【人の幸せ実現のために存在する企業】2623
法政大学教授、坂本光司氏の心に響く言葉より…
周知のように、価格競争型経営を行う企業は、近年、社会にさまざまな問題を引き起こしています。
たとえば、大手スーパーや量販店でよく見られる、「自社の価格が、もし他店よりも高ければ、それを証明するものを見せてくれたなら、同じ価格にします…」といった経営です。
こんなことをしていたら、誠実な顧客は「この店が当初設定した価格はいったい何だったのか…」「そんなことを知らなかった自分は損をしてしまった…」と、逆にその店の値決めに不快感を増幅させていくと思います。
よりモチベーションを下げてしまうのは、社員や仕入先などでしょう。
顧客からの誠実な質問に、きちんとした回答ができないからです。
また大手メーカーなので日常的に行われている、相見積もりや競争見積もり、さらには「世界最適購買」という名の選定方法にも問題があります。
新商品の場合は、こうした取引先の選定は当然かもしれません。
重要な問題になってくるのは、すでに長期間にわたり流通している商品の場合です。
「最適購買」という言葉は美しいのですが、要は「いかに安く良いものを仕入れるか…」のために、多くの中小企業をまるで、天秤にかけ、力で価格を決めるようなやり方だといっても過言ではありません。
こうした経営は、社員だけでなく社員の家族、さらには仕入先・協力企業の社員まで、心身ともに疲弊させてしまいます。
そして、嫌気がさした社員は企業への不信感を増幅させていき、サービスの低下や離職の増大を招くばかりか、慢性的な新規入職者の不足をもたらします。
そればかりか、中長期的に見ると、その企業はもとより、わが国の活力までも低下させてしまうのです。
事実、1983年当時、わが国には78万ヶ所の工場が存在していましたが、その後、好・不況を問わず右肩下がりに減少し、最新の統計(2014年)では、40万ヶ所となっています。
つまりこの30年間で、なんと38万ヶ所、率にして49%もの大幅な減少となっているのです。
このことは小売業でも同様です。
この32年間で94万店、率にして55%と、半減以上の激減です。
こうした問題は、何も工場や小売商店の激減というだけではありません。
より深刻な問題は、赤字法人の増大にあります。
かつては30%から50%程度であった赤字企業比率は、近年においては、70%前後で推移しています。
実は、これほどまでに多くの企業の消滅や、赤字企業の増加をもたらしているのは、好・不況や円高・円安といった問題だけではありません。
というのは工場や小売商店の激減、赤字企業の増加が、すでに30年以上にわたり続いているからです。
これは、経済社会のボーダレス化・グローバル化、さらにはソフト化・サービス化が進行する中、自社の利幅を削って実現しているといっても過言ではない「低価格を売り物」にした事業活動では、通用しなくなってしまったからだと言えます。
もっとはっきり言えば、国内外のライバル企業などとの受注競争・販売競争に「勝った負けた」と一喜一憂するような経営、「他社よりも低価格」を武器とした「喧嘩ビジネス的経営」では、今や企業の存続が危ぶまれているばかりか、「関係する人々を幸せにする」という企業の真の使命と責任を果たすことができなくなってしまっているのです。
『さらば価格競争』商業界
少し前のニュースに、「ドイツのスポーツ用品メーカーのアディダスが、2017年からドイツ国内でロボットを利用したスニーカーの生産を開始する」、というものがあった。
アディダスは、かつてスニーカーの生産を人件費の安いアジアに移転し、その国の人件費が上がるとまた次の人件費の安い国に移る、という方式を取っていた。
しかし、そういう「世界最適購買」のような生産方式もそろそろ終焉(しゅうえん)を迎えている、という示唆に富んだニュースだった。
すなわち、これは価格競争型経営の終焉でもある。
これから生き残る企業は、商品の真の品質と、顧客はもちろんのこと、社員や取引先や地域社会を幸せにしているのかどうか、という企業の姿勢が問われている。
「誰かの犠牲の上に成り立つ」ような経営が正しいわけがない。
人の幸せ実現のために存在する企業でありたい。
