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数学

数学全般

京大の文系数学について

2011-03-06 14:11:01 | 大学受験
京大の入試問題が、Yahooの掲示板に投稿されて、予備校生が逮捕されました。
カンニングは悪い事です。

私は、家庭教師として、指導する立場として、考えさせられる事がありました。
高校生に、どのように数学を教えればよいのか?

私の場合は、文系の方、理系の方と、指導の方法は違うという認識を持っています。
さらには、理系の方でも、数学科と数学科以外の方でも、指導の方法は違うという認識を持っています。



さて、京大の第3問、第4問の問題を解説したいと思います。
※数学Ⅱが学習済みを前提に説明をしています。

難しい式は、置いておいて、大まかな問題の流れを知りたい方は次のタイトルの
<(一般の方向け)問題の大まかな流れ>
から読んでください。


<第3問>
実数 a が変化するとき、3次関数 y = x3 - 4x2 + 6x と直線 y = x + a のグラフの交点の個数はどのように変化するか、a の値によって分類せよ。

<解説>
x (x の関数) と a を分けるように考えるのが一般的です。
x3 - 4x2 + 6x = x + a
⇔ x3 - 4x2 + 5x = a

※文字定数a と、x の関数を分けることが出来た。

※初めの式を変形して、変形後の式でも、求める交点の個数が同じこと
初めの式は、y = x3 - 4x2 + 6x と y = x + a
変形後の式は、y = x3 - 4x2 + 5x と y = a


f(x) = x3 - 4x2 + 5x とおくと
y = f(x) と y = a の交点の個数を求めることと、同じである。

y = f(x) のグラフより
f(x) = x3 - 4x2 + 5x

<微分の公式>
y = xn ⇒ y' = n・xn - 1 (n は自然数)
y = a・xn ⇒ y' = an・xn - 1 (n は自然数)

<因数分解の公式>
acx2 + (ad + bc)x + bd = (ax + b)(cx + d)
組み立て除法を使う。

f'(x) = 3x2 - 8x + 5 = (x - 1)(3x - 5)
f'(x) = 0 ⇔ x = 1, 5/3

<増減表の書き方>
増減表は、y = f(x), y' = f'(x) よりグラフが書けるようにすること

増減表は、(ブログなので、ちょっと特殊な書き方をします)
f(x) | ↑ f(1) ↓ f(5/3) ↑ より

f(x) = x3 - 4x2 + 5x
f(1) = 1 - 4 + 5 = 2 ∴ f(1) = 2

3x2 - 8x + 5 = 0 ⇔ x2 = (8/3)・x - 5/3

f(x) = x・((8/3)x - 5/3) - 4((8/3)x - 5/3) + 5x
= (8/3)x2 - (5/3)x - (32/3)x + 20/3 + (15/3)x
= (8/3)((8/3)x - 5/3) - (22/3)x + 20/3
= (64/9)x - 40/9 - (66/9)x + 60/9
=-(2/9)x + 20/9
※次数下げと言われる方法です。 これだと、計算ミスが少ないです。

f(5/3) = -(2/9)・(5/3) + 20/9 = -10/27 + 60/27 = 50/27 ∴f(5/3) = 50/27

よって、増減表は
f(x) | ↑ 2 ↓ 50/27 ↑ より

1個 (a < 50/27 または 2 < a)
2個 (a = 50/27 または a = 2)
3個 (50/27 < a < 2)
..... Ans

<第3問のまとめ>
1)初めの式を変形して、変形後の式でも、求める交点の個数が同じこと
2)微分の公式
3)因数分解の公式
4)増減表が書けること
5)増減表より y = a の個数が分かること
以上の5点が問題を解くための必要な知識になります。



<第4問>
xy 平面上で、連立不等式
x ≦ |2| ・・・①
y ≧ x ・・・②
y ≦ |(3/4)x2 - 3| - 2 ・・・③
を満たす領域の面積を求めよ。

<解答>
<絶対値について>
絶対値は、数の大きさを表す
0 ≦ a のとき、x ≦ |a| ⇔ -a ≦ x ≦ a

①より
x ≦ 2 ⇔ -2 ≦ x ≦ 2


③より
y = |(3/4)x2 - 3| - 2 を考える。

<絶対値の関数について>
|f(x)| とは
f(x) ≧ 0 のときの x の範囲(範囲①) ⇔ y = f(x):①の範囲
f(x) < 0 のときの x の負の範囲(範囲②) ⇔ y = -f(x):②の範囲

(3/4)x2 - 3 = 0 を解くと
⇔ (3/4)x2 = 3
⇔ x2 = 4
⇔ x = -2, 2

() (3/4)x2 - 3 ≧ 0 ⇔ x ≦ -2 かつ 2 ≦ x
() (3/4)x2 - 3 < 0 ⇔ -2 < x < 2

よって
() x ≦ -2 かつ 2 ≦ x のとき
y = |(3/4)x2 - 3| - 2
y = (3/4)x2 - 3 - 2
y = (3/4)x2 - 5

() -2 < x < 2 のとき
y = |(3/4)x2 - 3| - 2
y = -((3/4)x2 - 3) - 2
y = -(3/4)x2 + 1

①、②、()、()より、グラフは次のようになります。



<因数分解の公式>
acx2 + (ad + bc)x + bd = (ax + b)(cx + d)
組み立て除法を使う。


②と() の交点は、
x = -(3/4)x2 + 1
⇔ (3/4)x2 + x - 1 = 0
⇔ 3x2 - 4x + 4 = 0
⇔ (x + 2)(3x - 2) = 0
⇔ x = -2, 2/3

