◎2022年7月2日(土)
ワイルドフィールズおじか手前の駐車地(7:40)……林道から男鹿川に下る(8:27)……白滝沢分岐(9:16)……ゴユワイ滝(9:30)……分岐戻り(9:45)……白滝(10:17~10:51)……ワサビ田経由で林道に(11:08)……林道から男鹿川に下降(11:39)……尾ヶ倉沢出合いの滝(11:43)……男鹿川大滝(11:49~12:13)……林道復帰(12:21)……駐車地(13:00)
猛暑日が続く。自分の住む群馬は特に異常といってもいいくらいだ。こんな時に山登りでもしていたら身体に変調をきたす。適当に短時間でもと里山でも歩けば熱中症になってもおかしくはない。遠出してまで、ハイカーの多いアルプスや八ヶ岳に行く気にはなれないし、今の自分には魅力の世界でもない。となると、涼を求めて沢歩き、滝見物となる。だが、ヤマヒルがいるかもと躊躇する。
瀑泉さんの記事を拝見し、昨年の9月に行かれた日光男鹿川の白滝というのが気になっていたが、そちらは自分の趣向の地域ではなかったから、記憶に留めただけだった。豪快な美滝であることもさることながら、滝見するのに沢登りではなく沢歩きで済むのも気に入っていた。それが急にその気になってしまった。クマが出没するところらしいから、一人ではなんだなと、知人に誘いをかけたら、先約ありで断わられた。レベルが違い過ぎる方だ。オレがやろうとしていることは沢歩きとはいっても川遊びと大差がない。考えてみれば失礼なお誘いだった。一人で行くしかないな。
車のナビを「ワイルドフィールズおじか」にセットしても出ず、住所で目的地にしたが、日光なのに西那須野塩原IC経由なのには違和感を覚えだが、日光市は多方面に合併して、市境の北はもう福島県になっていた。
キャンプ敷地の「おじか」の中に入るわけにもいかず、手前の空き地に駐車した。おじか利用者は中の駐車場のようだ。4~5台置けそうだが、他に車はいない。そういえば、瀑泉さんのブログだけでは心もとないので、他のネット記事をGoogleで調べたが数件しかなかった。白滝はマイナーというよりもあまり知られた滝ではないようだ。瀑泉さんの記録を含めて、決定的な歩きマニュアルはないままに出発する。林道歩きの間はズック靴のつもりでいたが、ヘルメットと沢靴をザックに吊り下げて長い林道歩きをするのもお荷物なので、最初から沢靴のままにした。自分の沢靴とはいっても、モンベルのサワー何やらといった一万円を超えるものではない。ただの釣り用の沢靴。かろうじて、底のフェルトにピンが埋め込まれているだけのものだ。
(ワイルドフィールズおじかの間の林道をまっすぐに。キャンプエリアは舗装されている)
(やがてこうなる。これは現役の林道で、重機も先に見える)
(堰堤が見えた。結構高い)
(この標識。横川放牧場への林道が分岐する)
出発時の車載気温計は20℃。おじかの敷地を抜けると林道歩き。この林道は両側が木立で風が通っていて、早々に汗がボタボタとならないだけでもほっとする。進行方向の右手上には横川牧場という放牧場があるらしく、専用の林道が分岐する。これは第1から第3まで続いた。左下には男鹿川。たまに堰堤も見かける。林道と川の高さは結構あって、適当に川に下るというのは難しいし、川に出たところで、この時季は陽があたるし、川幅は狭く、石ころだらけの河原歩きになりそうだ。まずは大滝に下るカーブまでは林道歩きのつもりでいる。
(ここから大滝に下るはずだが、下をチラ見であきらめた)
(尾ヶ倉橋。ここで道はUターンする。ムダ歩きをしている気がする)
紅藤橋(くどうばし)を通過し、さらに先の、道が右折するところにある目印のカーブミラーに着く。この下で尾ヶ倉沢が男鹿川に合流しているはず。下を覗いたが、下れそうなところはないままに先に行く。尾ヶ倉沢が見えてくる。尾ヶ倉橋からまた戻る形になる。何のための大回りなのか。左岸歩きから右岸になっただけのこと。その間、尾ヶ倉沢に下るには適当なところもいくつかあって、そこから難なく下れそうだった。調べていた記録には、この尾ヶ倉橋から沢に下って、出合いの滝、大滝に行ったというのもあったが、後で考えれば、出合いの滝の頭には出られても、その先は懸垂下降でもしなければ無理な話だろうし、自分でもそう思っていたので、敢えて沢に降りはしなかった。目的はあくまで白滝で、ここで手こずって時間をつぶしているわけにはいかない。大滝と出合いの滝は後で考えればいい。まして、林道歩きは長いし。
