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マリヤンカ mariyanka

日常のつれづれ、身の回りの自然や風景写真。音楽や映画や読書日記。手づくり作品の展示など。

日本の食生活(農文協)

2020-12-15 | book
日本の食生活全集24『聞き書 三重の食事』という題の
農山漁村文化協会(通称・農文協)の本を借りてきました。

地元三重県のことが知りたくて、借りてきました。
聞き書きが中心ですが、写真や図が豊富に入っていて、
パラパラめくって見るだけでも楽しい本になっています。
三重県は大まかに海岸部・平野部・山間部に分かれます。
私が棲んでいるのは平野部です。
平野部は広い田と水があり、気候も温暖で、冬は晴れの日が多く、
他の地域に比べると苦労の少ない地域と言われています。
けれど、昭和の初めころの食生活は、日常の基本は麦飯で、
そこに豆や芋などを混ぜたものでした。

山間部では芋やカボチャや菜を入れた麦の粥を朝昼晩食べていたそうです。
海岸部は典型的な半農半漁で、豊かな海産物がありましたが、
台風が来れば、漁船はもちろん、狭い耕地の作物は塩水や潮風の被害を受けてしまいます。
この本の表紙の海女たちは、夏季以外は出稼ぎに出たそうです。
海女稼ぎと言うのもあったそうで、遠く朝鮮までも、
海女が10人くらい、船頭一人の小さな船に乗って、
帆と櫂で、往復したのだそうです。

地域ごとに、それぞれ違う食生活ではありますが、
白米が特別の日のご馳走であることには変わりありません。
けれど、それぞれの地域の野山や川や海の自然の恵みを味わい、
各家庭のそれぞれの干物や漬物などがあり、工夫を凝らした食べ物がありました。
そして四季折々の、晴れの日には、日常と違った食べ物がありました。
貧しいだけではない、食べる楽しみがあったことを、
この本は伝えています。

『聞き書 三重の食事』日本の食生活全集24
農山漁村文化協会、S,62

日本の食生活全集 全50巻

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ギャンブル依存国家

2020-12-12 | book
図書館で目についた新書「ギャンブル依存国家・日本」を借りてきました。
著者は「国銅」「天に星 地に花」などとても面白い!歴史小説や
「閉鎖病棟」などの医療小説を書いている「帚木蓬生(ははきぎほうせい)」です。
現役の精神科医でもあります。

この新書は精神科医として、ギャンブル障害に苦しむ患者と、
その家族の地獄の苦しみを、長年見てきた医者として、
ギャンブル天国日本の実態を鋭く告発しています。
ギャンブル症の実態と治療と経過などについても詳しく書かれています。

日本のパチンコと公営ギャンブルを合わせた年商は25兆円で、
世界一のカジノを持つマカオの年商4兆円超と比べると、そのすごさが分かります。
日本にはマカオが5カ所以上存在していることになります。
パチンコ店はローソンの店舗数と肩を並べていて、全国に約1万2000件だそうです。
そして日本のギャンブル障害者は500万人超、
厚生労働省が2014年に発表した数字だそうです。

天平の昔から日本では賭け事を禁止してきました。
ギャンブルによって国の土台が腐っていくからです。

しかし、今、農水省は競馬、国交省は競艇、経産省は競輪とオートレース、
文科省はスポーツ振興くじ、とギャンブルの胴元になっています。
特にパチンコ、スロット業界と警察との癒着は根深く
天下りなどの自分たちの権益を守るために、
犯罪とギャンブルとのつながりを公表していません。
著者は「宝くじ」や「スポーツ振興くじ」に巣食う利権についても書いています。
そして最後に「我が祖国を、これ以上重篤なギャンブル依存国家にしてはいけません。」と書いています。

政治が責任を放棄して何でも「自己責任」で片付けようとしています。
諦めじみた気持ちが蔓延しています。
そんな中での、著者の医師としての真摯な訴えが籠められたこの本の存在は貴重です。
多くの人に知ってほしい内容です。
( 6年前に出版された本なので、数字に変化はあると思いますが、
良くなっているとはとても思えません。)

『ギャンブル依存国家・日本
パチンコから始まる精神疾患』
帚木蓬生 著  光文社新書 2014









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『幻のアフリカ納豆を追え!』

2020-11-06 | book
子どもの時から朝はパンなので、
納豆は、たまに夕食時に食べるくらいですが、
その時は美味しいと思うし、何となく体によさそうな感じもしつつ、食べています。
そんなわけで、私は、それほど納豆に思い入れはありませんが、
納豆と聞くと、世界のどこまでも追い求め、食べて、調べ、考える人がいます。



