たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

ルートミスで失敗した備前楯山

2010年03月14日 | 足尾の山
◎2010年3月13日(土)

 旧足尾町の商工会で紹介している備前楯山コースに「学校口コース」というのがあった。「99/4/27調査」となっている。旧本山小学校の裏手から入るコースである。決して詳細な案内説明ではない。写真と地形図に赤線を入れたものがそれぞれ1枚だけ。石垣山(1106mP)と備後楯山を経由して備前楯山に至るコース。以前、通洞駅の裏手から備後楯山を経由し、備前楯山に登り、下りは石垣山、金龍山(997.9mP)経由で通洞駅に戻ったことがある。この帰路で使ったコースに、今日は石垣山手前で合流ということになる。舟石峠からは、「関東ふれあいの道」であっという間に着いてしまう備前楯山ではあるが、これは変化に乏しくて、自分にはまったくおもしろくもない。この学校口コースを数年前から歩いてみたかった。以前歩いたコースも、今回のコースも、年に数人歩くかどうかといったコースだろう。相当に荒れ果てているのは覚悟のうえだ。

 本山小学校は廃校となっているが、建物はそのまま残っている。本当はここに車を置きたかったが、今日は、町全体に工事車両が多く、松木沢の方にダンプがどんどん入って行く。本山小学校に向かう細い道にも車が入って行った。そこいらに車を置くわけにはいかない。下山予定の舟石林道にも入ってみたが、手頃な駐車地が近くにはなく、墓地の先、銅親水公園手前の無料駐車場に車を置いた。ここから、本山小学校までほぼ2kmある。仕方がない。

(取り付き付近)


 今日は鋲付きのゴム長で歩くことにする。ある程度の雪もあるだろうし、ガレ場もあるだろう。この時期、ゴム長歩きが結構快適なこともある。蒸れたり、濡れるのは多少の我慢。荒れた尾根を歩く時、登山靴では自由がきかない場合には便利だ。朝から暖かく、天気が大きく崩れることはないだろう。シャツの上は薄手のフリースだけにした。7時50分発。アスファルトに鋲があたり、ジャラジャラと騒音を立てる。幸いに、外にはまだ人も出ていず、犬に吠えられただけで済んだ。すさんだ姿の製錬所。取り壊しなのか、重機が入り、青シートが目につく。信号を右に折れて橋を渡る。間もなく、登山口。8時12分。地図を広げていたら、工事車両が3台、かすめて通って行った。商工会紹介の写真通りの風景が目の前にある。

(最初のうちはおとなしかった)


 しばらく、風景を見ながら、持参してきたコース案内写真に付いた赤線に合わせて進んだ。もちろん道はない。作業した足跡が散在しているだけ。鹿除けなのか、砂防なのか、網が随所に張られ、階段状になっている。写真を撮った頃にはなかったのか写っていない。柵やら段差を越えて行くのがうっとうしくなる。写真では、迂回して尾根に出るようになっている。面倒になり、直登することにした。これが、大きなミスだった。ここからでは見えない急なガレ場が上にずっと続いていた。この辺は、製錬所の煙害をもろに受けたのだろう。植生はかろうじて、灌木が這っている程度。最初のうちは良かった。尾根もやや広い岩場で、足場もしっかりしていた。ただ、下を覗くと、恐いほど急斜面で、上がる度にどんどん学校が小さくなっていく。やがて、写真の赤線の最上部あたりに合流。日光の中禅寺湖南岸尾根の山々が真っ白できれいに見える。男体山は上に雲。

(日光方面の雪景色)

(やがてこんな所も渡る)