<2次方程式の解と係数の関係>
ax2 + bx + c = 0 の解を、α、β(α≦β)とおくと ※数学Ⅱなので、α、βは実数として、不等式を書いています。
ax2 + bx + c = a(x - α)(x - β) と書ける
α + β = -b/a, α・β = c/a が成り立つ

<2次関数と直線の交点の関係>
y = ax2 + bx + c と y = mx + n の交点を、α、β(α≦β)とおくと
ax2 + bx + c = mx + n ⇔ ax2 + (b - m)x + (c - n) = 0 ⇔ a(x - α)(x - β)
上記の2次方程式の解と係数の関係より、解と交点が同じことを意味します。


<積分の定積分の公式>
∫ [β → α] a(x - α)(x - β)dx = |a|(α - β)3/6

次の積分の公式は、使わないが基礎知識として必要
∫ xndx = xn + 1/(n + 1) + C (n ≠ -1、C は積分定数)


求める領域を、面積 S とすると
S = ∫ [-2 → 2/3] {-(3/4)x2 + 1}dx - ∫ [-2 → 2/3] xdx
= ∫ [-2 → 2/3] {-(3/4)x2 -x + 1}dx

※解と係数の関係より
= ∫ [-2 → 2/3] {-(3/4)(x + 2)(x - 2/3)}dx

※積分の定積分の公式より
= |-3/4|(2/3 - (-2))3/6
= (3/4)・(8/3)3/6
= 64/27 ..... Ans


<第4問のまとめ>
1)絶対値についての理解
2)絶対値の関数についての理解
3)解と係数の関係について
4)積分の定積分の公式
以上の4点が問題を解くための必要な知識になります。



<(一般の方向け)問題の大まかな流れ>
とりあえず、難しい式はありますが、大まかな流れを説明したいと思います。

<第3問>
実数 a が変化するとき、3次関数 y = x3 - 4x2 + 6x と直線 y = x + a のグラフの交点の個数はどのように変化するか、a の値によって分類せよ。

(第3問の説明)
第3問は、2つのグラフから、変数a によって、交わる個数が異なるので、変数a は、どんな時に、交わる個数が異なるのか?
その時の変数a の条件を求めてくださいという問題です。

(解説)
まずは、式変形をします。
y = x3 - 4x2 + 6x と y = x + a

y = x3 - 4x2 + 5x と y = a

y = x3 - 4x2 + 5x のグラフの性質を微分法で調べます。
調べた結果が、増減表より分かります。
次の1)⇒2)⇒3)の順番です。

1)微分法
f(x) = x3 - 4x2 + 5x
f'(x) = 3x2 - 8x + 5
f'(x) よりグラフの凹凸が分かります。

グラフの凹凸より増減表が書けます。
2)増減表
f(1) = 2
f(5/3) = 50/27 より

f(x) | ↑ f(1) ↓ f(5/3) ↑ より
f(x) | ↑ 2 ↓ 50/27 ↑ より

1)、2)のグラフの性質より
3)増減表より個数が分かります。
a が1個、2個、3個と分かれることが分かります。


<第4問>
xy 平面上で、連立不等式
x ≦ |2| ・・・①
y ≧ x ・・・②
y ≦ |(3/4)x2 - 3| - 2 ・・・③
を満たす領域の面積を求めよ。

(第4問の説明)
不等式で表現することによって、領域がある面積になります。
その時の面積を求めます。

(解説)
絶対値の理解が必要ですが、次のグラフになります。


x = -2 ⇒ x = 2/3 の範囲の2つのグラフ、y = -(3/4)x2 + 1 と y = x の間にある領域の面積を求めます。
グラフの面積の領域を求める場合に、積分の定積分の公式を使います。
S = ∫ [-2 → 2/3] {-(3/4)x2 + 1}dx - ∫ [-2 → 2/3] xdx
S = 64/27

不等式から、ある領域が分かります。
グラフで領域を表すので、その領域の面積を、積分で求めます。



さて、京大の文系数学を「普通の解説」と「一般向けの解説」をしました。
このような数学が、社会ではどんなことに役に立つのかが分かりませんね。
社会に役に立たないなら、勉強をしない方がいいと思います。
実際に、文系の方ならば、高校で数学を学習したら、社会人になって使う機会は、ほとんどないと思います。

科学の発展している分野からすると、文系の数学は、基礎の基礎の程度しかありません。
重力の落下の速度を求める場合には、微分法の理論が必要になります。
ケプラーの法則(第2法則)のときに、太陽と惑星の関係を調べるとき、惑星の速度と、移動した時の面積が等しいという関係が成立します。
この時の面積を求める時に、積分を使います。

すごく、平たくにいうと、ロケットを打ち上げるのに、微分法、積分法の数学を使うということになります。
最近は、GPS の機能を色々な場面で目にすることがありますが、科学の発展に役に立っています。
GPS の衛星などを打ち上げるまでの理論では、微分法、積分法の理論が見えない部分で使われていると思います。

なので、文系数学のすごい発展の理論が、現在の科学の発展の一部だと考えれば、良いと思います。