著者は東南アジアの内陸部で納豆に出会ってから、
納豆の謎にとりこになり、納豆の探検にのめり込んで行きます。

この本を手に取ったときは納豆のルーツを探す本かな、と思いましたが、
この本の面白さは、むしろ著者と同行者の納豆を求める旅で出会う、現地の人々との交流、
アフリカや韓国などの、食べ物をめぐって、現在進行形の暮らしのドキュメンタリーとしてとても楽しく読みました。

アフリカに行っても、納豆のある所には大昔から米(ご飯)がある、というのです。
(アフリカにはアジアの米とは別に先史時代から独自に作られ続けている米があるそうです。)
納豆炊き込みご飯には驚きました。

納豆は、ちょうど日本での味噌や醤油などの調味料のように、あるいは、ダシとして使われているところが多いようです。
(大豆のない地域では、様々な木の実を、藁などに棲む納豆菌で発酵させています。)

また、「こんなものは他の場所にはないだろう、この美味しさは分からないだろう、最高に美味しいし、体にいい・・・」と
納豆を食べている地域の多くの人たちが思っているのも面白いことです。
日本にも納豆があるというと、輸入しているのか?と訊かれたりするそうです。
セネガルでは納豆のことをネテトウと呼ぶそうです!

ところで、この本の最後に、著者は、
もしかして日本では、稲作以前(縄文時代)にも納豆があったのではないか、と仮説を立てて実験をしています。
大豆の野生種の、小さくてかたい蔓豆を石うすで砕いて、稲わらではなく、栗やトチやアシなどの葉でくるんで、
納豆を作るのに成功しています。
(納豆になる菌はいろいろなところにいるらしい)
昔、そのままでは食べられない豆を、砕いて、葉で包んで蒸してしばらく置いておいたら、
柔らかくてねばねばした風味のあるものになった・・・
そこでその蔓豆の栽培を始め、蔓豆はやがて大豆になった・・・
と推理しています。



「発酵」が食材の幅を広げ、味覚の世界を深めていったことは間違いありません。
日々の食卓から、味噌、醤油、酢、酒、そしてチーズやパンなどが無くなったらどんなに味気ないか!
発酵は偉大だな。

『 幻のアフリカ納豆を追え!
 そして現れた〈サピエンス納豆〉
 高野秀行 著   2020・8  新潮社

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『感染症と文明』

2020-04-18 | book
薄い岩波新書だけれど、
読み応えのある内容でした。
先史時代の感染症とはどのようなものであっただろうという話から始まります。
やがて、農耕が開始され、定住、野生動物の家畜化される中で、
感染症はどのように変わっていたのでしょう、
メソポタミア、インダス、中国、ローマなどの古代文明は都市を作り、
ユーラシア大陸に、幾筋もの道を張り巡りました。

人類は次第に自らの病気や健康に大きな影響を与える環境を、
自らの手で改変するようになっていったのです。
文明は、麻疹やペストなどの感染症のゆりかごの役目を果たしただろうと言われています。
さまざまな帝国が勃興してまた滅亡していった背後には
感染症の大流行があっただろうと考えられています。

南米大陸へヨーロッパ人から持ち込まれた天然痘、麻疹、ジフテリア、
さらに、アフリカから連れてこられた奴隷たちをとおしてマラリアが猖獗を極めて、
武器を使うまでもなく、南米の先住民たちは絶望の中、次々倒れ、
人口は10分の一にまで減ったそうです。
アメリカ大陸の広い地域に長く栄えたインカ文明もついに滅亡したのです。

新大陸からヨーロッパへ、
トマトやトウモロコシやジャガイモやトウガラシなどが、もたらされました。
黄金の装飾品や仮面は奪われ、溶かされて金の延べ棒となって、
どんどんヨーロッパへ運ばれて行きました。

ヨーロッパ人はアンデスの先住民が、解熱剤として利用していたキナ(樹木)から、
キニーネを抽出します。
マラリアの特効薬になることを発見したのです。
その薬をマラリアの蔓延するアフリカで使うことはヨーロッパ人にとって、
アフリカ進出の一種の免罪符となり、
アフリカの植民地化が一気に進んでいくことになるのです。
この事実に、言いようのない恐ろしさと虚しさを感じます。

今、COVID19のことを考える時、
まず、世界中の国々が、戦争をやめ、
差別をやめて、兵器の開発ではなく、
ウイルスとの戦いのために全力を傾け、皆協力しあおう、
という方向に少しでも近づくなら、
感染症の歴史に新しい1ページが書き加えられることになると思うのですが。
ニュースを見る限り、日本の政府にもアメリカの政府にも、
全くそんな気はないようです。
日本政府には歴史から学び、未来を見つめる視点が皆無です。

