【2030年の世界地図帳】3840
落合陽一氏の心に響く言葉より…
私たちの住んでいる日本も大きな社会変化の中にいます。
2030年、日本は国民の3分の1近くを65歳以上の高齢者が占める国になります。
「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、全人口に占める割合は約2割に達します。
その一方で、社会保障制度を支える生産年齢人口(15〜64歳)の割合は6割以下にまで減少し、1.8人の現役世代が3人の高齢者を支えるという構図が想定されてきました。
2030年というと遠くに感じますが、これはわずか11年後の未来予想図です。
2010年、日本はGDP(国内総生産)で中国に抜かれ、世界第2位の経済大国の座を明け渡しました。
現在の日本には大勢の中国人が訪れています。
都市や観光地では彼らの旺盛な消費欲の恩恵を受けている業界も少なくないでしょう。
このような状況を2000年以前に予測できた人はどれだけいたでしょうか。
巨大な人口を抱える中国市場にポテンシャルがあることは、たびたび指摘されていました。
とはいえ、多くの中国人観光客の団体が銀座や軽井沢を訪れ、中国製の電子機器が日本製品に取って代わる現状を1990年代に具体的に予見できた人は、ほとんどいなかったと思います。
日本で起きているこういった出来事は、世界規模で発生している巨大な現象の、ほんの一端の現れに過ぎません。
日本の中だけを見て思考していても、全体を把握することは難しくなりつつあります。
ただ誤解がないようにしておきたいのは、私は悲観したいのではなく、考える補助輪を提示して次の成長を描きたいのです。
2030年までには、このような産業のプレーヤーの代替に見られるような変化が、インドやアフリカの一部でも起き始めるでしょう。
その兆候はすでに現れているといえます。
たとえば、インドのGDPは世界第7位(2018年)でイギリスやフランスを近年中に追い抜き、世界第5位になるでしょう。
インドの湾岸部には多数のIT関連企業が進出し、特に南部の都市バンガロールには、将来有望なスタートアップが数多く集うことから「インドのシリコンバレー」とも呼ばれています。
アフリカに目を向ければ、1990年代に内戦が起きたルワンダでは、現大統領が「IT立国」を掲げ、国家再建に大きく寄与したともいわれています。
ケニアでは「Mペサ」と呼ばれるモバイル送金サービスが普及し、キャッシュレス化が急速に進行しています。
たとえば、ケニアではMペサの取引額がそのGDPと同額に迫る(2017年)といわれる一方、日本のキャッシュレス普及率は2017年時点で約21%です。
先進国でユーザーを獲得し尽したIT産業は、未開拓の市場を新興国に求め、「中国の時代」の次を見据えた投資を、すでにインドやアフリカで始めているのです。
これからの「世界」について考える上で、重要な鍵となりそうな国際的な枠組みが登場しています。
そのひとつが「SDGs」です。
官庁街や会議やイベントで、「SDGs」のロゴをかたどったカラフルなドーナツ型のバッジをスーツにつけている人を見かけた人もいるのではないでしょうか。
「SDGs(Sustainable Development Goals)」は、持続可能な世界の実現のために定められた世界共通の目標のことです。
「持続可能な世界」とは、今現在生活している私たちの要求を満たし、かつ、将来の世代が必要とする資産を損なうことのない社会のことです。
その実現のために、貧困から環境、労働問題まで17のゴールを掲げた「SDGs」は、2010年の国連サミットにおいて全会一致で採択され、2030年の達成を目標としています。
『2030年の世界地図帳』SB Creative
本書の中で気になった言葉をピックアップしてみる。
◆「テクノロジーと人口」
2019年4月時点のアマゾンの時価総額は、7970億ドル。2017年のブラジルの国家予算が7337億ドルであることを考えると一企業でありながら一国の国家予算を凌(しの)ぐ時価総額となっています。
2019年4月時点のフェイスブックの全世界のユーザーの数は約23億8000万人で、世界最大の人口を持つ中国の約14億人(2019年7月)をはるかに上回ります。
また、豊かな人口がもたらす労働力と消費は、市場経済を動かし、巨大な利潤を生み出し、国家や営利企業を成長させます。
今後はどういった人口動態に変遷していくのかを、世界地図から考えながら、俯瞰することは大切だと思います。
◆「破壊的テクノロジー」
テクノロジーによる時代の変革を考える上で重要なのが「破壊的テクノロジー(disruptive technology)」の存在です。
たとえば、iPhoneに代表されるスマートフォンもそのひとつといわれています。
