MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

二人でお色直し

2013-04-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

04/28 私の音楽仲間 (484) ~ 私の室内楽仲間たち (457)



              二人でお色直し




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 チェロの作品を数多く残したポッパー



 その唯一の弦楽四重奏曲から、今回は第Ⅳ楽章です。

 演奏例の音源]は、その一部を1分ほどの長さに編集
したもので、3つの部分を繋ぎ合せてみました。



 (1) 第Ⅳ楽章の主要主題 (再現部

 (2) 第Ⅳ楽章の主要主題 (提示部

 (3) 第Ⅳ楽章の主要主題 (コーダ



 おや? 聞えるのは、主要主題だけですね。 冒頭
でも (1) と同じ、ハ調で登場します。

 低音域で歌う ViolinⅡ。 この再現部では、Vn.Ⅰが
そっと寄り添う点だけが異なっています。 音楽自体
は、楽章の冒頭とまったく同じです。



 さて、「しばらくして第Ⅱ主題が登場する」…というのが、普通
の形ですね。 ところがここでは第Ⅱ主題が、すぐに顔を出し
ます…。 今回の音源にはありませんが。

 その後になってから、主要主題がもう一度聞えるのです!
(2) は、その “確保” に当る部分ですが、ここでは変ホ調
に変身しています。



 次は大きく (3) にジャンプして、 終結部から。 ここでは主題
全体でなく、動きのある “八分音符” のモティーフが活躍します。

 調性は…? 元のハ調で登場して、全曲を締めくくります。




 “短調⇔長調” の交代を、頻繁に繰り返す、この主要主題…。

 「どっちが本当の貴方なの?」…と訊きたくなるところですね。




 これだけ変転を繰り返すなら、“展開部” は不要では?
…聞き終わると、実際にそう感じます。



 それでは、展開部では何が起きているのか?



 短い展開部の主役は、第Ⅱ主題です。 提示部では
長調で。 しかし、この部分では短調で…。

 変身するのは、主要主題だけではなかったんですね。




 こうして見てくると主題は、短調でも長調でも、確かに
魅力的です。 両主題とも。

 そして、短調と長調の間で、“変身” を何度も繰り返す。
その手法自体も、なるほど魅力的ではあります。



 でも、通常の展開部で見られる “モティーフの処理” や、
それに伴う緊張感の高まり、あるいは哲学的な止揚など
は窺えません。

 厄介な弁証法的思考より、単純明快な “明暗” を志向
したほうが、確かに解りやすい。



 しかし弾き終わってみると、その “明暗の変転” からは、
それほど大きな印象を受けません。 短調~長調を行き
来はするものの、“大きなうねり” があるわけではない。

 いわば、振り子の周期が短いので、「気分に浸りにくい」
のです。 弾いていて。 また、おそらく聴いていても。



 “歌“ と “形式” の両立…。 それは、どの作曲家
にとっても “永遠の難題” なのでしょうか。




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