これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

森林破壊と再生

2021-06-12 12:45:44 | 山林の問題
【はじめに】
 森林に何らかの手を加える事は、大なり小なり森林を破壊する事になります。

 私の父は戦後、和歌山県の龍神にUターンして木材と山林の販売をしました。父の夢は、杉や檜の植林を増やす事でした。 紙の需要が増加するなど、木材は父の予想通り多量に必要になりましたが、外国から安価に輸入出来るので、自給率は30%~40%で、価格は暴落したままです。 国からの補助金無しでは、植林した山は維持出来なくなってしまいました。

 今回は、「森林の破壊を最小限にして、有用な木材を永続的に得る為にはどうしたら良いのか?」と言う非常に難しい問題について、私の考えを書きます。

【メリットとデメリット】
 何かすると、実行した事によるメリットとデメリットが有ります。 「やるべきか?否か?」検討する時、メリットとデメリットについて十分考察すべきです。メリットとデメリットを測る天秤は、絶対的な物では有りません。 時代/状況でメリットの方が重かったり、軽かったりします。

 植林すべきか?否か?を検討するのは非常に難しいです。 杉や檜を育てる為には最低50年~60年必要です。 決断する人が亡くなった後の杉材や檜材の需要予想が必要なのです。 その時の輸入木材の価格を予想する必要も有ります。 「当たるも八卦当たらぬも八卦」の世界です。

 戦後、木材需要が増加した頃に杉や檜を沢山植林しました。 木材需要が減った分けでは有りませんが、安い木材が多量に輸入される様になって、木材価格が低迷しています。 日本の森林経営は難しくなっているのです。 国からの補助金が増加して来ていますが、林業従事者が激減して、高齢化したために、間伐や枝打ちをしない山が増えています。 これが、日本の現状です。

(余談 :友人の夢) 小学校と中学校が一緒だった九州に住む友人がいます。 彼は数億円貯金が有りました。 60歳を過ぎた頃、故郷の龍神に帰省した帰りに大阪で私と会いました。 帰省したら日高川で釣りを楽しんでいた様でした。 「帰る度に川の泥が多くなる。無闇矢鱈に植林して、間伐と枝打ちをしないで放置する山が増えているのが原因だ! 65歳になったら、息子に会社を譲って龍神に帰り、植林した山を買って伐採し、雑木林に戻す事業を始める」と熱く語りました。 彼は息子に会社を任せましたが、別の事業を始めたので、龍神にはUターンしていません。

 あれから15年ほど経ちました。私は、2年に一度は龍神帰って、日高川で渓流釣りを楽しんでいました。 更に、川の泥は増えて、このままでは苔が生えなくなり、鮎が住めなくなるのではと心配しています。

【急峻な山は崩壊します!】
 急峻な山は崩壊するのが自然です。 日本には急峻な山が多く、雨が沢山降るので、山林の崩壊が常に起こっても不思議では有りません。 逆に、何故・崖崩れが頻繁には発生しないのでしょうか?

 私が考えた答えは、①木々の根が地中に張り巡って、地面を固めている。②枯れ葉が堆積して雨水を蓄え、防災ダムの働きをするので、大雨の被害を抑えるのです。

 堆積した枯れ葉が雨水を貯める能力は、想像以上です。 少々・雨が降らなくても枯れ葉や地面が蓄えた水が有るので、森林の樹木は枯れません。万一・木が枯れたら、根も死にますから山は崩壊する恐れが有ります。

【土壌は大切です!】
 全ての生物にとって、土壌(土)は極めて大切です。 火山灰を除いて、土壌は気の遠くなる歳月を掛けて、岩石から自然の力で作られた物です。母岩→礫(レキ)→砂利→砂→細砂→粘土。 森林に手を加える時、土を流失させない配慮が必要なのです。

 人間の手が加わっていない、自然の土地では、土壌の深さは場所によってまちまちです。土が少ない山に杉や檜を植林しても、良質の木材は得られません。(松は育つかも?)

 要するに、植林には向かない山が有ります。 一律の補助金政策だと、どんな山に植林して40年間(?)は所有者又は森林組合が税金で潤う事になります。 補助金が出る期間が過ぎると、伐採しても利益が得られない山は放置されて、土壌が流失して、渓流に泥が溜まってしまいます。 私は、補助金を出す山を選別する制度が必要だと考えています。

【六甲山~再度山の再生】
 今からでは信じられませんが、江戸時代に六甲山から再度山は大規模に伐採されて、禿山の様な状態だった様です。 山林火災が頻繁に起こって、自然の力では回復不可能な場所も多かったのです。 どんなにして、現在の緑豊かな山に蘇ったのか? 採算を度外視して、松や広葉樹を植える一大事業の賜物なのです。