2000年代中盤に各社が薄型化や軽量化を競っていた携帯電話業界を刷新したiPhoneは、その後の他の製品のスタンダードになりました。
それまでの携帯電話の多くは、通話専用のボタンがハードウェアについているものが多く、あくまで「電話とアプリケーション」という枠組みでしたが、iPhoneにおいては、電話は画面の上のひとつのアプリケーションに過ぎない、という状態になったのです。
カメラ、マイク、画面、タッチパネルを備えた携帯端末の影響は携帯電話業界にとどまらず、モバイルでのネットショッピングや動画・音楽の配信サービスの市場を生み出しました。
それによって他の業界も変化を余儀なくされ、私たちの生活習慣も変わりました。
このような点でスマートフォンという新分野を築き上げ、他の携帯電話を陳腐化した技術にしてしまったiPhoneの出現は、破壊的テクノロジーの典型的事例といえるでしょう。
また、5つの破壊的テクノロジーとは…
1. AIなど機械学習関連技術領域
2. 5G
3. 自立走行(自動運転)
4. 量子コンピューティング
5. ブロックチェーン
◆2020年代には、ブロックチェーンによる食品の管理が始まることが予測されています。
食品のサプライチェーンにおける生産量や流通量を厳密にコントロールすることで、廃棄率の減少と安全性の向上を図る戦略は今後のテック面での有力分野でしょう。
◆医療は技術革新が目覚ましい分野で、2030年までには、これまで治療が困難だった疾患を完治させる技術がいくつも登場すると見込まれています。
近年、実際に導入され始めているのは「ロボット手術」です。
また、今後注目されている手法のひとつは、iPS細胞による再生医療です。
特に腎臓や歯、角膜や心筋などの再生医療の確立は、社会に与えるインパクトが大きいでしょう。
医療分野の技術革新によって、現在の死亡要因の最上位であるがんは、2050年代までに根絶されると考える専門家もいます。
今までわからなかったがんの転移の理由も少しずつ解明されているようです。
転移を抑止する薬も不可能ではないかもしれません。
そして2040年代には、人間の平均寿命は100歳に到達するという予測があります。
◆少子高齢化により日本全体の人口は減少し続けます。
2033年前後には、日本の空き家率は30%を越えるという試算があり、地方都市には廃墟と化した家屋が立ち並ぶことになるかもしれません。
さらに2035年前後には地価の大暴落が懸念されています。
平均寿命を越えた団塊世代が鬼籍に入り出しますが、子ども世代が土地家屋の相続税を払えず、多くの土地が売りに出されると予想されるためです。
その結果、2030年代に日本の土地・住宅事情は大きな変化に晒(さら)される可能性があります。
◆AIが人々の雇用を代替する未来については、ここ数年、多くの識者が言及していますが、2020年以降それは段階的に進行すると考えられます。
最初の大きな変化は、士業を中心とした資格専門職の代替だといわれています。
2030年頃には弁護士、裁判官、税理士、警察官といった、法律に基づいた判断が求められる職業の現場にAIが導入されるでしょう。
その役割の大半が機械化され、人間は顧客からの対応を行うインターフェースとしての役割に特化することになるでしょう。
2030年代には、知的生産層へのAIの導入が始まるといわれています。
研究者、コンサルタント、語学教師、クリエイターなどが職能を分担するようになり、人自体が人とのコミュニケーションのためのインターフェースに近づいていくと考えられます。
ここ数年で特に影響が大きいのは翻訳AIの進化です。
2025年までには高精度な同時通訳が可能なAIが登場し、世界を隔てる言語の障壁は大きく引き下げられると予想されています。
もうひとつの大きな変化は、自動運転の普及による運輸業界の変革です。
2030年までには、各地域のバスやタクシーといった交通機関にも自動運転が導入され、現在の「ドライバー」という職業は衰退していくことになるかもしれません。
そして、最後に落合陽一氏は「デジタル発酵」という概念を提唱している。
日本では、伝統的に発酵の技術が磨かれてきた。
味噌や醤油、日本酒などは千年以上の時間を越えて伝えられた文化だ。
杜氏が酵母を育てるように、我々は発酵のための環境を育てる必要があるという。
人間が群れを成す動物、つまりネットワーク的な存在であること、それは複数の種類の微生物が、互いに情報を交換しながらネットワークを形成して醸成される「発酵」的なあり方だと落合氏は考えている。
だからこそ日本人は、デジタルテクノロジーをはじめとした各種のイノベーションを駆使し、世界を俯瞰した上で独自の着地を求められている。
2030年は、あと、たったの10年あまり…
2030年の世界地図帳に思いを馳(は)せたい。
