このことを車を買ってドライブをするよりも楽しいと感じているのだ。
ソーシャルメディアが若者の目に非常に魅力的に映るのは、そこで簡単に自己を表現することができ、同時に、他者の表現を受け取ることができる点にある。
今の若者にとってのヒーローは、人気ユーチューバーであり、インスタグラムで多くのフォロワーを抱えている人なのである。
それらが魅力的に映るのは、それによってお金を稼いでいるからではなく、多くの人を喜ばせるような価値を提供していて、実際に感謝されたり称賛されたりしているからだ。
社会の情報化が人々の価値観を変えているのである。
このように価値観が変化している中では、従来のようなビジネスモデルやマーケティング手法では収益を上げることができない。
このような背景を無視して、売上の低下を「若者がお金を使わなくなった」からだと、どこかで聞いたような言葉で片づけてしまうと、情報化社会のビジネスから取り残されるだけである。
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山口真一氏は、「技術革新」と「価値観の変化」が起きたことにより、ビジネスモデルが変わったという。
それが「FSP-D」。
それは、「フリー(Free)」「ソーシャル(Social)」「価値差別(Price disucrimination)」「データ(Data)」という、たった4つのキーワードで構成される。
これら4つのキーワードは、これまで個々に論じられることは多かった。
しかし、今やそれらは有機的に組み合わされて利用されるようになった。
フリーの興味深い事例はいくつもある。
その中の一つに、YouTubeでミュージックビデオの無料配信を行うことで、楽曲の売上が増加するという事例がある。
500以上の楽曲の半分の時系列データを分析した結果、YouTubeで無料公開すると、そうでない場合に比べてCDの販売数が約19%増加するというものだ。
さらに、長時間のフルバージョンのものの方が、短時間の区切ったものより、販促効果は高かったということだ。
そして、歴史を紐解くと、ある大きな革命が起きて新たな時代が始まったときには、それが200年ほどの社会の基盤・主たる価値観となることがわかる。
産業社会の「物の豊かさ・富を築くことを重視」する価値観から、「つながり・感謝されること・心の豊かさを重視」する価値観に変化してきている。
これまでの情報技術の革新や、それに伴う人々の価値観の変化にも目を見張るものがあったが、それはまだ情報社会の黎明期にすぎず、今後本格的に情報社会の発展があると考えるのが妥当だ。
今の状態は、かつて産業革命でいえば画期的な製鉄方法が登場して人々が沸き、盛んに新しいことを始めようとしている時期に過ぎない。
産業社会において駆動力である石炭の消費量が飛躍的に増加し始めたのも、主要産業である銑鉄産出高が急速に増加し始めたのも、産業革命から数十年経ってからである。
そのような情報社会において、無料化の流れ、ソーシャル化の流れは今後も止まらないであろうし、効率的に収益化する多段階価格差別もビジネスの核をなして行くだろう。
このビジネスモデルの変革は、これから100年以上続くまったく新しい時代において競争力を獲得するには必須の変革なのである。
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