(ここのカーブミラーからは大滝の上に出てしまうが、ここまで来たなら致し方ない)
(赤ペンキが川方面に続いていた)
(左下に大滝が見える。大滝に下るのは懸垂下降でもしない限りは無理)
(河原に続く踏み跡)
(すでにナメ床になっていた。大滝方面)
巻いた対岸のカーブ地点に戻った。ここにもカーブミラーがある(ここまでもカーブ地点ではいくつかミラーはあった)。もう大滝は過ぎているだろう。少ない情報ながらも、ここから下るのが定番のようで、瀑泉さんはここからお助けロープを出して下ったようだが、木に塗った赤ペンキが気になった。下る踏み跡があったので赤ペンキを追うと、平らなところに出て、大滝がすぐそこに見えている。ここからではまだ下れない。赤ペンキは平地で消えた(見落としだろう)が、上流部を見ると続いていて、あっけなく大滝の上のナメ床の川に出られた。
ここで沢靴に履き替え、ヘルメットをかぶる。この先、ヘルメットは必要もなかったが、クマに出くわしたら、頭部の損傷は少しでも抑えたい。そんな気持ちもあった。
(大滝の落ち口)
(ナメ床の歩き1)
(ナメ床の歩き2)
(ナメ床の歩き3)
(ナメ床の歩き4)
(ナメ床の歩き5。越えるのに難しいところはない)
(ナメ床の歩き6。甌穴。きれいな水の流れ)
(ナメ床の歩き7)
(ナメ床の歩き8)
(ナメ床の歩き9)
(ナメ床の歩き10)
(ナメ床の歩き11)
(ナメ床の歩き12)
(ナメ床の歩き13)
しばらくナメが続くようだ。すとーんと落ちた大滝の上まで行ってみる。そこまで見たいといった気持ちもはなく、のけぞって見下ろしはしなかったが、普通の流れのままに落ちていた。そんなことよりも、さっさとナメ床の沢を楽しみたかった。ここも長いらしい。
ナメ沢の風景はどこも同じような気がする。幅広の空間と小滝。たまに甌穴。水は澄んでいる。先に見えるカーブの先はどうなっているのだろう。同じ風景が続いている。時たま聞こえる鳥の声。チチッ。何か知らないが、瀑泉さんのブログにはカワガラスが多いとあった。鳥そのものの姿は見かけなかった。ところで、林道の通し歩きで白滝まで行く方もいるようだが、自分の感覚としては、ゴーロの沢ではあるまいに、こんなナメを楽しまないのではもったいないような気がしてしまう。のんびり歩いているとハエのようなものが一匹たかってきた。腕に止まった瞬間にはたくとアブだった。
(ナメ床の歩き14。休憩。満喫)
(ナメ床の歩き15。そろそろ終わりの気配)
(林道の橋が頭上を横切る)
(白滝沢が右から入り込む。そのまま本流に向かうが)
(水がえらく少なくなって堰堤)
じわりと暑くなってきている。途中で石に腰かけてウイダーインゼリーを含む。持参したのはあくまでも熱中症対策で、冷凍していたのにすでに戻っている。しかも生温く。ついでに、さっきのアブにはやはり刺されていたようで、そこにキンカンを塗る。
沢歩き再開。頭上に橋が見えた。間もなく川は二股になり、右に白滝沢を分ける。ここでナメ床は終了。もっと長いと思っていただけに、当てが外れた感じ。白滝は後回しにして本流に行く。水量はかなり少ない。白滝沢の水は勢いが強い。石だらけの河原の先には堰堤があった。左は無理だが、右からなら巻けそうだが、ここで無理をして白滝を見られない結果になったのではどうにもならない。白滝の前にゴユワイ滝を済ませておきたかった。だが、水がないのでは、滝になっているのかも期待薄だ。
(一時的に林道歩き。この頃になるとかなり暑くなっていた)
(さらに水が細くなり)
(これがゴユワイ滝かと思ったが、だとしたらかなりショボい)
(横から)
(真横から)
(上がると甌穴)
(先にも滝があった。こちらがゴユワイ滝?)
