海外メディアは日本の右傾化警戒
海外メディアは「自民党圧勝」を一斉に速報で伝えた。安倍晋三政権の誕生が確実な情勢を受け、日本の外交・安全保障政策が右傾化することへの警戒感を示す論調が目立った。
英ロイター通信は開票直後に「自民党、地滑り的勝利」と速報し、新政権が沖縄県・尖閣諸島を巡る中国との紛争で「譲らない厳しい姿勢を取る」と予想した。英紙フィナンシャル・タイムズは電子版のトップ記事で安倍氏を「平和憲法の修正に乗り出そうとしている」と紹介した。
独フランクフルター・アルゲマイネ紙は「急速に右傾化する日本」との記事中、新政権が「ナショナリズムを前面に押し出している」と指摘。ただ「日本の政党は様々な利益集団の集まりである」とし、安倍氏が首相として政策を思い通りに遂行できるかは「簡単ではない」とみている。
海外メディアは自民党を保守政党と紹介しており、アジア各国では新政権の外交政策を警戒する声が高まっている。中国国営、新華社通信は電子版で「日本は隣国との関係を修復し、地域で建設的な役割を果たせるよう、長期的視点に立った外交政策に転換すべきだ」との論調を掲載した。
夢遊の人々、タカ派トリオの一人・安倍
参考:
安倍晋三の復活の理由、消去法的な支持集める
(英フィナンシャル・タイムズ紙社説)
自民党の安倍晋三総裁の復活は、最近の複雑な日本の政治状況においても最も不思議なことの1つといえる。5年前―そして5人前に―首相だった安倍氏が在職1年で突然辞任した時、復活を予想した人はほとんどいなかった。戦時中の歴史を恥じない「美しい国」を作るという目標を掲げたが、景気低迷に苦しむ国民には不人気だった。
■尖閣問題や民主党の失策などが追い風に
ただ、状況は大きく変わった。最も重要なのは、日本が実効支配する尖閣諸島について、中国が領有権を強く主張し始めたことだ。中国各地で激しい反日デモが起こり、多くの日本人に同国に対する懸念を抱かせた。この「尖閣ショック」が安倍氏に有利に働いた。日本は軍隊の保有を禁止する平和憲法を改正すべきだと主張しており、軍事費の増額も求めるとみられるからだ。
2番目の要因は、3年間で3人の首相が就任した民主党の失策だ。安倍氏の自民党が半世紀以上にわたり政治を支配した後、日本再生の期待を背景に民主党が2009年に政権を奪取した。もっとも民主党はチャンスを生かせず、日本は方向性を見いだせずにいる。
3番目の要因は、安倍氏がデフレ脱却に向け積極的な政策を検討していることだ。日銀に2~3%のインフレ目標を設定させ、目標達成まで紙幣を刷り続けるような総裁を任命するというアイデアをこれまでに示している。中央銀行の独立性を脅かさない限り、安倍氏の大胆な姿勢は歓迎すべきだ。むしろ、撤回するのがやや早過ぎた。
■幻想を抱いてはならない
もっとも、安倍氏に幻想を抱いてはならない。前回はひどい首相だった。国内ではリーダーシップと斬新なアイデアを欠いた。対外的には、従軍慰安婦問題など日本の戦時中の歴史の一部をごまかすことに固執し、近隣諸国の怒りを招いた。
リーダー候補として安倍氏がベストに見える理由は2つ。中国の誤った外交政策と、他に適任者を輩出できない日本の悲惨な政治状況だ。
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