MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

キャッチボールの基本?

2013-04-01 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

04/01 私の音楽仲間 (473) ~ 私の室内楽仲間たち (446)



           キャッチボールの基本?




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




                関連記事

                最後の四重奏曲 (3)
                最後の四重奏曲 (4)
                最後の四重奏曲 (5)
                最後の四重奏曲 (6)
               キャッチボールの基本?
                共通項の無い世界
                八方美人になりたい
             それでいいのだハムレット君!




 貴方は、自ら弦楽四重奏を演奏して楽しむかたですか?

 そんな状況を仮定するとしましょう。 さて、貴方の仲間が
新しい曲を提案してきましたよ?



 それは貴方が知らない曲で、今まで聞いたこともありません。
さっそく準備を始めますが、まず何から取り掛かりますか?



 「もちろん楽譜が必要だよ。 あ、それに音源も聴きたいな。」

 そうですね。 今は、映像入りの音源も豊富ですし。 それに
インターネットでは、無料で視聴できるものもあります。




 しかし、何と言っても楽譜が中心。 これが無ければお話に
なりません。

 今回も、親切な仲間が楽譜を送ってくれました。 二ヶ月も
前に。 周到に準備しようと思えば、そのぐらいの期間は必要
でしょう。



 この場でお読みいただいている “室内楽” は、発表を前提
としたものではありません。 顔ぶれにしても “一期一会” に
過ぎない。 たった一日だけの場です。

 それはこの記事でも同じですが、今回は、メンバーの並々
ならぬ意欲を感じたのです。

 Violin は A.さん、Viola K.さん、チェロ Su.さんです。




 曲目は2曲で、うち1曲の楽譜を送ってくれたのが
Su.さんでした。

 下の[譜例]はそのうちの1曲で、第Ⅰ楽章の冒頭。
第Ⅰヴァイオリンのパート譜です。



 Vn.Ⅰと言えば、全体を仕切ることの多い存在です。
それは弦楽四重奏でも同じこと。

 ところが今回は、どうも “休み” が多いようですね。
切れ切れで、「メロディーを一人で担当する」…ような
曲ではなさそうです。 はっきり言って、全体の見当
がつきにくい。



 それもそのはず。 これは晩年の Beethoven の曲
です。 いわゆる “後期の四重奏曲” で、それも最後
ヘ長調 作品135 です。

 見ると、などの書き込みがある。 の前と後
では、明らかに音楽の質が異なるようです。







 演奏例の音源]は、相変わらず鑑賞には不向きです。

  まで来ると、その先には進みません。 譜例とは関係
ない別の音楽が割り込みますが、これは、同じ楽章の後半
で登場するものです。

 その後、再び に戻りますが、今度は に入らず、また
同じようなことが起きます。 ここでも、楽章後半の音楽が
割り込みます。



 原曲では (1) (2) …… (3) (4) の順に登場する音楽
が、この音源では、次の順序で編集されています。

 (1) (3) (2) (4)。




 勘の鋭い貴方は、お聴きになれば、すぐに
お解りのことでしょう。

 「本来は (1) → (2) のように続き、その間が、
[譜例]の中の だな。」



 そのとおりです! では、(3) と (4) は? 今回の
[譜例]にはありませんが。

 「それぞれ (1)、(2) と同じ材料を使った音楽だね。
後半で再現する際には、かなり手が込んでいるぞ。」



 はい。 最初の (2) は、4小節間しかありませんでした。

 それが、(4) になると 10小節に増え、しかも後半では、
他の要素が同時に鳴っています。








 作曲者は、対位法、展開、変奏、モティーフの組み合わせ
などを、この場でも多用しているようです。




 そして、それを可能にしている要素の一つは?
“キャッチボール” です。

 冒頭は、同じモティーフのやり取り。 そして、
全員で、長いフレーズを作っていきます。



 かと思うと、寄り集まってユニゾンになる。 同じ音程
(音名) で、一緒に動きます。

 音源で言えば (2) と (4) の部分に当りますね。 (2)
は、[譜例]の “間” に相当します。



 ちなみに(4) は、4人全員が参加した、完全なユニゾン。

 (2) は、Vn.Ⅱ が出たり入ったりするので、“3人半” と
いったところでしょうか・




 この曲、今回は、私にとって初めてではありませんでした。
事前には、それほどスコアを細かく見なかったほどです。

 しかし3年前の前回は、まずスコアを丁寧に読むことから
始めたのを、よく覚えています。 なぜって、自分のパート譜
からだけでは、ほとんど何も解りませんね。 Vn.Ⅰのパート
と言えども。

 BOWING (弓順) 一つにしても、全体の中での役割が解ら
なければ、何も決めることが出来ません。



 スコアの重要性は、何もこの曲に限りませんが。 しかも、
これは BEETHOVEN。 それも後期の、珠玉の作品です。

 “人類の宝” と称賛する声もあるほどですから。




 さて話変わって、「相手が捕りやすい球を投げる。」 キャッチ
ボールの基本です。

 でも、もし相手が、とんでもない球を投げてきたら…? 全力
を尽くして、それを受け止めてあげなければいけません。



 これは、“アンサンブル” というチームプレーでも同じ。




 アンサンブルでは、タイミングがもっとも大事です。 間合い
や呼吸を測り、流れに正確に乗らなければなりません。

 具体的には、正しいテンポやリズムで応えることです。 その
ほかに、音程、音量の強弱、音質などの問題もあります。



 そして究極の目標は…。 全員が同じ世界を感じ、思い描き、
創造作業に参加することです。




 私がここでいつも思い至るのは、“悪い指揮者” の問題です。

 彼あるいは彼女は、「オケのアンサンブルが悪い」…現状を
指摘するだけ! それを修正する能力が、自らには無い…。



 アンサンブルが良いオケばかりなら、誰も苦労しません…。
でも物事には、“本音と建前 ”が付き物なのです。

 「相手に “完璧” を期待する」…だけか。 あるいは、相手の
ミスを補い、なおかつ、自分の思い描く世界を創出できるか?



 これは、プロ/アマの差を問いません。 オケの世界でも、
室内楽の世界でも。

 そう考えれば、すべて同じですね。 スポーツ、音楽、また
実社会においても…。



 問題を少々拡げすぎたようです。




       [音源ページ ]  [音源ページ