MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

興醒めは得意さ

2014-10-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/28 私の音楽仲間 (628) ~ 私の室内楽仲間たち (601)



              興醒めは得意さ



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 Mozart の最後の室内楽曲は、弦楽五重奏曲でした。

 変ホ長調 K614ですが、その第Ⅱ楽章は不思議な
形で書かれています。 全体は大きな三部形式ですが、

変奏曲、あるいはロンドに見えないこともありません。


 晩年の “自由な境地” でしょうか。

 といっても、35歳ですね…。



 [譜例]は、この第Ⅱ楽章の Vn.Ⅰのパート譜です。

変ロ長調テーマが、ゆったりと2拍子で始まります。




 演奏例の音源]は、この少し後の箇所です。

 Violin は私、M.さん、Viola W.さんSa.さん、チェロ M.さん

 主題の提示に続く、エピソードふうの部分に当ります。


 6小節が経過し、次の譜例に入ります。 すると
今度は、テーマをVn.Ⅱが歌い始めます。           ↓

                                    ↓


 これに纏わり付くのは、Vn.Ⅰ。 身のこなしの、なんと
自由で軽やかなことか! 弾いていても痺れるほどです。


 「この動きから連想するのは、男性か、女性か?」

 もしそう訊かれたら、貴方は何とお答えになりますか?


 私なら、もちろん “女性です”…と答えるな

 もし、こんなふうに纏わりつかれたら痺れちゃう…!


 …夢の、また夢。 言うだけはタダです。

 



 ところで、この自由な動き。 よく見ると…。

 先ほどの[譜例]にを入れてみました。



 すぐ下の Vn.Ⅱと見比べてください。

 Si♭ - La、Re - Do、……。 同じ音で動いているだけです。
オクターヴ上で。


 とは言いながら、もちろん “並行8度” ではありません。

 もし同時に動いたら、和声学の初歩的な違反になる。
タイミングが微妙にズレているだけです。

 しかも、同じ音で動いている…とは気付きにくい。


 作曲家たちにとっては初歩的な手法なのでしょうが、
ただただ感嘆するのみです。

 



 さて[譜例]には、塗り絵もう一箇所ありますね。


    

 この第Ⅱ楽章のテーマの、中心的な形です。

 



 そこで次の2つの[譜例]をご覧ください。 既出のものです。

          関連記事 変ホ長調の輪


 まず第Ⅰ楽章の冒頭です。



 そして第Ⅳ楽章です。



 ともに下降。 音の向きこそ今回とは違いますが、素材的
には同じものですね。

 ちなみに今回の第Ⅱ楽章にも、“下降” の形が出てきます。



 …ああ……。 せっかく美女に纏わりつかれたというのに…。

 X線透視したら、骨しか見えない。


 こういうのを “興醒め” といいます。





      [音源ページ ]  [音源ページ




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