(上から)
(さらにこんなのもあったが、どうも記憶がない。見たから撮ったのだろうが。この先の視界に滝は見えなかった)
(戻って)
(林道歩き。ゴユワイ滝には行くまでもなかったような気がした)
少し戻って、右岸側から攀じ登ると林道の延長になっていた。うんざりしたが、堰堤の先にはテープがあって、本流には戻ったものの、相変わらずのチョロ流れ。陽がもろにあたり、暑くてもうゴユワイ滝はやめようかと思った。水が出てきたのでしばらく行くと、確かに滝はあった。ショボい。ただの小滝。これがゴユワイ滝だろうか。名前があるくらいだから、そんなことはあるまいと上に登ると、ちょっと先にも滝があった。この滝のようだ。名前付きの滝に対して失礼かもしれないが、実はこれでもあるまいとさらに上流に行くと、滝らしいものは見あたらない。地図とGPSを見比べると、男鹿川本流の滝マークはすでに過ぎている。がっかりゴユワイ滝だった。
(白滝沢に入る。入口のロープに垂れた標識は「禁漁」)
(ナメではなかった)
(歩きづらい)
(たまにナメもあるが短期間)
(きれいとこ撮り)
(完全にゴーロ歩き)
(たまに逃げる)
(小滝が続くようになり)
(同じく。こんなのでもなければ嫌な沢歩きだ)
(大きめの小滝があって)
(まさか、これが白滝ではあるまいな)
(横から)
(かなり退屈になってきた)
戻って林道に出て、男鹿川に戻り、白滝沢に入る。ナメをずっと歩いていただけに歩きづらい沢だ。ここもまた長い。アブにまた刺された。ここまで来たら沢歩き続行しかないが、林道歩きをした場合は少しの沢歩きで済むようで、そんなことを知ったのは後のこと。それを知っていたところで林道に向かっても汗を余計にかくだけだ。途中で大きめな小滝を見た。もしかしたらこれが白滝かな、だったら騙された。そんなことはあるまい。上流に向かう。水流は強くなっている。谷間も狭くなり、倒木やらクモの巣で前進がうっとうしい。
(突然、白滝が)
(白滝1)
(白滝2。これは上の補正版)
(白滝3)
(白滝4)
(白滝5)
(白滝6)
(白滝7)
(白滝8)
(白滝9)
(白滝10)
(白滝11)
(白滝12)
(白滝13)
(白滝14。もういいか。至福のひと時だった)
突然、先に巨瀑が見えた。これが白滝だった。光の加減か、西向きの滝なのに時間的に南東から陽を浴び、流れの白さと流れ落ちる岩壁の凹凸だけが目立った。そして、普通の大きな滝は左右に翼のような岩壁を広げて流れ落ちるのに、この滝の幅は10mもあるかどうか。ぎゅう詰めの中を落ちている感じ。勢いは強く、上部では飛沫どころか水煙をあげている。美滝というよりも、自分には恐い感じがした。それでもしばらく見入っていた。正直のところ、白滝を観ることはできたのだし、この狭い空間から早いとこ抜け出したい気分だった。
腰をおろすところはなく、仕方なく、腰を濡らして石に座って一服した。恐さは抜けないが、恐いもの見たさがある。まったく矛盾した気分だ。落ち着いてから左岸を上がってみたが、ここでこけたらと思うと、上部の真下までは行けなかった。
(適当に歩いて行くと)
(ワサビ田のようだ)
(そして林道に出た)
(雨が降るたびに土砂除けしているのだろうか)
(反対側もこれだ)
(瀑泉さんのブログにこの木の写真が載っていたような)
30分以上はいた。写真撮り以外はほとんどぼーっとしていた。不思議な空間だった。
帰路は林道歩きの予定でいたが、林道への出方がわからない。左岸側のヤブを歩いていると踏み跡を見つけ、それを辿ると、ワサビ田が出てきて、林道に出られた。ワサビ田は陽がもろにあたりやけに暑かった。ハウスの中を覗くと、清水に浸かったワサビが見えた。林道は木陰になっているからまだマシだが、来た時と違って生ぬるい風になってしまっている。崩壊地を過ぎる。上も下もかなり危ない状況だが、林道そのものは整備するのか車が走っているようだ。
(尾ヶ倉橋にやってきた。問題はこれからだ)
(戻ってきました)
(覗き込むと急斜面だが、先に行くと)
(トラロープ。ありがたい)
(何とか着水)
残る滝は尾ヶ倉沢出合いの滝と男鹿川大滝の二つ。下りの途中に補助ロープが置かれているという話だが、はたしてそううまく見つけられるものなのか。往路ではまったく気づきもせず、降りられそうな斜面はなかった。大滝の上に下った時も、あれは偶然。たまたま赤ペンキを見つけたからだ。