副題の「共生への道」について著者は、
感染症との共生は、決して心地いいとは言えない妥協の産物かもしれないが、
・・・共生なくして未来はない・・・と書いています。

身を挺して様々な感染症と闘う医師や看護師や研究者を心から尊敬します。

『感染症と文明ー共生への道』
山本太郎 著    2011/岩波書店


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『戦場の秘密図書館・シリアに残された希望』

2020-04-07 | book
漢字にフリガナがあり、文字も大きめなので児童書ですが、
大人にもおすすめのノンフィクションです。

私にとっても「本」は、子どもの時からずっと大切な友達で、
「本」のない生活は今も考えられません。
けれど、戦場のようなところで、「本」はいったい何の役に立つのでしょう?

この本は、シリアの内戦下で、
治安部隊による絶え間ない爆撃にさらされ、食料や日用品もなくなり、
瓦礫と化した町の地下に作られた秘密の部屋に、
雨ざらしになった家々から本を少しづつ避難させて、
図書館を作った人々の記録です。
14歳の少年が司書になり、
夜が明ける前に、図書館にこっそり入り、
元の持ち主名を明記し、本をきれい掃除修復して、棚を作って、整理し、
身を潜めて、秘密の入り口をくぐってやってくる人たちに本を貸し出していました。

読書会や勉強会もそこで開かれるようになっていきました。
そして自分たちの街で今何が起きているか、世界に発信していました。
アルミホイルやなべを使って、携帯の電波を増幅して、
この本を書いたイギリスに住む著者とも時々通話したそうです。

年齢も、仕事も、宗教も超えた交流があり、
ジャンルを選ばず本を集め、
本を大切に読む中で、人々は希望の光を胸の中にともし続けることができたのです。
けれど、とうとう図書館も爆弾の直撃を受け失われます。
そこに通っていた人々も、もはや通うことができなくなる時が来ます。
しかし、避難先でも、小さな移動図書館を作るのです!

つぎつぎと小さな子どもたちが爆撃で殺されていく場面には胸がつぶれます。
政府軍による、テロリストを一掃するため、というプロパガンダを多くの欧米や日本人は信じさせられています。
テロリストが、図書館を作るでしょうか?


食べ物も住まいもないのに、図書館?
と質問する著者に帰ってきた言葉は
「読書は空腹を忘れるのにもってこいなんです。」
「栄養が必要なのは体だけではない。頭や心にだって栄養が必要なんだ。」


 『戦場の秘密図書館/シリアに残された希望』
 マイク・トムソン 著   小国綾子 編訳
 2019/12  文渓堂

*シリアのアサド政権の独裁は残酷で非道ですが、
 日本の安倍(独裁)政権も、爆弾で直接人を殺してはいませんが、
 人の命を何とも思わない、冷酷さにおいて、全く同じだと思います。
 頭の中は金の計算だけで、文化、芸術を足蹴にするところも同じです。
 




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舞台は「豪華クルーズ船」

2020-04-02 | book
ハラハラ、ドキドキを超えて、かなり怖かった!
『乗客ナンバー23の消失』セバスチャン・フィツェック
のサスペンスを読みました。
怖いけれど興味深く読みました。
著者はドイツでは著名な作家で、人気があるそうです。

豪華クルーズ船には、千以上の客室があり、
レストランやバー、プールやテニスなどのスポーツ施設やジムや、
子どもの遊び場、美容室、図書室や劇場、病院施設もあります。
もちろん、船員ら船の中で働く人達の居住空間、機械室や倉庫が沢山、
今ではごみ焼却場もあるそうです。
(以前は全部ハッチから海へ落としていたそうです。)
そしてカジノがあります。
バカラやスロットで遊ぶのが目的で船に乗る人も多いそうです。
世界中の海に、いつも相当数の豪華クルーズ船が航行していて、
中でギャンブル(博打)が行われているなんて・・・
知らなかったなー。(もちろん、ダイヤモンド・プリンセス号も)
博打場があれば、胴元のギャング?やガードマンやチンピラも乗っているだろうし、
小金持ちの懐を狙う輩も乗っているだろうし・・・
クルーズ船にないのは何か?警察なのです。
何か起きても現場検証もできないし、逮捕もできないし・・・
2011年から2012年にかけて世界のクルーズ船上から行方不明になった人は55人だそうです。
サスペンスの舞台にもってこいではありませんか!

