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[国際競争] 語学力、井のなかの日本人によく効く最適な英語学習法

2013-02-03 | Weblog

 

欧米人の思考法「直線思考」を手に入れる

欧米人の思考法は、一般に「直線思考」と呼ばれる。主張したい意見がはっきりあって、ストレートな直線を描いて聞き手に伝わる。この直線思考は、言語を始めとして、欧米の実生活のあらゆる場面でも見られる基本の考え方だ。

例えば、直線思考が“食”の場面に現れる例として、フレンチのコース料理では、前菜、スープ、そしてメインディッシュ、そして最後はデザートという並びで料理が順番に運ばれてくる。

私が活動の拠点とする欧米・カナダモントリオールにある寿司レストランでも欧米式で、お寿司を注文すると、まずは味噌汁だけが出てくる。味噌汁を飲み終えてからでないと、お寿司は出て来ない。日本であれば、通常、ご飯と味噌汁などの汁物は一緒に出てくるはずだ。

行動のパターンで見たこの直線思考が言語にはどう反映されているのだろう。欧米言語の中でも英語は特に直線思考が強く反映され、逆に日本語は直線思考を避ける傾向にあるという。カプラン(1966)は英語の直線思考を他の言語と比べて以下のように示したので紹介してみよう。

カプランの仮説:使う言語が違えば思考法も異なる

カプランは、使う言語によって思考パターンが違うと説いた学者であり、言語と思考の違いが文化の違いに関係していることを積極的に明らかにしようとした。彼の論文に出てくる言語別・思考回路の図を見てみよう。



ここでは、Semiticはアラビア語を代表、Orientalは日本語、Romanceはフランス語を便宜的に各言語をグループとした代表例として挙げてみる。図をみると、英語は他の言語グループと比べて、圧倒的に直線思考であることが分かる。英語は、“言いたい内容に迷いがない言語”もっと言うならば、いつ、どこで、誰が、何をどうしたかがはっきり分かる言語だということだ。

一方、オリエンタル思考は、考えがグルグル渦を巻いていて、論点が見えにくい。こと日本人は文章を構成する際、結論から書き始めることを苦手とする。単刀直入を嫌う傾向があるために、さほど結論には関係ないような枕詞の導入をクッションにして、ジワジワと結論に持って行く言い回しを良しとする傾向が強い。

英語を効率的に学ぶには、英語話者の思考法を手に入れるのが一番いい。左から右へと順を追うように直線を意識して、情報を頭から順番に追っていく事。これを身につけなければ、日本語の思考回路のまま英語を学ぶことになってしまい、非効率極まりないのだ。

分けることは分かること

まず、言語習得を効率良く行うための方法として考えたときに、仮説の一つに次のようなものがある。それは、短い文章をまず習得し、だんだんと追加情報を足しながら、複雑な事が言えるようにしていくメソッドである。このメソッドを言語学の世界では、チャンク&リンケージと呼ばれる。小さな意味のユニット(=チャンク・意味の塊)を作り、その小さな塊をどんどんつなげて(=リンケージ)文にして行く作業のことを言う。

文作りとはチャンクとリンケージのパッチワーク(つぎはぎ)である。

だから、これからは、いっぺんに長い文を話そうとするのはやめて、チャンク&リンケージを心がけたい。

大きなステーキを丸ごと一枚いっぺんに食べられないように、細かくナイフで切り分けて、すこしずつ順番に口に運ぶ。分ける=わかるをイメージして欲しい。

チャンクを順番に並べてリンケージする

ここから、ナイフで言葉を小さな意味の塊に分けて、頭から消化していこう。ここから、認知言語学の世界でよく使われる“Completability”という概念を新たに導入してみる。日本語にあえて超訳すれば「意味のスッキリ感」という意味だ。

例えば、I went to the USA. アメリカに行った。(まず小さなチャンクを作る)ここで、意味に曖昧さが残るのであれば、なんとかスッキリさせようと、更に別なチャンクを足し算(リンケージ)してみる。

to study English (英語を勉強しに:別な小さなチャンクを追加する)

文を作るプロセスとして、まず、小さい塊を作って(I went to the USA)、それで言い足りずスッキリしなければ、また小さい塊を足して行く(to study English)という具合だ。とにかく、左で塊を作り、また、右に塊を作り、それを順番に足し算(リンケージ)する。このようなパッチワークのような作りは効率がよく、練習すればすぐにできるようになる。

なりきることが大事

海を目の前にして、海に入らずその脇でフォームだけ練習してては当然のごとくいつまでたっても泳げるようにならない。言葉もチャンク&リンケージという“理屈”が分かっても、実際に言葉の海の中に飛び込んで使ってみなければ意味が無い。実践すること、どんどん自分でリハーサルすること。これが本当に大事なのである。

日本人は概して、抽象的なものを高尚なものだと考える傾向が強いという。何を言っているかがわからない、煙に巻くような文章をかっこいいと思うのかも知れない。しかし、英語圏では逆だ。何を言っているかわからない人は、やはり“変な人”でしかない。英語を話すということは、曖昧感が消えるまでスッキリした文を作ろうとする「直線思考」を手に入れなければいけないことを意味しているのだ。

CNN,japan (文)溝江 達英 カナダ ラヴァル大学文学部日本語科主任 
早稲田大学第一文学部、一橋大学大学院言語社会研究科を経て、カナダ ラヴァル大学文学部言語学科博士課程修了。言語学博士(Ph.D) 英語スピーチコンテスト優勝経験を持つ。英語に加え、仏、独、西、伊、露語も堪能な言語学者である。

 

 


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