林道大回りに入り、尾ヶ倉橋を渡る。そしてカーブミラーのある折り返し。ここで下降ポイントを探せなかったら二滝ともに縁がない滝になってしまう。どこにも目印はない。何となく凹んだあたりから下を覗く。下る踏み跡があった。ちょっと恐そうだが、下りかけると、ロープが現れた。このロープ、上からでは見えない。あとはロープ頼り。広い河原に出た。できれば歩きたくない河原だ。
(尾ヶ倉沢出合いの滝)
右から尾ヶ倉沢が入り込む。そこにあったのが尾ヶ倉沢出合いの滝。オムスビのような形をしている。落ち口は狭そうだ。その下が丸い岩になっていて、水は岩に満遍なく均等にシャワー状に注ぎ込んでいる。ありふれた滝のようでいて珍しくもきれいな滝だ。落差は10mほどだろう。落差といえば、白滝は30m以上はあった。自分にはそれを超えると目測できない。
(男鹿川を上流に)
(男鹿川大滝。上段の滝は二条だが、奥の滝が日陰ではっきり写らなかった)
(下段の上から)
(下段を斜め上から)
(正面に出て)
(右手に近づいて)
(こちらが左)
(台形状の噴火口のようなものが気になった)
(改めて右。好みだったし)
(台形は深い甌穴だった)
(改めて左)
(往路で見た落ち口あたり)
(登れそうな気がした)
河原に戻り上流に向かう。河原歩きは暑い。ここを歩くのはつらい。やはり、ナメ床になる大滝からの沢歩きが正解だろう。ほどなく大滝。河原の木陰にザックを置き、カメラだけ持って行く。こういうのも段瀑というのだろうか。前の滝と少し奥に入ったところに二条の滝が流れている。それぞれに落ちる向きが90度違う。もしかして、大滝は後ろの方の滝だろうか。前段は3、4mの落差で、右から簡単に上がれた。岩肌は薄茶で、これに緑色のコケ(かと思うが)が広く付着してまだら状の滝になっている。甌穴もある。
問題は上段にある滝で、二条とはいったものの、光の加減で、奥の滝(正面右)がすっきりと撮れない。この部分が完全に日陰になっている。タイプはまったく違い、右は直瀑で、左は前段の滝の延長の風情ながらも角度はある。テカテカしている。落差は10mもない。左に甌穴のようなものがあり、それを覗き見したくなって上がってみる。甌穴だった。きれいな水を湛えていた。これに飛び込んだらさぞ気持ち良さそうだが、深さはかなりある。ハイトスさんなら…きっと入る。泳げる広さはない。家庭用の湯舟といったところ。
降りようとして見上げると、つまり滝の右岸側になるわけだが、岩を穿ったような跡があり、これを頼りに上まで行けそうだ。それはしなかった。下る際に踏み外せば転落する。ただ、ここを登らずとも、左の木のある部分から小巻きして登るほうが安全かもしれない。自分の軌跡図を見ると、入渓地点と大滝のラインが続いているが、実際にはつながってはいない。
河原の木陰に戻り、菓子パンを食べて一服する。のんびりとしたいが、ジリジリと暑くなってきたので腰を上げる。林道に出るロープ場では汗をたっぷりかいた。この程度でこうでは、急で長い上りの登山は無理。
(おさらば)
(汗だくで林道に上がる)
(林道歩き)
(おじかのテントサイトに入る)
(賑わっていた)
(駐車地に到着)
とりあえず、滝はすべて見た。満足した。残り40分ほどの林道歩きも、苦にはならなかった。おじかのエリアに入った。賑わっている。今日は土曜日だ。リヤカーで車からテン場に荷物を運ぶ人の姿が多い。コテージ利用者はさほどにいないようだ。テン泊はコロナ禍でブームになったらしい。標高は800m。街中に比べると5℃ほど低いだろうが、この猛暑続きでは5℃の差は大きいだろうし、夜はさぞ涼しいだろう。
駐車地に着いて着替える。荷物の整理もした。ザックを見て、あれっ?と思った。クマ撃退スプレーがない。ザックに引っかけていた。落としてしまったようだ。二重の安心で、これまたザックに引っかけた痴漢相手の催涙スプレーだけは残っている。クマ撃退をかつて使ったことはないし、落としたスプレーはすでに使用期限も切れていた。家に帰れば有効期限の予備はある。安いものではない。これからは、歩行中はしっかり確認するようにしないと。確認したところで、なくなっていたらどうにもならないが、その場合、眼前に迫ってからの痴漢用での撃退になってしまい、すでに爪がこちらの顔にヒットしているだろう。何せ、クマ用と成分は同じでも痴漢用は液体らしい。ちなみにヤマヒルは見かけもしなかった。