で、この小説は、妻が子どもを連れて船上から身を投げて自殺したと知らされて、
心身ともにガタガタになった刑事が、真相を突き止める、というサスペンスです。
人の命のことなど何も考えたこともない、金の亡者の大金持ちの船主や、
怪しい老婆や、頭のネジが壊れた少女や、隔離されていた天才少女や、
女医や、泥棒や、メイドや、
たくさん出てくる登場人物が、なんだか皆すごくて、
でも最後まで読んだら、疲れたけど、面白かった。
これを読んだ人は、豪華クルーズ船に乗りたい気持ちが確実に減るだろうな。
私は昔から、豪華クルーズ船に乗りたい人の気持ちがわからないけど、
やっぱり、というか、ますますわからない・・・

『乗客ナンバー23の消失』
 セバスチャン・フィツェック  著
 酒寄真一 訳
 2018  文芸春秋






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『原発の断りかた』

2020-03-16 | book
スーパーにも置いてある地域誌「NAGI」で連載していた
芦浜の原発阻止闘争の歴史が、1冊の本になりました。
紀伊半島の三重県側(東)、熊野灘に面したところに「芦浜」はあります。

(芦浜・原発予定地だった場所)

(紀伊半島の原発候補地)

中部電力が土地を秘密裏に買収して原発を建設しようと画策を始めてから、
37年間、地域住民の命を懸けた壮絶な戦いがありました。
著者はこの闘争にかかわった一人の高校の教師です。
命の海を守った人々の姿を、歴史を追って、自らの言葉で書いています。

漁民たちが、原発は嫌だと表明したとたんに、政治、行政、企業からの、
ありとあらゆる嫌がらせや、脅しや、詐欺や、暴力が降りかかっていき、
地域が分断され、憎しみが地域に充満していく様子は、本当に恐ろしい。
何度も波状的に手を変え品を変え攻撃してくるのです。
しかし、原発で何か起こったら、めちゃくちゃになろうが、
誰が苦しもうが、誰も責任をとらないことを(福島で実証された)
漁民たちは、心の奥で知っていたのです。

1966年の最初の調査団の船に対して、
熊野灘の漁船団(370隻・逮捕者30名)による阻止行動が行われました。
その前に、漁民は建設反対の理由を確定し決議(1964年)しています。
調査を許したら阻止できないと分かっていたのでしょうか。
本質を見抜き、知恵と誇りが込められたその決意文は半世紀たっても色褪せていません。
強大な権力と金に抵抗してたたかった人々のことを次の世代へ伝え、
愚かな時代が終わることを願って書かれたこの本を、
多くの人に読んでほしいと思います。

日本各地の原発のある地域でも同じような、あるいはもっと苛烈過酷な戦いがあり、
今も続いていることをこの本から想像することができます。
また、今、沖縄の基地が、地域を分断し、
住民の意思を無視して暴力的に進められていることと重なります。
著者らは今も原発に関する学習を続け、
各地の原発の再稼働阻止の運動の支援を続けています。


『原発の断りかた・ぼくの芦浜闘争記』
芝原洋一/著   月兎舎   2020年2月 
******************************
1964年(昭和39年)2月23日、
古和浦漁協(三重県)の決意文
1、原子力発電所はいまだ実験段階ともいわれ、未解明な部分も多い。
万一を考えて辺地を選んだと思われる。
2、放射能による海の汚染、大量の冷却水による水産資源への影響が考えられる。
3、放射能による人体への影響も考えられる。また魚に蓄積されるようである。
4、廃棄物の処理は安全でなく、問題は多いようである。
5、全国的にも有名な熊野灘漁場を犠牲にしてまで建設さす必要はない。

******************************
紀伊の半島の西側和歌山県にも関電の原発候補地が4ヵ所ありました。
和歌山でも原発の安全神話を見破って、粘り強い戦いを続け、
原発は建設されていません。

『原発を拒み続けた和歌山の記録』
「脱原発わかやま」編集委員会  汐見文隆・監修
2012年・5/寿郎社






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「パンデミック」

2020-03-11 | book
「パニック」と語感が似ていますが、
パンデミックとは「主に、感染症が、国中で、あるいは世界中で流行する」ことだそうです。
新聞やネットでは、あいまいな情報が飛び交うばかりで
本当のことが分かりません。
今は冷静に感染症のことを少し勉強しようと、
図書館で何冊か本を借りてきました。
まず、クルーズ船の、コロナウイルス対策について、
勇気ある告発をした医師、岩田健太郎の本。
新しいのは貸し出し中だったので、少し古い本ですが3冊借りてきました。
1冊は医療現場の倫理問題が主題の対談。
対談相手は哲学者です。

