[書籍紹介]
洗剤メーカー、花森石鹸の総務部員・真柴忠臣(38歳)は、
ある朝、出勤の支度をしている時
テレビのニュースで、
自分の会社が買収されたことを知る。
買ったのは、同じ洗剤メーカーで外資系のブルーアだった。
社内は混乱する。
さっそくアメリカから送り込まれて来たターナー社長はじめ、
ブルーアからの出向社員が乗り込んで来て、
「ブルーア花森」が出発する。
しかし、社内は分裂状態で、
営業は花森組とブルーア組に分かれてそれぞれの商品を売り、
商品開発は花森組とブルーア組が対立し、
一触即発の状態。
製造、調達の部門は、
両社が縄張り争いをしているせいで業務の重複が発生する。
「買収した側」と「買収された側」との
心理的葛藤は、そう簡単には収まらない。
しかも、外資系と創業者が育てた日本的企業との間には溝が深すぎる。
改善しようとすると、
今までの自分たちのしてきたことを否定されたように感じてしまう。
買収後100日間が一番重要で、
その間に「買収があって、こんないいことがあった」と感じられなければ、
買収された側の抵抗はずっと続く。
いつまでも反発が続けば、
人員削減という手も使われる。
人を残し、企業としてのレガシーを残す戦いは、
どの買収企業でもしている悩みだろう。
ルールが最適だったかどうかはこの際置いておいて、
そのルールーの中で一生懸命働いてきて、
ある日突然新しいルールが導入されたら、
嫌悪感も抱くだろう。
自分達が居心地よく働いてきた環境を
何とか守りたいと思うのも、理解できる。
ブルーア花森としての財務体制の見直しは、
花森側からしたら
自分達が管理してきた財布を
ブルーアに持っていかれた気分だし、
物流拠点の見直しは、
自分達が整備してきた道を
突然「明日から使い物になりません」
と言われたようなものだ。
ターナーは、忠臣に向かってこう言う。
「花森石鹸がブルーア花森としてまとまる気がないなら、
花森石鹸側の人員削減もやむをえない」
開業の地の本社を売却し、
本社機能をブルーア日本支社に移転する案も出る。
そうなれば、キャパシティの関係から、当然、人員削減が起こる。
忠臣は、総務の職務として、
両者の融合のために腐心し、働くが・・・
若い社員の本音が面白い。
飲み会は、社会人になって嫌いになった。
上司との飲み会だなんて、
若手社員が楽しめるわけがない。
気を使って、気を使って、
面白くもない自慢話と武勇伝を楽しそうに聞いて、
「勉強になります」と頭を下げて、
お説教が始まったら神妙な顔をしてみせる。
二つの異質な会社の統合。
なかなか興味ある題材だ。
題名や装丁の印象として、コミカルな本かと思ったら、
意外や、ごく真面目な内容だった。