駐車地はずっと日陰になっている。車のエンジンをかけると、車載の温度計は32℃になっていた。出発から12℃も上がっていた。
(今回の歩き)
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
◎滝の動画 白滝⇒これ 大滝⇒これ
ワイルドフィールズおじか手前の駐車地(7:40)……林道から男鹿川に下る(8:27)……白滝沢分岐(9:16)……ゴユワイ滝(9:30)……分岐戻り(9:45)……白滝(10:17~10:51)……ワサビ田経由で林道に(11:08)……林道から男鹿川に下降(11:39)……尾ヶ倉沢出合いの滝(11:43)……男鹿川大滝(11:49~12:13)……林道復帰(12:21)……駐車地(13:00)
猛暑日が続く。自分の住む群馬は特に異常といってもいいくらいだ。こんな時に山登りでもしていたら身体に変調をきたす。適当に短時間でもと里山でも歩けば熱中症になってもおかしくはない。遠出してまで、ハイカーの多いアルプスや八ヶ岳に行く気にはなれないし、今の自分には魅力の世界でもない。となると、涼を求めて沢歩き、滝見物となる。だが、ヤマヒルがいるかもと躊躇する。
瀑泉さんの記事を拝見し、昨年の9月に行かれた日光男鹿川の白滝というのが気になっていたが、そちらは自分の趣向の地域ではなかったから、記憶に留めただけだった。豪快な美滝であることもさることながら、滝見するのに沢登りではなく沢歩きで済むのも気に入っていた。それが急にその気になってしまった。クマが出没するところらしいから、一人ではなんだなと、知人に誘いをかけたら、先約ありで断わられた。レベルが違い過ぎる方だ。オレがやろうとしていることは沢歩きとはいっても川遊びと大差がない。考えてみれば失礼なお誘いだった。一人で行くしかないな。
車のナビを「ワイルドフィールズおじか」にセットしても出ず、住所で目的地にしたが、日光なのに西那須野塩原IC経由なのには違和感を覚えだが、日光市は多方面に合併して、市境の北はもう福島県になっていた。
キャンプ敷地の「おじか」の中に入るわけにもいかず、手前の空き地に駐車した。おじか利用者は中の駐車場のようだ。4~5台置けそうだが、他に車はいない。そういえば、瀑泉さんのブログだけでは心もとないので、他のネット記事をGoogleで調べたが数件しかなかった。白滝はマイナーというよりもあまり知られた滝ではないようだ。瀑泉さんの記録を含めて、決定的な歩きマニュアルはないままに出発する。林道歩きの間はズック靴のつもりでいたが、ヘルメットと沢靴をザックに吊り下げて長い林道歩きをするのもお荷物なので、最初から沢靴のままにした。自分の沢靴とはいっても、モンベルのサワー何やらといった一万円を超えるものではない。ただの釣り用の沢靴。かろうじて、底のフェルトにピンが埋め込まれているだけのものだ。
(ワイルドフィールズおじかの間の林道をまっすぐに。キャンプエリアは舗装されている)
(やがてこうなる。これは現役の林道で、重機も先に見える)
(堰堤が見えた。結構高い)
(この標識。横川放牧場への林道が分岐する)
出発時の車載気温計は20℃。おじかの敷地を抜けると林道歩き。この林道は両側が木立で風が通っていて、早々に汗がボタボタとならないだけでもほっとする。進行方向の右手上には横川牧場という放牧場があるらしく、専用の林道が分岐する。これは第1から第3まで続いた。左下には男鹿川。たまに堰堤も見かける。林道と川の高さは結構あって、適当に川に下るというのは難しいし、川に出たところで、この時季は陽があたるし、川幅は狭く、石ころだらけの河原歩きになりそうだ。まずは大滝に下るカーブまでは林道歩きのつもりでいる。
(ここから大滝に下るはずだが、下をチラ見であきらめた)
(尾ヶ倉橋。ここで道はUターンする。ムダ歩きをしている気がする)
