:橋下氏、「沈静化失敗」「丁寧に答えた」…各国特派員反応
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「あいまいな回答で逃げている」「丁寧に答えようとしていた」。各国特派員の評価は分かれた。「従軍慰安婦制度は必要だった」との発言で内外の批判を浴びた橋下徹大阪市長が27日、東京都内の日本外国特派員協会で行った釈明記者会見。欧米やアジア、日本の記者ら計396人(同協会調べ)が詰めかけた。入りきれなかった記者は別室のモニターで2時間半にわたる質疑応答を見守った。
中国・香港フェニックステレビの李(リー)ミャオ・東京支局長は、橋下氏による過去の反省と謝罪は評価しつつ、「慰安婦の強制徴用に国が関与したのか自らの考えを明確にしないなど、不明瞭な回答が多かった」と不満顔だ。
韓国の日本情報サイト「JPニュース」の記者、李至鎬(リ・ジホ)さん(26)は「論点をすり替えようとしている印象を受けた。まさに弁護士だなと思った」。台湾の「中央通信社」東京支局長の楊明珠さん(49)も「守りに徹し逃げているように感じた」と批判的だ。
ドイツの有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」のカーステン・ゲアミス東アジア特派員は「頭の良い弁護士だが、事態の沈静化には失敗した」と見る。橋下氏が日本の行為を謝罪し女性の人権を擁護したのはよいが、「他国もやった」と批判したのには責任逃れの印象を受けたという。その上で「歴史を塗り替えようとしているなら、それは危険な政治的ゲームだ」と語った。
英紙「フィナンシャル・タイムズ」東京支局長、ジョナサン・ソーブルさん(39)は「女性の権利問題について多く発言してこなかったのに、なぜ今、戦場での性の議論を持ち出すのか」と批判。一方で「過激な政治家だと思っていたが、今日は、自分の意見が安倍(晋三)首相など主流の保守派に近いと見せようとしていた」と分析した。
一方、米ニュースサイト「ニューズウィーク・ザ・デーリービースト」東京特派員のジェイク・アデルステインさんは「丁寧に答えようとした努力は認めるし、『慰安婦制度はいけなかった』と明言したところはすばらしい。こう歯切れ良く言う政治家はなかなかいない」と評価。
シンガポールの経済専門紙「ビジネス・タイムズ」のアンソニー・ローリー東京特派員は「考え方に賛同するかは別として、『もっと検証を行って歴史的な事実を明確にすべきだ』という考え方は、はっきりと伝わった」と振り返った。
:橋下氏講演 3党の反応
は記者会見で、「河野談話を見直す作業は行っていないというのが政府の姿勢であり、政府・与党は一体となって対応する。安倍総理大臣や菅官房長官のこれまでの発言がすべてだ」と述べました。
また、石破氏は、参議院選挙後の日本維新の会との連携について、「参議院選挙では自民党と維新の会がぶつかる選挙区もたくさんあり、どのような支持を自民党が得ることができるのか、維新の会にどのような審判が下るのかを見る前に、『終わってからどこと組む』とか『組まない』とかいう話はしない」と述べました。
は、記者会見で、「橋下氏の発言については、もういちいちコメントするに値しない。橋下氏はいろいろと多弁を弄しているが、『火を油紙で包むことはできない』ということばを申し上げたい」と述べました。
橋下氏の一連の発言を受けて、夏の参議院選挙で日本維新の会と選挙協力を行わないことを決めたは、福岡市で記者団に対し、「アメリカ軍のみならず誰に対してでも、性風俗の活用を地方自治体の長や政党の代表が言うのは、社会常識に照らして問題があるのではないかと申し入れていたが、橋下氏の見解に答えは書かれていなかった。外交問題に発展しつつあったので、そうしたことを踏まえて軌道修正したのではないか」と述べました。
更新・追加