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落合陽一氏の心に響く言葉より…
私たちの住んでいる日本も大きな社会変化の中にいます。
2030年、日本は国民の3分の1近くを65歳以上の高齢者が占める国になります。
「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、全人口に占める割合は約2割に達します。
その一方で、社会保障制度を支える生産年齢人口(15〜64歳)の割合は6割以下にまで減少し、1.8人の現役世代が3人の高齢者を支えるという構図が想定されてきました。
2030年というと遠くに感じますが、これはわずか11年後の未来予想図です。
2010年、日本はGDP(国内総生産)で中国に抜かれ、世界第2位の経済大国の座を明け渡しました。
現在の日本には大勢の中国人が訪れています。
都市や観光地では彼らの旺盛な消費欲の恩恵を受けている業界も少なくないでしょう。
このような状況を2000年以前に予測できた人はどれだけいたでしょうか。
巨大な人口を抱える中国市場にポテンシャルがあることは、たびたび指摘されていました。
とはいえ、多くの中国人観光客の団体が銀座や軽井沢を訪れ、中国製の電子機器が日本製品に取って代わる現状を1990年代に具体的に予見できた人は、ほとんどいなかったと思います。
日本で起きているこういった出来事は、世界規模で発生している巨大な現象の、ほんの一端の現れに過ぎません。
日本の中だけを見て思考していても、全体を把握することは難しくなりつつあります。
ただ誤解がないようにしておきたいのは、私は悲観したいのではなく、考える補助輪を提示して次の成長を描きたいのです。
2030年までには、このような産業のプレーヤーの代替に見られるような変化が、インドやアフリカの一部でも起き始めるでしょう。
その兆候はすでに現れているといえます。
たとえば、インドのGDPは世界第7位(2018年)でイギリスやフランスを近年中に追い抜き、世界第5位になるでしょう。
インドの湾岸部には多数のIT関連企業が進出し、特に南部の都市バンガロールには、将来有望なスタートアップが数多く集うことから「インドのシリコンバレー」とも呼ばれています。
アフリカに目を向ければ、1990年代に内戦が起きたルワンダでは、現大統領が「IT立国」を掲げ、国家再建に大きく寄与したともいわれています。
ケニアでは「Mペサ」と呼ばれるモバイル送金サービスが普及し、キャッシュレス化が急速に進行しています。
たとえば、ケニアではMペサの取引額がそのGDPと同額に迫る(2017年)といわれる一方、日本のキャッシュレス普及率は2017年時点で約21%です。
先進国でユーザーを獲得し尽したIT産業は、未開拓の市場を新興国に求め、「中国の時代」の次を見据えた投資を、すでにインドやアフリカで始めているのです。
これからの「世界」について考える上で、重要な鍵となりそうな国際的な枠組みが登場しています。
そのひとつが「SDGs」です。
官庁街や会議やイベントで、「SDGs」のロゴをかたどったカラフルなドーナツ型のバッジをスーツにつけている人を見かけた人もいるのではないでしょうか。
「SDGs(Sustainable Development Goals)」は、持続可能な世界の実現のために定められた世界共通の目標のことです。
「持続可能な世界」とは、今現在生活している私たちの要求を満たし、かつ、将来の世代が必要とする資産を損なうことのない社会のことです。
その実現のために、貧困から環境、労働問題まで17のゴールを掲げた「SDGs」は、2010年の国連サミットにおいて全会一致で採択され、2030年の達成を目標としています。
『2030年の世界地図帳』SB Creative
本書の中で気になった言葉をピックアップしてみる。
◆「テクノロジーと人口」
2019年4月時点のアマゾンの時価総額は、7970億ドル。2017年のブラジルの国家予算が7337億ドルであることを考えると一企業でありながら一国の国家予算を凌(しの)ぐ時価総額となっています。
2019年4月時点のフェイスブックの全世界のユーザーの数は約23億8000万人で、世界最大の人口を持つ中国の約14億人(2019年7月)をはるかに上回ります。
また、豊かな人口がもたらす労働力と消費は、市場経済を動かし、巨大な利潤を生み出し、国家や営利企業を成長させます。
今後はどういった人口動態に変遷していくのかを、世界地図から考えながら、俯瞰することは大切だと思います。
◆「破壊的テクノロジー」
テクノロジーによる時代の変革を考える上で重要なのが「破壊的テクノロジー(disruptive technology)」の存在です。
たとえば、iPhoneに代表されるスマートフォンもそのひとつといわれています。
