MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

変胃長腸

2012-07-25 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

07/25 私の音楽仲間 (408) ~ 私の室内楽仲間たち (381)



               変胃長腸




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                書かなきゃいいのに…
                来なきゃいいのに…
              行き届かなきゃいいのに…
                帰らなきゃいいのに…




 「ワシは、決して演奏者イジメなど、しておらんぞ。」

 じゃあ、なぜ、変変ロ長調のハーモニーなんか書くんですか?
イ長調で書いてくれれば、まず間違いは無いのに…。

 「あれは異名同音といってな、そうしないと自由に転調できん
のじゃよ。」



 ……? 胃鳴動音? 転腸ですか? 道理で胃が捻じれそう
でしたよ、弾いてて。 そうか! この曲は変胃長腸で書かれて
いるからなんですね。 まるでみたいだな…。

 「何を馬鹿なことを言ってるのだ。」



 第Ⅰ楽章の冒なんか、♭が7個、変胃短腸ですから。
あれからずっと変胃腸調なんです。

 「変なのは、お前のだろう。 嫌なら弾かなくていいぞ。」

 あ、それは後でちゃんと出てきますから。

 「??」



 「何だか眩暈がしてきたぞ…。」

 よろしければ、ここに胃薬がありますからどうぞ!

 「…。 やれやれ、馬鹿に付ける薬は無いわい…。」




 「ところで、その譜面は何じゃね? ちょっと見せなさい。」

 これですか…?

 「…なるほど、第Ⅳ楽章だな、お前のパートの。」

 さすが、裏から見ただけで、よくお解りですね。



 「ワシが最後に完成した弦楽四重奏曲だからな。 それ
にしても汚い譜面だ。 裏の五線譜が見えるどころか、シミ
だらけ、シワだらけだのう。 こんな譜面でワシの作品を演奏
するとは、赦せん。」

 すみません。 プリンターの調子が悪かったものですから…。



 「また無料の譜面サイトかね? 少しはワシの子孫に
印税を…。」

 だって、高いんだもん…。




 「何でもいいから、音源でも使って解説しなさい。」

 はい。 音源は、譜例の12小節前から始まります。

 「フンフン。 Vn.Ⅰのパート譜じゃな。」



 二段目の⑫ (431) と書いてあるところでは、第二主題
が再現されています。

 この主題はまず "変 (ト) 長調" で出て来たんですが、
ここでは "変荷 (ニ) 長調"。 実は少し前にも変ニ長調で
再現されており、その繰り返し部分に当ります。


 





 私が4小節弾くと、次はチェロが、同じ主題を繰り返し
ます。 ほかにも、色んなパートがあちこちで、色々な
モティーフをやり取りしています。

 まるでキャッチボールのようですね。 凄いですね。
恐ろしいですね。 それでは皆さん、さようなら。



 「何だと!? ほかに言うことは無いのか?」

 …、じゃあ…。 この後に続くのはコーダで、
楽章は華々しく終ります。 以上です、先生。



 「それだけかね…。 第二主題以外に、色んな
モティーフが書いてあるのが見えんのかね?」

 ……?




 「しょうがないヤツだ。 楽章の最初の部分を見せなさい。」

 はい、これですか?

 「一段目に書いてあるのは、一体何だね?」







 はい、まず第一主題が断片的に出て来て…。 あ!
そう言えば、この形、さっきも何度か…。

 「弾いてて、そんなことも解らんのかね…。 それで
この冒頭では、12小節目() から、第一主題が正式
にデビューするんじゃよ。」




 なるほど、先ほどの譜例() では、第二主題の前に、
第一主題のモティーフが登場するんですね。

 「…そうやって、音楽をどんどん先へ進めているのだよ。
あまりにも自然だから、お前には解らんのだ。」

 さすがー。 その手法、いまだに健在どころか、一段と
磨きがかかって! "アメリカ" を超えましたね。







 「それも、モティーフは1つや2つじゃないぞ。 四分音符
のリズムが、何度も繰り返されてるじゃろ? そのリズムも、
最初の主題から来ているのだよ。」

 ただ美しいだけじゃなく、あちこちに職人の裏ワザが…。

 「解ればいいのだ♪ それでは皆さん、さようなら。」



 …ははぁ、それ、言ってほしかったんだ! 可愛い
先生ですね!?

 でも、せっかくお出でになったんだから、ご一緒に
どこかへ…。 あれ、もういないぞ…。




 あの先生、神出鬼没なんですよ。 すぐ消えちゃう…。

 『今度 N.Y.へ行ったら、イチロー選手によろしく!』…
って、言おうと思ってたのに…。



 まったく、いつどこで見られてるか、解らない
んですよ。 怖いなー…。

 何だか今日は、本当に頭が変になってきた。
飲んでもいないのに。



 まあいいや、今日はおとなしく寝よう。

 この胃薬でも飲むか…。




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