04/04 チ(ャ)ィコーフスキィ と 『カマーリンスカヤ』
(2) ピョートル君の青りんご ~ 弦楽セレナーデ
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チ(ャ)ィコーフスキィ と 『カマーリンスカヤ』
(1) チ(ャ)ィコーフスキィ 交響曲第4番 ~ 地下の白樺
(2) チ(ャ)ィコーフスキィ 弦楽セレナーデ ~ ピョートル君の青りんご
(3) チ(ャ)ィコーフスキィ 交響曲第1番、第2番 ~ 青りんごのタネ
前回は、チ(ャ)ィコーフスキィ の
交響曲第4番ヘ短調作品36 (1877年) を見てきました。
第Ⅳ楽章で突然生えてきた "白樺"。 実はこの
交響曲の、影の黒幕だったのかもしれません。
作曲者を操り、民謡から代表作の交響曲を作らせ、
その主役にまでなってしまったのですから。
今回の作品は、やはり名曲の一つ、
弦楽セレナーデ ハ長調 作品48 (1880年) です。
ここで注目したいのは、やはり第Ⅳ楽章 Finale、その
一番終わりの部分です。
あるサイトの言葉を借りれば、「最後に第Ⅰ楽章の
冒頭の部分が再現され全曲の統一が図られている」
とあります。
なるほど、第Ⅰ楽章冒頭の主題が再現し、徐々に
テンポを上げながら、再び第Ⅳ楽章の主要主題へと
移り変わっていく部分があります。
それでは、その部分だけでも、ご一緒に聴いてみましょう。
下の音源で記してあるのは「分、秒」の数字で、その移行部分です。
音源
[Boston's exciting, young conductorless
chamber orchestra, "A Far Cry"]
(6'08" ~ 7'08")
[At the 2008 Solo Ensemble Contest]
(6'51" ~ 7'31")
[Christopher Morris Whiting, conductor.
Zuercher Akademie Kammerensemble]
(7'02" ~ 7'47")
[Performed by Bournville String
Orchestra, conducted by Alpesh Chauhan]
(5'52" ~ 6'22")
[第Ⅰ楽章 冒頭]
[第Ⅳ楽章 終わりの部分]
先ほど、「第Ⅰ楽章の主題が、第Ⅳ楽章の主要主題に
移り変わる」と書きましたが、私のこの表現は正しかった
でしょうか?
そう言われてみれば、楽章を跨いでいても、この二つは、
両方とも下降する音階から出来ています。
この二つの楽章の主題は、少なくともその由来はまったく
同じものなのではないでしょうか。
また、第Ⅳ楽章の冒頭には、"Tema russo" (ロシアの主題)
と記されています。
まるで作曲者が言っているようです。
「実はね、第Ⅰ楽章の最初のテーマもね、
ロシア民謡から作ってあったのさ、ハハハ。」
それでは、第Ⅱ楽章のワルツは?
[第Ⅱ楽章の冒頭]
八つの音符が、ト長調の階段を軽やかに舞い上がって
いきます。
(音源 ① ② ③)
第Ⅲ楽章の "エレジー" は?
[第Ⅲ楽章の冒頭]
ニ長調の主題はこれも上昇音階で始まりますが、この譜例は、
それに先立つ序奏の部分です。 ViolinⅠには、10個の連続した
音符がありますが、まるで白樺の木々が、ロシアの空高く伸びて
いくようです。 同時に低音パートで下降形が奏されているので、
空間が余計に広く感じられます。
(音源 ① ② ③)
なおこの上昇音形は、前回の交響曲第4番、第Ⅰ楽章冒頭
の下降音階を思わせます。 あたかもこの二曲でバランスを
取っているかのようです。 また後年、別の曲でも似た扱いが
見られます。
この二つの中間楽章では、冒頭に滑らかな上昇形が使われ、
歯切れのよい両端楽章とは、敢えて趣を異にしています。
しかし、上昇形は "下降形の裏返し"。 音形の素材としては、
「すべてロシアのテーマに由来する」
と書いても間違いとは言えません。
なお、終楽章には「ロシアの主題」 ("Tema russo") と単数形で
書かれていますが、自作のピアノ連弾曲 "50のロシア民謡曲集"
(1868-69) から2曲を引用しています。
序奏部のゆっくりした、夢見るような主題は
第28曲『緑の牧場で』、
主部の活発なテーマは
第42曲『緑のりんごの木の下で』です。
(続く) → 『青りんごのタネ』
私は青りんごが大好きです。 今もこうして食べながら。
(日本の "王林" ですが。)
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