紅藤橋(くどうばし)を通過し、さらに先の、道が右折するところにある目印のカーブミラーに着く。この下で尾ヶ倉沢が男鹿川に合流しているはず。下を覗いたが、下れそうなところはないままに先に行く。尾ヶ倉沢が見えてくる。尾ヶ倉橋からまた戻る形になる。何のための大回りなのか。左岸歩きから右岸になっただけのこと。その間、尾ヶ倉沢に下るには適当なところもいくつかあって、そこから難なく下れそうだった。調べていた記録には、この尾ヶ倉橋から沢に下って、出合いの滝、大滝に行ったというのもあったが、後で考えれば、出合いの滝の頭には出られても、その先は懸垂下降でもしなければ無理な話だろうし、自分でもそう思っていたので、敢えて沢に降りはしなかった。目的はあくまで白滝で、ここで手こずって時間をつぶしているわけにはいかない。大滝と出合いの滝は後で考えればいい。まして、林道歩きは長いし。
(ここのカーブミラーからは大滝の上に出てしまうが、ここまで来たなら致し方ない)
(赤ペンキが川方面に続いていた)
(左下に大滝が見える。大滝に下るのは懸垂下降でもしない限りは無理)
(河原に続く踏み跡)
(すでにナメ床になっていた。大滝方面)
巻いた対岸のカーブ地点に戻った。ここにもカーブミラーがある(ここまでもカーブ地点ではいくつかミラーはあった)。もう大滝は過ぎているだろう。少ない情報ながらも、ここから下るのが定番のようで、瀑泉さんはここからお助けロープを出して下ったようだが、木に塗った赤ペンキが気になった。下る踏み跡があったので赤ペンキを追うと、平らなところに出て、大滝がすぐそこに見えている。ここからではまだ下れない。赤ペンキは平地で消えた(見落としだろう)が、上流部を見ると続いていて、あっけなく大滝の上のナメ床の川に出られた。
ここで沢靴に履き替え、ヘルメットをかぶる。この先、ヘルメットは必要もなかったが、クマに出くわしたら、頭部の損傷は少しでも抑えたい。そんな気持ちもあった。
(大滝の落ち口)
(ナメ床の歩き1)
(ナメ床の歩き2)
(ナメ床の歩き3)
(ナメ床の歩き4)
(ナメ床の歩き5。越えるのに難しいところはない)
(ナメ床の歩き6。甌穴。きれいな水の流れ)
(ナメ床の歩き7)
(ナメ床の歩き8)
(ナメ床の歩き9)
(ナメ床の歩き10)
(ナメ床の歩き11)
(ナメ床の歩き12)
(ナメ床の歩き13)
しばらくナメが続くようだ。すとーんと落ちた大滝の上まで行ってみる。そこまで見たいといった気持ちもはなく、のけぞって見下ろしはしなかったが、普通の流れのままに落ちていた。そんなことよりも、さっさとナメ床の沢を楽しみたかった。ここも長いらしい。
ナメ沢の風景はどこも同じような気がする。幅広の空間と小滝。たまに甌穴。水は澄んでいる。先に見えるカーブの先はどうなっているのだろう。同じ風景が続いている。時たま聞こえる鳥の声。チチッ。何か知らないが、瀑泉さんのブログにはカワガラスが多いとあった。鳥そのものの姿は見かけなかった。ところで、林道の通し歩きで白滝まで行く方もいるようだが、自分の感覚としては、ゴーロの沢ではあるまいに、こんなナメを楽しまないのではもったいないような気がしてしまう。のんびり歩いているとハエのようなものが一匹たかってきた。腕に止まった瞬間にはたくとアブだった。
(ナメ床の歩き14。休憩。満喫)
(ナメ床の歩き15。そろそろ終わりの気配)
(林道の橋が頭上を横切る)
(白滝沢が右から入り込む。そのまま本流に向かうが)
(水がえらく少なくなって堰堤)
じわりと暑くなってきている。途中で石に腰かけてウイダーインゼリーを含む。持参したのはあくまでも熱中症対策で、冷凍していたのにすでに戻っている。しかも生温く。ついでに、さっきのアブにはやはり刺されていたようで、そこにキンカンを塗る。
沢歩き再開。頭上に橋が見えた。間もなく川は二股になり、右に白滝沢を分ける。ここでナメ床は終了。もっと長いと思っていただけに、当てが外れた感じ。白滝は後回しにして本流に行く。水量はかなり少ない。白滝沢の水は勢いが強い。石だらけの河原の先には堰堤があった。左は無理だが、右からなら巻けそうだが、ここで無理をして白滝を見られない結果になったのではどうにもならない。白滝の前にゴユワイ滝を済ませておきたかった。だが、水がないのでは、滝になっているのかも期待薄だ。
(一時的に林道歩き。この頃になるとかなり暑くなっていた)
(さらに水が細くなり)
(これがゴユワイ滝かと思ったが、だとしたらかなりショボい)
(横から)
(真横から)
(上がると甌穴)
(先にも滝があった。こちらがゴユワイ滝?)
