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最期の言葉 ”このままでは死んでも死にきれない”

2016-07-01 | Weblog
「がん闘病」大橋巨泉 週刊誌コラム無念の最終回
 
東スポ 6/27
 
がんとの闘いを続けているタレントで元国会議員の大橋巨泉(82)が、休載していた週刊現代のコラムを27日発売号で最終回とすることを明らかにした。体力が戻らず、意識不明に陥ったこともあり、「何時まで生きられるかわからない」と深刻な病状を告白した。

 コラムによると「今週の遺言」と題した連載は今回で344回。1994年に執筆を始めた「内遊外歓」を合わせると930回を数える。中咽頭がんなどを患っている巨泉は治療のため、4月9日号を最後に休載。復活した今回、無念の終了告知となった。

 巨泉とがんの闘いは10年ほど前にさかのぼる。2001年の参院選で民主党から出馬し当選するも、半年で辞職。政界を離れると海外に長期滞在し、一時帰国するとテレビ出演などメディアに登場。05年に胃がんが判明し、手術を受けた。

 13年に中咽頭がん、14年にリンパ腫と病魔に襲われ、昨年5月には肺がんの摘出手術。これを乗り越えて6月放送のテレビ番組で元気な姿を見せて、「4度目のがん手術から復帰」と話題を呼んだ。

 最終回のコラムで巨泉は、ベッドの上で夫人と弟の力を借りて原稿作成に取り組んだと報告。がん細胞は「静か」だが休載当時から体力と気力の衰えが著しく、一時入院から退院後の4月上旬に容体が急変し、意識を失って救命措置を受ける事態になったという。

 60年代後半から「11PM」、70年代に始まった「クイズダービー」、80年代の「世界まるごとHOWマッチ」など数々の人気テレビ番組の司会で人気を呼び、テレビの申し子のような存在だった巨泉。ジャズや競馬にも造詣が深く、政治の世界にも足を踏み入れた。

「このままでは死んでも死にきれない」と書いた巨泉は、最後の遺言として「安倍晋三の野望は恐ろしいものです」。参院選で野党に投票するよう読者に呼びかけた。
 
 

 
 



大橋巨泉(左)と安倍首相(C)日刊ゲンダイ


がん闘病中の大橋巨泉(82)が、94年から続いていた週刊現代の人気コラム「今週の遺言」を今週(27日)発売号で最終回としたことが話題になっている。「これ以上の体力も気力もありません」というのが断筆の理由で、自らの深刻な病状や大量の薬で死に直面したことを告白。まさに壮絶そのものなのだが、コラムのラストの部分に記された「最後の遺言」には、読んだ誰もが胸を打たれたのではないか。少し長くなるが、その部分を転記したい。

〈今も恐ろしい事や情けない事、恥知らずな事が連日報道されている。書きたい事や言いたい事は山ほどあるのだが、許して下さい。しかしこのままでは死んでも死にきれないので、最後の遺言として一つだけは書いておきたい。安倍晋三の野望は恐ろしいものです。選挙民をナメている安倍晋三に一泡吹かせて下さい。7月の参院選挙、野党に投票して下さい。最後のお願いです〉

 参院選の真っただ中に迎えた最終回のコラム。安倍の恐ろしい野望とは、自公とおおさか維新、こころを合わせて3分の2の議席を獲得し、憲法改正を発議をすること。そしてその先に9条を改正し、日本を戦争のできる国につくり変えることを指しているのだろう。直近の新聞各社の情勢調査では、「改憲勢力3分の2」が現実になりつつある。巨泉は病床でジリジリとした焦りを感じながら、有権者が賢明な判断を下すのを、祈るような思いで見つめていることだろう。

■法衣の下に鎧を隠している男

巨泉は安倍政権の危険性を、これまで幾度となく指摘してきていた。

かつて同コラムには、〈安倍首相を始めとする現レジームにとって、戦前のように「自由に戦争のできる国」は理想的なのだろうが、われわれ昭和ヒトケタにとっては、「平和憲法に守られたこの70年こそ理想の天国」なのである〉(15年6月13日号)と書いた。

日刊ゲンダイ本紙のインタビューでもこう言っていた。

「僕は、ポピュリズムの権化のような安倍首相をまったく信用しない。経済はムードをあおる手段に過ぎず、本当にやりたいのは憲法改正であり、日本を『戦争ができる国』に変えることでしょう。法衣の下に鎧を隠しているような男の言動にだまされてはいけません」(14年5月10日付)