『「医療につける薬」内田樹・鷲田清一に聞く』
岩田健太郎 / 筑摩選書・2014年

下の2冊は、著者が日頃から思ったり実行していることを書いています。
患者と医師が直面する様々な問題を語った本です。
権力志向、金儲けの医学や薬学の世界と、
インチキ健康本、に対する怒りが、
これらの本を書いた動機のように感じました。
平易な文章で読みやすいです。

まだ読み始めたばかりですが、教わるところが多そうです。
『インフルエンザ なぜ 毎年流行するのか』岩田健太郎
2018/KKベストセラーズ
『絶対に、医者に殺されない47の心得』岩田健太郎
2013/講談社

そして新刊のナショナルジオグラフィック社の
「パンデミック・マップ(伝染病の起源・拡大・根絶の歴史)」
「はじめに」で、イギリスで「コレラ(1854年)」が大流行した時に、
一人の医師が、患者の家を1軒1軒尋ね歩いて、丹念に書き込んだ地図を作成し、
感染源の井戸を見つけて、初めて、コレラの感染源は汚染された水である、
ということを突き止めたことが書かれています。
根絶された感染症(天然痘など)から、
SARSコロナウイルスまで多くの図版や地図で分かりやすく解説されています。
空気感染症、水系感染症、動物由来の感染症、
人から人への感染症、の4つの章に分かれています。

『ビジュアル・パンデミックマップ』サンドラ・ヘンペル 関谷冬華・訳 
2020/日経ナショナル・ジオグラフィック社  

図書館はありがたいです。







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最後の一葉

2020-01-12 | book
4~5日前、かなり強い雨風が吹き荒れました。
でも、小さな木(昨年買ってきて植えた苗木・河津桜)
の枝に残ったたった一枚の葉は無事でした。
そして今朝も散らずに頑張っています。

子どもの時、オー・ヘンリーの短編「最後の一葉」を読んだとき、
良い人が死んじゃって、なんか変な話、と思いました。
「賢者の贈り物」も納得いきませんでした。
けれどその後、「緑のドア」に出会って、
一気にオー・ヘンリーが好きになりました。
「最後の一葉」も短い物語の中に、
様々な要素が詰まった、
見事な短編だな、と今は思います。

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「天国でまた会おう」

2019-06-28 | book
おもしろくて、どんどん読みたいけれど、
早く読み終わるのがもったいないので、
本を閉じてしばらく反芻する・・・
時々そんな本に出合います。
ピエール・ルメートルのこの本もそうでした。
ルメートルのミステリーは緻密で意外な展開が面白いのですが、
残酷描写がきつくて苦手でしたが、
「天国でまた会おう」はミステリーではなく、
ゴンクール賞(フランスの文学賞)を受賞した文芸作品。
ちょっと、ユーゴーやディケンズの小説を読んでいるような感じがしました。
第1次大戦の戦場での二人の兵士の出会いから始まります。
真面目で不器用な青年と、
生き埋めになったその青年を助けようとして、
顔の半分を爆弾で失った天才肌の画家、
その二人の主人公を中心に物語はどんどん転がっていきます。

兵隊の命など虫けらほどにも思わない権力者たち、
戦争を金儲けの手段にしか見ない資本家、
付和雷同する庶民が赤裸々に描かれます。
登場人物が、悪者も、役人も商売人も
それぞれ生き生きとして個性的で読むほどに引き込まれます。

二人は国を相手に大掛かりな詐欺(復讐)を企み、
少女の力を借り、ついに実行します。
はらはら、どきどき・・・

戦争とは、権力者たちが、金儲けのために、
貧乏人に殺し合いをさせることだ、
という作者の考えが貫かれています。
ハッピーエンドとは言えませんが、ラストでほっとしました。

題の「天国でまた会おう」は、第一次大戦で、
敵前逃亡の汚名を着せられ、
裏切り者として処刑(銃殺)された青年が
妻に残した最後の言葉だったそうです。
7年後に間違いだったことが分かり、
名誉回復したそうです。

『天国でまた会おう』
ピエール・ルメートル(フランス、1951~)
平岡敦 訳  早川書房 2015

同名で映画化されていますが未見です。
小説とラストが違うそうです。
見てみたいような、見なくてもいいような。
でもやっぱり見たいかな。

図書館で借りた重い単行本で読みましたが(上の写真)
調べてみると、文庫化(上・下)されているようです。
しかし、文庫の表紙絵が残念すぎる・・・






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