 北北西方向から新神戸駅の真下に流れる谷(渓谷)が有ります。駅から直ぐの所に『布引の滝』が有ります。 滝から少し登った所に『布引の貯水池』が、さらに北北東に急な坂道を登ると『布引ハーブ園』に達します。 新神戸駅に行かれたら、是非とも『布引の滝』まで散歩して下さい。 雌滝、雄滝、夫婦滝が有り、新神戸駅から雌滝まで徒歩10分以内です。

 『布引の貯水池』は1900年(明治33年)に建設されました。私が神戸市の会社に入社した1971年頃は、「布引の貯水池の水は美味しくて、腐りにくいので市民の水道には流さず、外国船に供給して外貨を稼いでいる」と噂されていました。 建設された当時は、水源が禿山だったので、土砂が流れ込むと言う重大な問題が有りました。(多分、今の様に水は美味しく無かったと思います。)

 この貯水池の水源は、弘法大師ゆかりの再度山です。 1900年頃、再度山一帯は殆ど木の生えていない禿山でした。1902年から、神戸市が再度山の植林事業を開始しました。

★ 神戸市のホームページ 「六甲山最初の植林地 再度山』で検索して見てください。

 土砂が流失し無いように、石垣と木の杭で山全体を階段で取り囲む様な大工事のあと、松や広葉樹を植林しました。 木々が成長して、『布引の貯水池』が美味しい綺麗な水を貯える様になったのです。

 再度山だけでは無く、六甲山系全体に緑を復活させる事業が続けられました。 主として広葉樹を植林した分けですから、安直な費用対効果で考えたら、植林事業に賛同出来なかったと思います。 森林の再生は、水害対策、レクレーションの場作り、観光資源など多面的に考察すべきです。

 1903年に日本最初のゴルフ場(神戸ゴルフクラブ)が六甲山に出来ました。 今では考えられませんが、建設当時は、周囲は禿山だったのです。 六甲山も再度山も『瀬戸内海国立公園』に含まれているので、今後は木々が伐採される恐れは有りません。

【針葉樹の植林】
 日本の天然林は、広葉樹の間に少し針葉樹が生えています。そんな状態が自然で、日本の森林にとっては最も好ましいのだと思います。 そんな林では、枯れ葉が多量に堆積します。

 急峻な山に杉や檜を植林して、間伐や枝打ちを怠ると、枯れ葉は殆ど堆積しなくなって、大雨が降ると貴重な土が流失します。

 現在の木材価格では、将来・伐採した時に、間伐や枝打ちの費用を回収出来ません。 その為に、植林から40年間(?)に発生する費用を国が補助しているのです。 然し、林業従事者が激減し高齢化が進んでいるので、杉や檜を植林した全ての山を手入れするのは難しくなっています。

 補助金が出る期間を過ぎた山が、今後・増加してくると予想されます。 伐採費用の一部を国が補助する必要が有るのでは?と考えています。 その代わり、伐採費の補助を受けた山は、雑木林に戻す義務を課すのです。 針葉樹の植林面積と林業従事者数をバランスさせる必要が有ります。

【大規模な伐採】
 前述の再度山の様に大規模に伐採すると、簡単には雑木すら生えてこなくなってしまいます。 「林業従事者が激減しており、伐採費用を低減する為には大型の機械を導入し、広い面積を一度に伐採した方が経済的/効率的だ!」と多くの方は考えられるでしょう。 然し、急峻な山に大型機械を入れると、土壌を破壊してしまいます。

 雨で土壌が流出する恐れの有る急勾配の山林には、一度に伐採して良い面積を制限する必要が有ると考えます。 江戸時代の六甲山の様な禿山は、絶対に作ってはいけません!

(補足説明) 広葉樹の場合は伐採しても根は生き続け、切り株から芽が出てきます。 根が地面を固める役割を果たし続けてくれるのです。 針葉樹の場合は伐採すると根も死んでしまいます。 根が腐ら無い間は地面の補強の働きを続けてくれます。(伐採したら、直ぐに植林する必要が有るのです。)

 針葉樹を大型の機械で伐採したら、根をズタズタにしてしまい、地面を固める物が無くなってしまいます。 新しく植林した木が根を張る前に、大雨が降ると崖崩れが発生しやすくなってしまうのです。