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法政大学教授、坂本光司氏の心に響く言葉より…
周知のように、価格競争型経営を行う企業は、近年、社会にさまざまな問題を引き起こしています。
たとえば、大手スーパーや量販店でよく見られる、「自社の価格が、もし他店よりも高ければ、それを証明するものを見せてくれたなら、同じ価格にします…」といった経営です。
こんなことをしていたら、誠実な顧客は「この店が当初設定した価格はいったい何だったのか…」「そんなことを知らなかった自分は損をしてしまった…」と、逆にその店の値決めに不快感を増幅させていくと思います。
よりモチベーションを下げてしまうのは、社員や仕入先などでしょう。
顧客からの誠実な質問に、きちんとした回答ができないからです。
また大手メーカーなので日常的に行われている、相見積もりや競争見積もり、さらには「世界最適購買」という名の選定方法にも問題があります。
新商品の場合は、こうした取引先の選定は当然かもしれません。
重要な問題になってくるのは、すでに長期間にわたり流通している商品の場合です。
「最適購買」という言葉は美しいのですが、要は「いかに安く良いものを仕入れるか…」のために、多くの中小企業をまるで、天秤にかけ、力で価格を決めるようなやり方だといっても過言ではありません。
こうした経営は、社員だけでなく社員の家族、さらには仕入先・協力企業の社員まで、心身ともに疲弊させてしまいます。
そして、嫌気がさした社員は企業への不信感を増幅させていき、サービスの低下や離職の増大を招くばかりか、慢性的な新規入職者の不足をもたらします。
そればかりか、中長期的に見ると、その企業はもとより、わが国の活力までも低下させてしまうのです。
事実、1983年当時、わが国には78万ヶ所の工場が存在していましたが、その後、好・不況を問わず右肩下がりに減少し、最新の統計(2014年)では、40万ヶ所となっています。
つまりこの30年間で、なんと38万ヶ所、率にして49%もの大幅な減少となっているのです。
このことは小売業でも同様です。
この32年間で94万店、率にして55%と、半減以上の激減です。
こうした問題は、何も工場や小売商店の激減というだけではありません。
より深刻な問題は、赤字法人の増大にあります。
かつては30%から50%程度であった赤字企業比率は、近年においては、70%前後で推移しています。
実は、これほどまでに多くの企業の消滅や、赤字企業の増加をもたらしているのは、好・不況や円高・円安といった問題だけではありません。
というのは工場や小売商店の激減、赤字企業の増加が、すでに30年以上にわたり続いているからです。
これは、経済社会のボーダレス化・グローバル化、さらにはソフト化・サービス化が進行する中、自社の利幅を削って実現しているといっても過言ではない「低価格を売り物」にした事業活動では、通用しなくなってしまったからだと言えます。
もっとはっきり言えば、国内外のライバル企業などとの受注競争・販売競争に「勝った負けた」と一喜一憂するような経営、「他社よりも低価格」を武器とした「喧嘩ビジネス的経営」では、今や企業の存続が危ぶまれているばかりか、「関係する人々を幸せにする」という企業の真の使命と責任を果たすことができなくなってしまっているのです。
『さらば価格競争』商業界
少し前のニュースに、「ドイツのスポーツ用品メーカーのアディダスが、2017年からドイツ国内でロボットを利用したスニーカーの生産を開始する」、というものがあった。
アディダスは、かつてスニーカーの生産を人件費の安いアジアに移転し、その国の人件費が上がるとまた次の人件費の安い国に移る、という方式を取っていた。
しかし、そういう「世界最適購買」のような生産方式もそろそろ終焉(しゅうえん)を迎えている、という示唆に富んだニュースだった。
すなわち、これは価格競争型経営の終焉でもある。
これから生き残る企業は、商品の真の品質と、顧客はもちろんのこと、社員や取引先や地域社会を幸せにしているのかどうか、という企業の姿勢が問われている。
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