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更新記事:橋下氏の「釈明会見」、識者の見方は
慰安婦問題や在沖縄米軍をめぐる一連の発言で批判を浴びた、橋下徹・日本維新の会共同代表。27日午後の会見では、挑発的な発言を繰り返す「橋下流」は封印し、慎重に言葉を選ぶ場面も目立った。ただ、「風俗業」発言は撤回しつつ、持論を譲らぬ橋下氏の姿勢には、慰安婦問題に詳しい歴史研究者や、欧米や韓国の事情に詳しい専門家らの評価も分かれた。
■「細部は歴史学者に」貫く 現代史家・秦郁彦氏
現代史家の秦郁彦氏は、「ニコニコ動画」のネット中継で橋下氏の会見を見た。「政治家が何十年も前にあった歴史事実を正確に説明するのは困難だ。うろ覚えなのに自分の言葉で説明しようとするから失言につながる。今回は持ち前の放言型を封印し、細部は歴史学者に任せるという姿勢を貫いた」と評価した。
橋下氏が「戦場の性の問題は、旧日本軍だけではない」とした点については「どの軍隊も形態こそ違っても身に覚えがある。一緒にざんげしましょうという文脈で、他の国も怒るに怒れないはずだ」と話す。
ただ、「国会議員でもなく、実現できる政治状況でもないのに、日本が慰安婦問題に対処すると期待を持たせる発言で、思わせぶりなことを言ったと、後に批判を招くのではないか」と懸念も示した。
秦郁彦氏
■口先だけの反省、不誠実 中央大教授・吉見義明氏
慰安婦問題に詳しい吉見義明・中央大教授は、橋下氏が米軍に「風俗業の活用」を勧めた発言は撤回する一方、「慰安所は必要だった」との発言は撤回しなかった点について「不誠実だ」と批判する。
「『慰安婦』制度は居住や外出、廃業などの自由がない性奴隷制であったことは明白」「橋下氏は慰安婦を性奴隷制とも、慰安所で強制があったことも認めていない」と指摘した。
吉見氏は「慰安婦制度が国家の意思として組織的に女性を拉致・人身売買した証明を求める姿勢は、国の責任論へのハードルを高めたものにすぎない」とし、こう強調した。
「いくら『過ちに目を向けて反省を』と語っても、口先だけになってしまう」
吉見義明氏
■欧米は到底納得しない 元外務省国際情報局長・孫崎享氏
元外務省国際情報局長の孫崎享(うける)氏は、橋下氏が慰安婦問題に言及した当初から「人間の尊厳を踏みにじる発言」とみて、国際問題になると感じていたという。
外国人特派員らに説明した会見の内容について「橋下氏は、女性を性的な対象として使った点で日本も他国も同じと主張するが、日本の慰安婦の場合、軍と政府の関与が大きい。占領下の日本でも、米軍が自ら女性をあっせんする組織をつくってはいない。欧米のメディアは到底納得しないだろう」とみる。
さらに「米国などでは女性の尊厳を傷つける考え方自体が大きな問題となり、旧日本軍時代を正当化する動きにも懸念が広がっている。橋下氏はおわびをしただけで、考え方の説明はしていない」と指摘。今後も「対米関係に影響を残すだろう」と話す。
孫崎享氏
■日韓の対立と混乱深めた 韓国・世宗大教授・朴裕河氏
日本文学や日韓関係の研究で知られる朴裕河(パクユハ)・世宗大教授は「韓国では橋下氏は妄言を重ねる政治家と報道されている」と話す。
朴氏によると、韓国内では慰安婦問題を女性の人権問題と考える見方も近年は出てきたが、未解決の植民地問題と長年認識されてきた。日本の首相名でのおわびの手紙や民間募金による「償い金」事業も「ほとんど知られていない」という。橋下氏の会見発言も「額面通りに受け取られないだろう」とみる。
朴氏が心配するのは、慰安婦問題が日韓の政治問題にとどまらず、ネット上などで両国民が互いに中傷しあうテーマになってしまった点だ。「そもそも双方の議論がかみ合っていないのに、橋下氏の一連の発言はさらに混乱と対立を深める結果を招いた」とみている。
朴裕河氏
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