【道路と崖崩れ】
 急な斜面に道路を作ると崖崩れが発生しやすくなり、自然を破壊します。

 戦後、トラックで木材を運搬をする様になったので、先進国の様に林道網の整備を(1960年から)始めました。 その主体は農林水産省の外郭団体である林野庁です。

 国道や高速道路の建設では一応、コストパフォーマンス(コスパ)が検討されますが、林道のコスパに関する記事を読んだ事が有りません。2017年時点で林道の総延長は14万kmほど有りました。(国道の総延長は67万kmほどです。) 「先進国と比べると林道網の整備は遅れている」と林野庁は考えている様なので、もっと予算を取って新しい林道を作る計画の様に見えます。

 不必要な林道を作ったらメリットが少なく、森林を破壊すると言うデメリットを後世に残す事になってしまいます。

(余談) 国道や高速道路は土砂崩れが起きない様に対策している様に見えます。 山間部はトンネルにしたり、道の横の斜面に強固な補強をしたりして。 然し、林道には立派な物も有りますが、その多くは土砂崩れ対策がお粗末です。

【我が家の畑の教訓】
 私の家には3畳程の『畑』と呼んでいる花壇が有ります。 家を建てたのは40歳前で非常に忙しかったので、化学肥料で野菜を育てていました。 最初の3年間ほどは、野菜の生育は良好でしたが、次第に可笑しくなって来ました。

 耕すと土が固くなって来ている事を実感し、ミミズがいなくなっている事に気付きました。 有機物が無くなっていたのです。 腐葉土と枯れ葉を多量に鋤き込んで、近くの林から十数匹ミミズを捕って来て放して見ました。

 ミミズが有機物を食べて/消化/分解して、植物が吸収出来る様にしているのです。 そして、土をフワフワにして、土中に空気が入りやすくしているのです。 植物の根が張っている深さまで、空気が入れる様にする事が極めて重要なのです。 土を踏み固めると空気が入れる深さが浅くなってしまいます。 古木の根元を歩くのは止めましょう!

 森林の土には、落ち葉等の有機物が多量に含まれ、ミミズが大活躍してフワフワの土にし、木々が元気に生育出来る様になっています。単なる土では有りません。

(余談 :リン酸) 肥料の三要素は窒素、リン酸、カリです。リン酸は土中のアルミニウムや鉄と結合しやすく、結合すると植物は吸収出来なくなります。有機肥料に含まれるリン酸は植物が吸収出来る状態を維持する様です。 私の有機農業の先生は、「窒素、リン酸、カリを多量に含む牛糞堆肥、鶏糞堆肥や豚糞堆肥と腐葉土やバーク堆肥等で育てると、病気に掛かり難く、美味しい野菜が出来る」と教えてくれました。 大根を有機栽培すると、スーパーに並ぶ物とは姿形が違って、水分が少ないです。

【太陽光発電】
 南向きで、傾斜角が45度前後の山に太陽光パネルを設置するのは、電気を得る点では良さそうに思えます。 数枚のパネルだったら、周囲の木の根がパネルの下まで伸びてくるので、崖崩れの恐れは少ないと思われます。 然し、数十枚もパネルを設置する時は、地面の補強工事をしなかったら崖崩れが必ず起こります。 パネルの下の土が雨で流出しない対策を施さないと、清流に土砂が流れてしまいます。

 太陽光パネルの寿命は30年ほどの様です。 多分、パネルは少しずつ故障していくのだと思われますが、一部は発電し続けます。 関係者は将来どんな問題が予想されるか?分かっていると思います。 太陽光パネルを増やす法律は制定しましたが、将来の問題には目をつぶっている様に見えます。誰が責任を持って、壊れたパネルを処理するのでしょうか? 政治家と官僚、マスコミも、「問題が大きくなって考えよう!」と言うスタンスです。

(余談 :撤去費用についての提案) 太陽光発電や風力発電は再生可能を売り物にしています。 将来、破損した状態を放置したら自然を破壊したままになってしまいます。 壊れて使わなくなったら、きちんと撤去して元の状態に戻せないのなら、再生可能とは言えません。 小規模の企業だと、採算が合わなくなったら、会社を倒産させて逃げる恐れが有ります。 電気料金には『再エネ促進賦課金』が含まれています。 将来、税金の形で撤去費用まで国民に負担させる方針の様に見受けられます。

 撤去費用を退職金積立の様に、企業に積み立てさせる案を提案します。逃げ得は許すべきでは有りません! 族議員の多いい自民党の中では議論するのさえ難しいと想像するので、野党議員に頑張って頂きたい!

(余談 :水害対策) 私は中学校を卒業するまで故郷で暮らしました。 その間に3回大雨の時に水没してしまった田圃・数カ所に太陽光パネルが設置されています。 何時か?必ず水没すると思われます。 故郷を流れる『日高川』は二級河川で、二級河川としては日本で一番長い川です。 流出した太陽光パネルは和歌山県が処理する事になると思われますが、和歌山県は準備をしているのでしょうか?


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