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映画『アウトフィット』

2024年01月05日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

1956年のシカゴ。
英国人のレオナルドは、
受け付けをしている女性のメイブルと共に、
高級で特注の紳士服の仕立て屋を営んでいた。


その店をギャングと思われる柄の悪い男たちが
しばしば訪れ、
店の奥にあるポストのようなものに
封筒を投げ込んでいく。
実は、レオナルドの店は、
ギャングたちの上納金の納め場として使われており、
しばしば連絡文書も投函されていた。

ある夜、レオナルドの店へ
ボスの息子のリッチーと
ボスの右腕のフランシスが駆け込んでくる。
ギャングの電話を盗聴されたテープの争奪戦で、
敵対するギャングと銃撃戦になり、
リッチーが腹に被弾したのだ。
その傷を縫うようフランシスに銃で脅され、
レオナルドは裁縫道具を使って言われたとおりにする。
こうして、レオナルドは、
ギャング同士の抗争と、
リッチーとフランシスとの後継争いに巻き込まれていく。

やがてボスが乗り込んできて、
射殺されたリッチーの死体を納めた箱の周囲で
盗聴した密告者(ネズミ)の探索に進み、
メイブルまでが疑われるようになる・・・

という話が、仕立屋を舞台に展開する。
仕立屋内部からは一歩も外へ出ない
最後にようやくドアの外にカメラは出る。
おそらく原作は舞台劇で、
装置が一つ、主な登場人物は6人という、
まさにアメリカ的な「ウェルメイドプレイ」だろう、
と思ったら、
エンドクレジットを見ると、
その記述がないから、
どうやら映画オリジナル作品のようだ。
確かに、時間の経過や、
最後のくだりなど、
舞台でどうやったのだろう、
と思っていたので、
オリジナルなら、なるほどと思わせる。
空間を一つにしたままで
サスペンスを盛り上げる、そのこころざしは買える。

主人公のレオナルドは、
自分を仕立屋ではなく、裁断師だといい、
布地をいかに効率よく裁断するかの解説が冒頭である。
背広がどういう風に成り立っているか、
という蘊蓄もめざましい。
レオナルドはロンドンのサヴィル・ローで
仕立屋の訓練を受けた人物。

[サヴィル・ロー・・・ロンドンの仕立屋が密集した通り。
           日本語の「背広」の語源となた。]

当地で店を開いていたが、
どうして妻子を亡くし、
アメリカに渡ってきたかの事情も
途中で明らかになる。
そして、後半、
この人物がただの仕立屋ではないことが次第に分かって来る。
また、メイブルの過去も明かされる。

レオナルドを演ずるのは、
「ブリッジ・オブ・スパイ」 (2016) で
アカデミー賞の助演男優賞を受賞した
マーク・ライランス


ローレンス・オリビエ賞を2度、
トニー賞を3度受賞した、舞台のベテランだから、
存在するだけで、雰囲気を醸しだす。

盗聴装置のテープが
カセットテープによく似た形状なのも興味をそそる。
オランダのフィリップス社が
カセットテープを開発したのが1962年だから、
それ以前のアメリカ電機会社の試作品のようだ。
1958年、アメリカのRCAが「カートリッジ」を考案している。

最後はレオナルドの策略で
ギャングは壊滅する。
レオナルドは店を閉め、
どこへともなく去っていく。
黒澤明の「用心棒」を彷彿としたのは、私だけか? 

密室空間のワンシチュエーションのみで描かれる、
クライムサスペンス。
ギャングの抗争の行方、
死体が発見されるのではないかというサスペンス、
誰が密告者かという謎の解明、
様々な仕掛けが炸裂し、
ハラハラドキドキと観客を最後まで引き込む。
プロフェッショナルの仕事をからませた、
知的策略の話作りに感心した。

監督はグレアム・ムーア
脚本はムーアとジョナサン・マクレイン

2022年製作の映画だが、
日本では未公開、
Netflixで1月1日から配信。
時々こういう作品に当たるから、
Netflixをやめられない。

アウトフィットとは
主に衣服や装備、一式を指す言葉。
組織やグループを指すこともある。
この場合は、シカゴ・ギャングの組織の名称と
仕立屋をからませたもの。



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