2000年代中盤に各社が薄型化や軽量化を競っていた携帯電話業界を刷新したiPhoneは、その後の他の製品のスタンダードになりました。
それまでの携帯電話の多くは、通話専用のボタンがハードウェアについているものが多く、あくまで「電話とアプリケーション」という枠組みでしたが、iPhoneにおいては、電話は画面の上のひとつのアプリケーションに過ぎない、という状態になったのです。
カメラ、マイク、画面、タッチパネルを備えた携帯端末の影響は携帯電話業界にとどまらず、モバイルでのネットショッピングや動画・音楽の配信サービスの市場を生み出しました。
それによって他の業界も変化を余儀なくされ、私たちの生活習慣も変わりました。
このような点でスマートフォンという新分野を築き上げ、他の携帯電話を陳腐化した技術にしてしまったiPhoneの出現は、破壊的テクノロジーの典型的事例といえるでしょう。
また、5つの破壊的テクノロジーとは…
1. AIなど機械学習関連技術領域
2. 5G
3. 自立走行(自動運転)
4. 量子コンピューティング
5. ブロックチェーン
◆2020年代には、ブロックチェーンによる食品の管理が始まることが予測されています。
食品のサプライチェーンにおける生産量や流通量を厳密にコントロールすることで、廃棄率の減少と安全性の向上を図る戦略は今後のテック面での有力分野でしょう。
◆医療は技術革新が目覚ましい分野で、2030年までには、これまで治療が困難だった疾患を完治させる技術がいくつも登場すると見込まれています。
近年、実際に導入され始めているのは「ロボット手術」です。
また、今後注目されている手法のひとつは、iPS細胞による再生医療です。
特に腎臓や歯、角膜や心筋などの再生医療の確立は、社会に与えるインパクトが大きいでしょう。
医療分野の技術革新によって、現在の死亡要因の最上位であるがんは、2050年代までに根絶されると考える専門家もいます。
今までわからなかったがんの転移の理由も少しずつ解明されているようです。
転移を抑止する薬も不可能ではないかもしれません。
そして2040年代には、人間の平均寿命は100歳に到達するという予測があります。
◆少子高齢化により日本全体の人口は減少し続けます。
2033年前後には、日本の空き家率は30%を越えるという試算があり、地方都市には廃墟と化した家屋が立ち並ぶことになるかもしれません。
さらに2035年前後には地価の大暴落が懸念されています。
平均寿命を越えた団塊世代が鬼籍に入り出しますが、子ども世代が土地家屋の相続税を払えず、多くの土地が売りに出されると予想されるためです。
その結果、2030年代に日本の土地・住宅事情は大きな変化に晒(さら)される可能性があります。
◆AIが人々の雇用を代替する未来については、ここ数年、多くの識者が言及していますが、2020年以降それは段階的に進行すると考えられます。
最初の大きな変化は、士業を中心とした資格専門職の代替だといわれています。
2030年頃には弁護士、裁判官、税理士、警察官といった、法律に基づいた判断が求められる職業の現場にAIが導入されるでしょう。
その役割の大半が機械化され、人間は顧客からの対応を行うインターフェースとしての役割に特化することになるでしょう。
2030年代には、知的生産層へのAIの導入が始まるといわれています。
研究者、コンサルタント、語学教師、クリエイターなどが職能を分担するようになり、人自体が人とのコミュニケーションのためのインターフェースに近づいていくと考えられます。
ここ数年で特に影響が大きいのは翻訳AIの進化です。
2025年までには高精度な同時通訳が可能なAIが登場し、世界を隔てる言語の障壁は大きく引き下げられると予想されています。
もうひとつの大きな変化は、自動運転の普及による運輸業界の変革です。
2030年までには、各地域のバスやタクシーといった交通機関にも自動運転が導入され、現在の「ドライバー」という職業は衰退していくことになるかもしれません。
そして、最後に落合陽一氏は「デジタル発酵」という概念を提唱している。
日本では、伝統的に発酵の技術が磨かれてきた。
味噌や醤油、日本酒などは千年以上の時間を越えて伝えられた文化だ。
杜氏が酵母を育てるように、我々は発酵のための環境を育てる必要があるという。
人間が群れを成す動物、つまりネットワーク的な存在であること、それは複数の種類の微生物が、互いに情報を交換しながらネットワークを形成して醸成される「発酵」的なあり方だと落合氏は考えている。
だからこそ日本人は、デジタルテクノロジーをはじめとした各種のイノベーションを駆使し、世界を俯瞰した上で独自の着地を求められている。
2030年は、あと、たったの10年あまり…
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