(上から)
(さらにこんなのもあったが、どうも記憶がない。見たから撮ったのだろうが。この先の視界に滝は見えなかった)
(戻って)
(林道歩き。ゴユワイ滝には行くまでもなかったような気がした)
少し戻って、右岸側から攀じ登ると林道の延長になっていた。うんざりしたが、堰堤の先にはテープがあって、本流には戻ったものの、相変わらずのチョロ流れ。陽がもろにあたり、暑くてもうゴユワイ滝はやめようかと思った。水が出てきたのでしばらく行くと、確かに滝はあった。ショボい。ただの小滝。これがゴユワイ滝だろうか。名前があるくらいだから、そんなことはあるまいと上に登ると、ちょっと先にも滝があった。この滝のようだ。名前付きの滝に対して失礼かもしれないが、実はこれでもあるまいとさらに上流に行くと、滝らしいものは見あたらない。地図とGPSを見比べると、男鹿川本流の滝マークはすでに過ぎている。がっかりゴユワイ滝だった。
(白滝沢に入る。入口のロープに垂れた標識は「禁漁」)
(ナメではなかった)
(歩きづらい)
(たまにナメもあるが短期間)
(きれいとこ撮り)
(完全にゴーロ歩き)
(たまに逃げる)
(小滝が続くようになり)
(同じく。こんなのでもなければ嫌な沢歩きだ)
(大きめの小滝があって)
(まさか、これが白滝ではあるまいな)
(横から)
(かなり退屈になってきた)
戻って林道に出て、男鹿川に戻り、白滝沢に入る。ナメをずっと歩いていただけに歩きづらい沢だ。ここもまた長い。アブにまた刺された。ここまで来たら沢歩き続行しかないが、林道歩きをした場合は少しの沢歩きで済むようで、そんなことを知ったのは後のこと。それを知っていたところで林道に向かっても汗を余計にかくだけだ。途中で大きめな小滝を見た。もしかしたらこれが白滝かな、だったら騙された。そんなことはあるまい。上流に向かう。水流は強くなっている。谷間も狭くなり、倒木やらクモの巣で前進がうっとうしい。
(突然、白滝が)
(白滝1)
(白滝2。これは上の補正版)
(白滝3)
(白滝4)
(白滝5)
(白滝6)
(白滝7)
(白滝8)
(白滝9)
(白滝10)
(白滝11)
(白滝12)
(白滝13)
(白滝14。もういいか。至福のひと時だった)
突然、先に巨瀑が見えた。これが白滝だった。光の加減か、西向きの滝なのに時間的に南東から陽を浴び、流れの白さと流れ落ちる岩壁の凹凸だけが目立った。そして、普通の大きな滝は左右に翼のような岩壁を広げて流れ落ちるのに、この滝の幅は10mもあるかどうか。ぎゅう詰めの中を落ちている感じ。勢いは強く、上部では飛沫どころか水煙をあげている。美滝というよりも、自分には恐い感じがした。それでもしばらく見入っていた。正直のところ、白滝を観ることはできたのだし、この狭い空間から早いとこ抜け出したい気分だった。
腰をおろすところはなく、仕方なく、腰を濡らして石に座って一服した。恐さは抜けないが、恐いもの見たさがある。まったく矛盾した気分だ。落ち着いてから左岸を上がってみたが、ここでこけたらと思うと、上部の真下までは行けなかった。
(適当に歩いて行くと)
(ワサビ田のようだ)
(そして林道に出た)
(雨が降るたびに土砂除けしているのだろうか)
(反対側もこれだ)
(瀑泉さんのブログにこの木の写真が載っていたような)
30分以上はいた。写真撮り以外はほとんどぼーっとしていた。不思議な空間だった。
帰路は林道歩きの予定でいたが、林道への出方がわからない。左岸側のヤブを歩いていると踏み跡を見つけ、それを辿ると、ワサビ田が出てきて、林道に出られた。ワサビ田は陽がもろにあたりやけに暑かった。ハウスの中を覗くと、清水に浸かったワサビが見えた。林道は木陰になっているからまだマシだが、来た時と違って生ぬるい風になってしまっている。崩壊地を過ぎる。上も下もかなり危ない状況だが、林道そのものは整備するのか車が走っているようだ。
(尾ヶ倉橋にやってきた。問題はこれからだ)
(戻ってきました)
(覗き込むと急斜面だが、先に行くと)
(トラロープ。ありがたい)
(何とか着水)
残る滝は尾ヶ倉沢出合いの滝と男鹿川大滝の二つ。下りの途中に補助ロープが置かれているという話だが、はたしてそううまく見つけられるものなのか。往路ではまったく気づきもせず、降りられそうな斜面はなかった。大滝の上に下った時も、あれは偶然。たまたま赤ペンキを見つけたからだ。
林道大回りに入り、尾ヶ倉橋を渡る。そしてカーブミラーのある折り返し。ここで下降ポイントを探せなかったら二滝ともに縁がない滝になってしまう。どこにも目印はない。何となく凹んだあたりから下を覗く。下る踏み跡があった。ちょっと恐そうだが、下りかけると、ロープが現れた。このロープ、上からでは見えない。あとはロープ頼り。広い河原に出た。できれば歩きたくない河原だ。
(尾ヶ倉沢出合いの滝)
右から尾ヶ倉沢が入り込む。そこにあったのが尾ヶ倉沢出合いの滝。オムスビのような形をしている。落ち口は狭そうだ。その下が丸い岩になっていて、水は岩に満遍なく均等にシャワー状に注ぎ込んでいる。ありふれた滝のようでいて珍しくもきれいな滝だ。落差は10mほどだろう。落差といえば、白滝は30m以上はあった。自分にはそれを超えると目測できない。