 商工会の紹介写真版はこれまで。ただ、あれっと思った。その先、ずっと岩場の尾根が続いている。案内地形図を見ると、赤線ルートは沢沿いになっている。これが示す沢は、ずっと左下。どこで間違えたのだろう。写真と地図が矛盾。今、北側の尾根にいる。沢に下りるにはかなり危険な位置。だからといって、振り出しに戻るには危ういものがある。ということは、このまま進むしかないということか。まさか、「ガレ場歩きで訪ねる備前楯山」になるとは思わなかった。さらに傾斜が増し、尾根が細く、痩せてきた。岩場ももろくなり、ガレている。一つ一つの岩片も、つかんで確認しないと頼りにならない。亀裂の入ったのをつかむと、十中八九、もろくて割れてしまう。むしろ、灌木の高さがせいぜい10cm程度のものが、意外と根を張っていて、つかみ所になる。四つん這いで登る状態が多くなる。蟻の戸渡りみたいなところも出現。左右が切れている。スパイダーマンだね。スパイダージジイか。目の前のことばかりに気をとられていたら、ゴム長が脱げかかった。危ない、危ない。ヒモをきつくする。休み休み、日光の山の雪景色を見ては気分を落ち着かせて這い上がって行った。最初から、こんなコースになるのが分かっていたら、ヘルメットを買って登った。それ以前に計画はやめにしていた。本当に一人で来ていてよかった。だれかと一緒なら、ロープも必要だし、万一のことがあれば責任問題だ。こんなところで滑落したら、行方知れずで戸籍抹消だろうな。そんなことが頭をよぎりながらも、風景写真を撮る余裕だけはある。

(大岩を乗り越えてようやく稜線に)


 真上に尾根が横切っている。金龍山から続く尾根。これが遠い。ようやく尾根の傾斜も落ち着き、幅も広くなった。合流。やっと解放された。9時40分。1時間半の命からがら悪戦苦闘だった。ここで天気が急変したとして、絶対に、このルートは戻らない。ここまで来たら、金龍山経由で戻れる。手の甲を見たら、キズだらけ。基本的に手袋やら軍手は嫌いで、寒い時以外はめったにつけない。確実に岩やら木をつかめない。やはり素手が確か。

(簀子橋堆積場)

(男体山の上には雲)


 相変わらずのヤブが待っていた。積雪が多くなった。ザックの左右にくくり付けたストックの先が木の枝に引っかかり、歩行を妨げる。スポッと抜けた感じに後ろを振り向いたら、ストックの先が枝の間に挟まっていた。左下に簀子橋堆積場。相変わらずのチョコレート色。洪水でもあったら、町だけではなく、渡良瀬川に土砂とともに流れ、とんでもないことになる。いっそのこと、恥部を観光名所にして、そのあがりで保全経費に回せばいいのにとは素人考えか。

(石垣山)

(備前楯山に続く尾根)

(不明板)


 石垣山9時54分。備前楯山が目の前に見えてきた。冒頭写真の左が備後楯山、右が備前楯山。雪がさらに深くなる。まだゴム長よりも超えない深さ。ケモノの足跡が多くなる。しばらく休憩。今日の予定は、備前楯山からまた戻り、途中の適当な沢を下りるつもりでいた。沢の状態を眺めると、沢通しに雪がついていて、これでは無理。舟石峠に出た方が無難だろう。石垣山から一旦下り、遠下から続いている尾根に向かう。ここもヤセ尾根だが、さっきまでのルートに比べたら、ヤブながらも至って楽。ケモノの足跡を追って行くのが正解。外すと雪は深くなる。前の時もそうだったが、大田峠の位置が釈然としない。この峠から、本山に下りるルートがかつてはあったのだろう。黄色のプレートが2か所にあった。いずれも、記された文字は消えていた。だれも歩かないから整備もされない。整備をすれば、簀子橋堆積場を見られてしまう。舟石峠から備前楯山を往復するだけなら、目に触れられることもない。といったところか。

(「南峰」着)


 雪質が次第に悪くなり、尾根合流直下になると、範囲が広くズルズルと滑るようになる。11時2分、尾根に合流。前回時、この分岐に赤リボンを付けたのだが、今はもうなくなっている。相変わらず、踏み跡はない。ストックの枝引っかかりに我慢できず、とうとう、ザックから外し、Wストックで歩くことにした。雪がズブズブとぬかるようになり、ちょうど良いタイミングだったかもしれない。11時14分、備後楯山。「南峰」の表示が木に打たれていた。こうやって山名もすたれていくのだろう。山名を持つ程のたいしたピークでもないけど、山名のいわれもそれなりにあるものだ。

(備前楯山山頂)

(正面に社山)

(袈裟丸連峰)

(遠くに丸く皇海山)


