自由民主党の総裁選挙が終わった。
現職の岸田総裁が出馬を見合わせたため、
史上最多の9名が立候補。
テレビ出演や討論会を繰り返す間に、
小泉進次郎氏のメッキがはがれ、
逆に政策通の高市早苗氏の株が急上昇となった。
第1回投票では過半数を取った候補がいなかったため、
高市氏と石破氏との決戦投票となった。
第1回投票では、高市氏が党員・議員票ともにリードし、
一時は「日本初の女性総理」への期待が高まったが、
第2回投票では、
石破氏215票、高市氏194票で
石破氏の当選となった。
10月1日の臨時国会で首班指名を受けて、
石破氏は日本国総理大臣になり、
10月27日には、
衆議院選挙が予定されている。(時期について、野党は反発)
第1回投票は国会議員票と党員票(都道府県票)の比率は1対1だが、
第2回投票は国会議員票が8に対し、都道府県票1になるから、
実質、国会議員が石破氏を選んだことになる。
近く解散総選挙が行われる公算が大きいことから、
国会議員が「選挙の顔」を選ぶ総裁選であり、
保守色の強い高市氏より、
リベラル色の強い石破氏の方が
穏健派の保守層の票が獲得出来るという目算が働いたのだろう。
落選すれば「ただの人」になってしまう議員にとっては、
少しでも自分の当選に有利になる総裁を選んだということだ。
また、高市氏は靖国神社への参拝を公言しており、
もしそれをしたら中国・韓国との関係が悪化する、
という懸念があった。
いずれにせよ、国会議員の選択の結果であるが、
第1回投票で国会議員票がわずか46票だった石破氏が
72票だった高市氏を逆転したのは、
それなりの理由があったと思われる。
第1回投票で2位以内に入れなかった候補の支持者の
票の行方を分析する向きもあるが、
私は勝敗の分かれ目は、
第2回投票前の
それぞれ5分間の演説にあったと見ている。
石破氏は、最初の方で、
「私は至らぬ者であります。
多くの足らざるところがあり、
多くの方々の気持ちを傷つけたり、
いろんないやな思いをされたりした方が多かったと思います。
自らの至らぬ点を心からおわび申し上げます」
と述べた。
石破氏には、「裏切りの歴史」がある。
1993年に細川護熙政権が誕生して
自民党が野党に転落した時、
自民党に離党届を出し、
新生党へ参加したのだ。
その後はあっさりと自民党に復党。
2002年の小泉純一郎政権で
防衛大臣に抜擢された時も裏切った。
伊吹文明氏から目をかけられ伊吹派にいたにもかかわらず、
初入閣後に「閣僚は派閥に属するべきではない」「派閥は旧態依然」として、
派閥を離脱。
麻生太郎政権では、閣僚を務めていながら
“麻生おろし”に加担するなど、
常に恩義のある人を裏切り続けていた。
だから、いわゆる「国民的人気」がありながら、
自民党内での支持者は少なかった。
その事実を暗に認め、謝罪したことで、
「そうか、本人も自覚しているのか。
そして、謝罪している、そろそろ許してやろうか」
という心境になった議員もいるのではないか。
そして、石破氏は、
後半、
「日本を守りたい。
地方を守りたい。
国を守りたい」と
愛国の心情を吐露し、
最後に、決定的な言葉を口にする。
「来たる国政選挙において、
同志が、一人残らず
議席を得ることができるように」と。
自分の当選を願う、議員心理の琴線に触れたのだ。
対して高市氏の演説。
岸田総理への思い、 総裁選で多くのことを学ばせていだいたこと、
など述べたが、
石破氏と内容が同じで、後追いの印象を与えた。
そして、何回かミスを犯す。
冒頭、女性として決戦投票に残ったことを強調し、
「女性総理」への期待をにじませたが、
そんなことはわざわざ強調しなくても、見ていれば分かる。
女性の進出を望まない男性議員心理を逆撫でした。
そして、最後に公明党の新代表への思いなどを述べたが、
こんな場で持ち出す話ではない。
自公連立政権で
公明党が政策の足かせになっていることを
快く思っていない議員もいたことだろうから
逆効果だった。
しかも時間オーバー。
そんな枝葉に触れずに、
得意の経済を持ち出し、
経済の建て直しをして、
日本列島を豊かにし、
かつての栄光を取り戻しましょう、
と訴えるだけでよかったのだ。
最終決戦に残ったら、
どんな演説をしようと、
検討する時間が無かったのだろうか。
そういう助言をするスタッフもいなかったか。
この二人の演説が勝敗の分かれ目だったと私は思っている。
「最終演説を聞いて決断する」
と言っていた議員もいた。
21票差といえば、
11人の票が動くだけで逆転する僅差だ。
二人の演説を聞いて、
石破氏に投票することに決め議員は少なからずいたはずだ。
政治家は言葉の力を持っていなければならない。
随分前の、総裁選で、
複数の候補の演説を聞く機会を得たが、
他の候補が空疎な言葉を繰り返す中、
石破氏の演説が一番心に届いたことを覚えている。
私は以前から高市さんを強く推しており、
アメリカも女性大統領が誕生するかもしれない中、
日本も初の女性総理、という光景を見たいと思っていたが、残念だ。
しかし、選挙の結果は、神聖なものと受け止めなければならないだろう。
そして、今後のこと。
石破氏は総裁選に当たって、
金融所得への課税強化や
法人税の増税を言っている。
そんなことをすれば、
国民の投資意欲を削ぎ、
会社が内部留保に走り、
賃上げもせず、
せっかく終わりかけたデフレ経済が元に戻ってしまうのに、
何を言っているのだろうか。
増税し、緊縮財政をしたら、景気が冷え込んでしまう。
それが分からないとしたら、
石破氏は本物の経済オンチだ。
選挙翌週の株価下落がその懸念を見せている。
国会では野田佳彦代表の立憲民主党と対峙することになる。
立憲民主党で最も保守的な野田氏と
自由民主党で最もリベラルな石破氏との対決、
という不思議な構図が興味深い。
既に書いたとおり、
今回の総裁は、
国会議員が選んだものだ。
その選択の結果は、
議員たち自身が受け止めなければならない。
仮に落選したとしても、
それは自身の選択の結果だ。
顔のことを言っては悪いが、
石破さんの顔は陰気だ。
しゃべり方も陰々滅々としている。
とても先頭に立って国民を引っ張る個性ではない。
政治家になると人相が悪くなる、という説があるが、
初当選当時の写真と比べて愕然とした。
日本の政界の汚濁を生き延びて来た悪相だ。
今後、外国首脳との会談でも、
見るからにさっそうとした外国首脳に対して、
日本の首相が陰気な表情で対する光景は、
予想しただけで暗くなる。
通訳を介しては、言葉の力は通じない。
特に、トランプ氏などは毛嫌いするだろう。
衆議院選挙、来年の参議院議員選挙がヤマだ。
リベラルな石破氏を選んだことで、
穏健な保守層や無党派層の票の流出は食い止めたかもしれないが、
自民党の岩盤支持層は、確実に離れるだろう。
もし連敗するようなことがあれば、
そこで石破氏の自民党総裁は終わりだ。
その時どうなるか。
小泉氏は選挙対策委員長になるというから、
その場合、小泉氏も共倒れだ。
もしかして、そこまで見通した布陣なのか?
10月の衆議院議員選挙、
11月のアメリカ大統領選挙、
来年の参議院議員選挙。
日本の命運が決まる。