曇り、25度、91%
染め付け、色絵の作家、正木春蔵さんの作る器に惹かれるようになったのは、そんなに古い話ではありません。年とともに、好みの器も変わってきました。もちろん、変わらないものもありますが。
九谷の3代目菁華窯で修行なさったと聞いています。現在は石川県の加賀で、陶作なさっています。どの手持ちの器をのせようか、迷いました。確か、15年ほど前のものです。
長径が20センチほどの深皿です。同じ形で、絵の違うものを5点ほど見せていただきました。迷った末に、私が選んだのは、古九谷の色合いの強いこの皿でした。色合いは古九谷の緑、黄、紫です。ところが、この文様??
お店の人の話では、この器を作る前に、正木さんはペルシャへ旅行なさったというのです。確かにペルシャ文様です。こんな文様ばかりではありません。李朝の写し、古九谷の写しなどもあります。写しと言えば、本歌があるのですが、不思議と正木さんの手にかかると、写しが正木さん自身のものに変わってしまいます。
精巧な絵筆というのではありません。どこか、ちょっと気を抜いた、ひょうひょうとした筆致です。後に知ったことですが、大学ではデザインを学ばれたそうです。
人の手にかかって作り出されるもの、本の作家にしても、建築家にしても、陶作にしても、絵画もですが、その方達の人となりというか、生き様のようなものが映し出されるように思います。正木さんは、お写真でしか知りません。それでも、毎日手にする正木さんの器と写真の正木さん、ぴったりと胸に納まります。