安倍から発せられる戦争の臭い――。戦争経験のある戦前世代はそうしたものを、嫌でも嗅ぎ取ってしまう。それがこの政権の危険性に対する異口同音の訴えとなる。

本紙インタビューに登場した作家の瀬戸内寂聴(94)の言葉はこうだった。

「当時もね、われわれ庶民にはまさか戦争が始まるという気持ちはなかったですよ。のんきだったんです。袖を切れとか、欲しいものを我慢しろとか言われるようになって、ようやく、これは大変だと思いました。こうやって国民が知らない間に政府がどんどん、戦争に持っていく。そういうことがありうるんです」(14年4月4日付)

学徒出陣を経験した石田雄・東大名誉教授(93)も本紙インタビューでこう言っていた。

「平和というのは最初は、非暴力という意味で使われる。しかし、日本においては次第に東洋平和という使い方をされて、日清、日露、日中戦争において戦争の大義にされていく。これは日本の戦争に限った話ではなく、ありとあらゆる戦争の言い訳、大義名分に『平和』という言葉が利用されてきたのです。こういう歴史を見ていれば、安倍首相が唱える『積極的平和主義』という言葉のいかがわしさがすぐわかるんですよ」(14年7月3日付)

参院選の投票を目前にして、こうした先達の言葉の重みを、いま一度、噛みしめる必要がある。


未来がかかっている

「野党に投票を。最後のお願いです」
安倍政権の恐ろしさ─―。戦前世代の政治評論家・森田実氏(83)は過去の自民党政権と比較しながら、こんなふうに解説してくれた。

「古代ギリシャの抒情詩人ピンダロスは、『戦争はその経験なき人々には甘美である。だが経験した者は戦争が近づくと心底、大いに恐れるのだ』と書きました。悲惨な戦争の体験者がこの世にいる間は止める力が働くが、未経験者だけになったら戦争を始めるという意味を含んでいて、戦争体験のない世代、中でも特に政治権力を持つ者たちにその傾向があります。歴代自民党政権でも小渕政権のころまでは、『平和のためなら体を張る』という強い意志が感じられました。しかし、森政権以降、それがボヤけてきて、小泉政権になって、何をしでかすかわからなくなった。もっとも、小泉さんは安保や軍事面には口を出しませんでした。安倍首相も小泉さん同様、何をやらかすかわからないようなムキになる性格ですが、小泉さん以上にタチが悪いのは、軍事の問題になるとがぜん、張り切ることです。そして、そんな安倍さんを支えるのが極右のグループで、そうした支援者をバックにますます張り切る。安倍さんは自らの中にブレーキを持たない人間じゃないか。だから、いざとなったら戦争に突っ走ってしまう恐ろしさがあるのです」

九州大名誉教授(憲法)の斎藤文男氏(83)の分析はこうだ。

「安倍首相の言動や己に課している使命感には、戦前回帰のにおいがプンプンします。『国威発揚のあの時代はよかった』『敗戦で米に押し付けられた憲法ではなく自前の憲法を作らないと独立国家じゃない』『国のために命を投げ打つ気概のない日本人は腰抜けだ』─―そんな考え方です。実際に著書『美しい国へ』にもそう書いてありますよね。そんな人物が自民党の中で独裁的な権力を持ち、自民党イコール安倍党の状態に陥っている。そして、第1次政権での失敗を経て、改憲願望は『経済』で隠す、世論を騙すという“戦術”を身につけた。しかし、戦時体験を持っている私たちの世代には、安倍さんがどんなに隠しても、ベールの下の素顔が見えてしまうのです。昨年、安保法制が成立した時、私は『新たな戦前が始まった』と言いました。モノも言えず、権利や自由は剥奪され、国家のために生きる。それが日本人の美学だとされる。そんな国になってしまっていいんですか。年寄りが歴史と人生を踏まえて、揃って警鐘を鳴らしているのです。冷や水などと言わないで、耳を傾けて欲しい」

■「時代錯誤が」現実になる

安倍の側近たちが野党時代にまとめた自民党改憲草案に、彼らが目指すこの国の形がある。一言でいえば、明治憲法に戻ろうという時代錯誤である。

改憲草案13条は「全ての国民は、人として尊重される」とし、現行憲法の「個人」を「人」に変えてしまっている。国民を「個人」と見るのではなく、「人」という“束”で見なす考え方だ。9条の改正案では、戦力の不保持を定めた現行2項を「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と改めた。そして、「国防軍の保持」を明記した条文を追加している。

参院選で改憲勢力が3分の2を確保すれば、時代錯誤と片付けられなくなる。国民は国家のために奉仕することを義務付けられるような、とんでもない国につくり変えられる。

安倍による憲法改悪を何としても阻止しなければならない。巨泉の遺言〈野党に投票してくれ〉という叫び。民進党が嫌いでも、共産党にアレルギーがあったとしても、再び戦争をする国になることに比べたら、賢明な選択は何なのか、おのずとわかるはずだ。

 
 

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