MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

行き届かなきゃいいのに…

2013-04-14 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

04/14 私の音楽仲間 (480) ~ 私の室内楽仲間たち (453)



          行き届かなきゃいいのに…




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                来なきゃいいのに…
              行き届かなきゃいいのに…
                帰らなきゃいいのに…




 申しわけありません、先生。

 「いくら予習、復習をしても、身に着かんのでは、
まったく意味が無かろう。」



 勉強の量より、【習慣が改まるかどうか】の問題
なんですよ。

 「…と言うと?」




 [譜例]は前回も掲載させてもらいましたね。 Dvořák 先生
の弦楽四重奏曲 変イ長調 Op.105
、その第楽章からです。



 「二段目の最後のスタカート () は、【前の音を切れ】と
いう意味ではないぞ。」

 解ってはいるんですが、私たち弦楽器奏者は、反射的に
切ってしまうんです。 二つの音の間を。



 「知っとるわい。 ワシも Viola奏者だったからね。」

 その場合、スラーの記号は、習慣的に【同じ弓で】と解釈
する。 本来の【繋げろ】という意味は、消えてしまうんです。



 「まったく困ったもんだ。 お前の未熟な演奏例
音源]
じゃぞ。 この小節を、よく反省するんだな。」

 はい。







 もっと問題なのは、最初に見られるスラーなんです。

 「それも知っておる。 お前だけではなさそうだな。」



 どんなに長くても、【一弓で弾かなきゃいけない】…
という意識が強い。 オーケストラ、それもアマチュア
のかたがたは、特に律儀ですから。

 「作曲家は、それではフレージングを書き込めない
ではないか…。」



 ところで先生。 これは最初のテーマが戻ってくる箇所
ですよね?

 「一段目の最後の所でな。」

 リズムに動きがあって面白いです!

 「四分音符の後に、16分音符が4つあるだけじゃよ…。」




 [譜例]も、すでに登場しました。 第楽章の終りで、
主要テーマのモティーフが、何度も繰り返されます。

 ここでは四分音符でなく、二分音符ですが、16分音符が
4つある点は同じですよね?







 「単なる偶然じゃよ…。」




 そうですか? 次の[譜例]も、すでにご覧いただきました。
楽章の冒頭です。







 これでも偶然ですか?

 「…ま、どうでもいいわい。 一応よく予習、
復習したつもりなんじゃろうが。」




 ただ第楽章となると、ちょっと様子が違い
ますね。 リズムに特徴のある舞曲で、しかも
拍子が 3/4 ですから。

 「フリアントだからな。 四拍子のフリアント
があったら、お目にかかりたいわい。」

 さすがの先生も、“全楽章制覇” とまでは
行かなかったようですね。



 [譜例





 「ワシが行き届いてない…でも言うのか?」

 …あ、そういう意味ではなくて……。



 演奏例の音源]です。




 [譜例]は無いのかね?」

 この先ですか?

 「それもスコアがいいんじゃが。」

 …ハイハイ…。



 「何か気が付かんかな?」

 えーと…。 最初のテーマを、今度は Vn.Ⅱが担当してますね。
これは他の楽章でも頻繁に見られる形です。 Vn.Ⅰはフリアント
のリズムを…。

 「解っとらんのう…。」







 「Viola が何をやっとるか、お前には見えんのかね。」



 ……、………!



 「長い音が一つ。 次に短いのが4つ。 16分音符では
ないがね。」

 タッ タカタカ、タッ タカタカ…。 なるほど、そうでしタカ!



 「ただのリズムなら、これほど続けんでもよい。
タッ タカタカ、タッタッタッ…で充分じゃ。」

 …なるほど。 1、2、3、…14小節も連続して
いる! 行き届かないどころか、くどいですね?



 「何だと!?」

 いえ、何でもありません…。



 「行き届かないのは、お前の予習、復習じゃ。」




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