(男鹿川を上流に)
(男鹿川大滝。上段の滝は二条だが、奥の滝が日陰ではっきり写らなかった)
(下段の上から)
(下段を斜め上から)
(正面に出て)
(右手に近づいて)
(こちらが左)
(台形状の噴火口のようなものが気になった)
(改めて右。好みだったし)
(台形は深い甌穴だった)
(改めて左)
(往路で見た落ち口あたり)
(登れそうな気がした)
河原に戻り上流に向かう。河原歩きは暑い。ここを歩くのはつらい。やはり、ナメ床になる大滝からの沢歩きが正解だろう。ほどなく大滝。河原の木陰にザックを置き、カメラだけ持って行く。こういうのも段瀑というのだろうか。前の滝と少し奥に入ったところに二条の滝が流れている。それぞれに落ちる向きが90度違う。もしかして、大滝は後ろの方の滝だろうか。前段は3、4mの落差で、右から簡単に上がれた。岩肌は薄茶で、これに緑色のコケ(かと思うが)が広く付着してまだら状の滝になっている。甌穴もある。
問題は上段にある滝で、二条とはいったものの、光の加減で、奥の滝(正面右)がすっきりと撮れない。この部分が完全に日陰になっている。タイプはまったく違い、右は直瀑で、左は前段の滝の延長の風情ながらも角度はある。テカテカしている。落差は10mもない。左に甌穴のようなものがあり、それを覗き見したくなって上がってみる。甌穴だった。きれいな水を湛えていた。これに飛び込んだらさぞ気持ち良さそうだが、深さはかなりある。ハイトスさんなら…きっと入る。泳げる広さはない。家庭用の湯舟といったところ。
降りようとして見上げると、つまり滝の右岸側になるわけだが、岩を穿ったような跡があり、これを頼りに上まで行けそうだ。それはしなかった。下る際に踏み外せば転落する。ただ、ここを登らずとも、左の木のある部分から小巻きして登るほうが安全かもしれない。自分の軌跡図を見ると、入渓地点と大滝のラインが続いているが、実際にはつながってはいない。
河原の木陰に戻り、菓子パンを食べて一服する。のんびりとしたいが、ジリジリと暑くなってきたので腰を上げる。林道に出るロープ場では汗をたっぷりかいた。この程度でこうでは、急で長い上りの登山は無理。
(おさらば)
(汗だくで林道に上がる)
(林道歩き)
(おじかのテントサイトに入る)
(賑わっていた)
(駐車地に到着)
とりあえず、滝はすべて見た。満足した。残り40分ほどの林道歩きも、苦にはならなかった。おじかのエリアに入った。賑わっている。今日は土曜日だ。リヤカーで車からテン場に荷物を運ぶ人の姿が多い。コテージ利用者はさほどにいないようだ。テン泊はコロナ禍でブームになったらしい。標高は800m。街中に比べると5℃ほど低いだろうが、この猛暑続きでは5℃の差は大きいだろうし、夜はさぞ涼しいだろう。
駐車地に着いて着替える。荷物の整理もした。ザックを見て、あれっ?と思った。クマ撃退スプレーがない。ザックに引っかけていた。落としてしまったようだ。二重の安心で、これまたザックに引っかけた痴漢相手の催涙スプレーだけは残っている。クマ撃退をかつて使ったことはないし、落としたスプレーはすでに使用期限も切れていた。家に帰れば有効期限の予備はある。安いものではない。これからは、歩行中はしっかり確認するようにしないと。確認したところで、なくなっていたらどうにもならないが、その場合、眼前に迫ってからの痴漢用での撃退になってしまい、すでに爪がこちらの顔にヒットしているだろう。何せ、クマ用と成分は同じでも痴漢用は液体らしい。ちなみにヤマヒルは見かけもしなかった。
駐車地はずっと日陰になっている。車のエンジンをかけると、車載の温度計は32℃になっていた。出発から12℃も上がっていた。
(今回の歩き)
この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)
◎滝の動画 白滝⇒これ 大滝⇒これ
白滝、予定通り見に行かれましたか。取り置きしていただきたかったです・・なんて言えないですね(笑)レベルなんてこっぱずかしいです。正直なところ翌日のハードさに怖気づいてダブルは無理かと思ったのです。実際のところ本当にレベル高いお二人になんとか付いてった感じでした。現在、挽回計画中です。今日も地味な滝見に出かけましたが、濡れ薮必須でしたのでその場判断もあり声かけきれず・・・・他に良いところありましたら、お誘いください。ここはいつか見に行ってみますがアブが居ない時期が良さそうですね。
みー猫さんあたりにはお散歩コースかと思いますが、ナメの歩きと白滝の豪快さは体験していただきたいものです。紅葉の時に、行くあてがなかったら、行ってみてください。
他に良いところ? 私にはまったくありませんね。先鋭的な沢歩きはごめんだし、もっぱら、他人様のブログやヤマレコ、ヤマップを見ての後追いに自分なりに加工した歩きしかありませんよ。