 舟石峠からのルートに合流。トレースはない。だれも歩いていないということ。11時25分、備前楯山到着。いつも思うが、ここの景色は素晴らしい。景色を眺めるだけが目的なら、舟石峠から登るにこしたことはない。展望がなかったものが一気に広がり、感動も大きいだろう。男体山はまだ雲。横根山から、地蔵岳、薬師、男体山、社山、袈裟丸連峰。皇海山の頭も見える。白根山は見えないスポット。今年になって行った中倉山、そして、沢入山、オロ山、庚申山。目の前には石垣山からのルート。しばらく景色を楽しんだ。目の前には、荒涼とした足尾の山々。

(舟石峠コースを下る)

(舟石峠駐車場)


下山ルートは、今さら悩むべくもない。舟石峠ルート。気になったのは、トレースがなかったこと。しかし、何となく、窪みらしきものも確認でき、こちらは、標識やテープも充実している。迷うこともない。雪質はくさりかけ状態。かなり抜かるようになり、ワカンを装着。ところが、この雪質、跳ね上がった雪がやたらと背中にあたる。さらに、足を上げる際に重い。かえって歩きづらくなり、すぐに外した。熊のようなケモノの足跡が横切っている。そろそろ冬眠から覚め、活動を始めたようだ。随所にある「関東ふれあいの道」表示。トレースがなくとも迷うことはない。舟石峠の駐車場が近づく。人間の足跡が多くなるが、ここまで来てUターンする人ばかり。峠の駐車場12時15分。

(林道から備前楯山)

(鉱山神社の鳥居)

(駐車場)


 今日の天気は、午後から曇り予報だったが、確かに、雲が厚くなってきている。舟石林道を下る前に昼食。おにぎり2個。男体山は相変わらず雲を山頂につけている。長い林道歩き。カーブミラーがあったが、山頂でセルフを撮ったから、今日はもういい。雪はない。ぽかぽかしている。鳥のさえずりには春を感じる。車が全然通らない。この林道、見所も結構あるが、寄り道するには気力が足りない。せめて鉱山神社だけでもと思い、足を向けたが、かなり高いところにあるらしく、鳥居の先まで行ってすごすごと戻って来た。皇海山からの帰り道、銅親水公園まで、この林道を歩くのが嫌で、かじか荘でタクシーを呼んだ。事前に自転車をデポしておいて、自転車で下ったこともある。歩いたのは初めて。今日のような陽気、風情のない林道歩きだが、ハイキングがてらなら飽きない、嫌みのない林道だ。駐車場に着いたのは13時14分。峠の駐車場から30分といったところか。駐車場でゴム長を脱いで見ると、かなり痛みが入っていた。知らずに雪も入ったのか、靴下がかなり濡れていた。フリースも、いつの間にやら破れていた。

※敢えて記すまでもありませんが、このルート、特に、松原、金龍山から続く尾根への合流に、ここに記したルートを使うことはお薦めいたしません。自己責任といった無責任な表現も使いません。私が歩いたルートは「学校口コース」ではありません。よく調査の上で、確実な「学校口コース」を歩いてください。あくまでも、個人的なの体験談です。ちなみに、金龍山コースはまさに自己責任です。

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2 コメント

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Unknown (ぶなじろう)
2010-03-15 22:56:16
備前楯山は、社山に行くようになってからしばしば聞く名前です。でも、社山からの展望としてまだ確認できておりませんです。
地図を広げてみましたが、細かい地名が無く、なんとなく、このあたりを歩かれたのかなぁ、と、想像いたしました。
写真を見る限り、そら恐ろしいコースに見えます。おいらなら、かなり早めに敗走していたと思います。
銅親水公園起点の山歩きに興味をそそられつつあります。今年は、何回か出かけてみようと、手帳のカレンダーにしるしを付けましたです。
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ぶなじろうさん (たそがれオヤジ)
2010-03-16 05:51:22
確かに恐ろしいコースです。さっさと見切りをつければよかったのですが、引き返せぬところまで来ていましたから、敗走もままなりませんでした。
足尾と日光間の山々は、かなりのマイナー、オタク系ですが、変化に富んでいて、それなりにおもしろいです。とにかく長いです。熊に要注意ですね。
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