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かけ算には順序があるか

2011-09-20 00:21:00 | その他
平成23年5月23日に「かけ算には順序があるか」が発売がされました。

私は、特に専門の数学の分野はありません。
しかし、純粋数学を大学の数学科で学んだ者としては、「純粋数学の常識」と「一般の方の数学の常識」の違いに違和感を持ちました。
数学科は、数学を厳密に扱う分野ですけど、数学科以外の理工系(物理学、化学、生物学、工学など)だと、数学を道具として使う点は、数学科とは異なる印象を持っています。


<<著者の考え>>
著者は、かけ算の交換法則が常識であり、順序があるとは考えたことがなかった。
どうも、本の内容を読むと、数学の歴史、小・中・高の常識までの理解の範囲での記事の内容であった。


<<一般的な数学として>>
純粋数学では、解析学、代数学、幾何学を大きく分けると3つに分けることが出来ます。
ただし、最先端の純粋数学の研究では、明確には3つの分野は分かれていません。

<<代数学の群論より>>
代数学では、演算の公理を抽象的に定義して、さまざまな定理があります。
その代数学の中には、群論があります。

『群の公理』とは
群論とは、集合 G があります。
要素 x、y、z ∈ G があります。

① x × y ∈ G
② x × (y × z) = (x × y) × z (結合法則)
③ ∃e s.t. x × e = e × x = x for ∀x ∈ G (単位元の存在)
④ ∃a^(-1) s.t. a × a^(-1) = a^(-1) × a = e for ∀x ∈ G (逆元の存在)

この①、②、③、④を『群の公理』といいます。

※④を除くときの①、②、③をモノイド群(半群)と言います。

一般的に『群の公理』の演算子は「*」と表示します。
群論とは、集合 G があります。
要素 x、y、z ∈ G があります。

① x * y ∈ G
② x * (y * z) = (x * y) * z (結合法則)
③ ∃e s.t. x * e = e * x = x for ∀x ∈ G (単位元の存在)
④ ∃a^(-1) s.t. a * a^(-1) = a^(-1) * a = e for ∀x ∈ G (逆元の存在)

この①、②、③、④を『群の公理』といいます。


<注意>
「*」を「×」、「+」と入れかえてもよいです。
「×」のときを乗法群、「+」のときを加法群と区別をします。


『群の公理』の中では、x * y = y * x の交換法則はありません。

実は、次の(A)、(B)と区別します。
(A) x * y ≠ y * x (非可換群)
(B) x * y = y * x (可換群またはアーベル群)


代数学では、
(A) の非可換群は、一般的に純粋数学として考える事象です。
(B) の可換群(アーベル群)は、特別な事象として考えます。

小・中・高(数学Ⅱ・B)までは、(B) の可換群(アーベル群)について学んでいました。
一般的な非可換群で考えると、順序を区別します。


<<集合を考える>>
もう一度、『群の公理』を見て下さい。
集合 G とあります。
この集合 G とは、何を意味しているのでしょうか?
「かけ算には順序があるか」の集合 G は「自然数」を意味しているようです。
「自然数」は可換群(アーベル群)になります。

純粋数学では、集合 G は「実数」、「複素数」、「行列」、「四元数」などを意味しています。
「実数」、「複素数」は、可換群(アーベル群)になります。
「行列」、「四元数」は、非可換群になります。


<<数学者の考え(正確には代数学の考え)>>
「かけ算には順序があるか」の本の中には、数学者である、遠山教授や矢野教授の名前を出しています。
遠山教授の専門は、整数論、代数関数論です。
矢野教授の専門は、微分幾何学です。

遠山教授や矢野教授が、代数学として考えるとき、非可換群で考えることが一般的であることは知っています。
代数学より考えれば、非可環群なので順序を区別することは分かっていました。

しかし、厄介なことは、集合 G が、自然数や実数などのため、可換群になることです。
可換群なので、順序を必ず区別する必要はなかったのです。
集合 G が、可換群の自然数や実数などのため、「どちらでもいい」という、あいまいな表現となりました。
====「かけ算には順序があるか」の本(p14)より =====
数学教育協議会を率いて、日本の算数・数学教育に絶大な影響力を与えいた遠山啓の意見は、6×4 でも 4×6 でもどちらでもいい、というものです。
=========================================

それはなぜかというと、非可換群の身近な事柄がないため、一般の方に説明が出来なかったのです。

実際には、小・中・高(数学Ⅱ・B)までは、すべて可換群(アーベル群)についての計算を学ぶ内容になっています。
初めて、高校の「数学C」 の中で非可換群の行列を学ぶことになるのです。


<<まとめと結論>>
小学生には、1度は非可換群として「6×4」と「4×6」は順序を区別することを教えます。
それから、可換群(アベール群)なので、「6×4」と「4×6」の計算の結果の値は等しいので交換法則を教える。
という手順で教えることが算数・数学教育だと思います。

代数学では、非可換群が一般的であることを、前提に数学の議論をします。
その中で、可換群になる対象を研究します。
そういう意味では、可換群は特別な事象なのです。

大事なことは、非可換群を前提に意味を考えることが大事です。
「かけ算」、「たし算」の順序を区別する意味も含むことは分かると思います。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なぜ非可換であることを前提にしないとならないのでしょうか? (積分定数)
2015-02-16 13:24:36
はじめまして。算数の話になぜ群論が出てくるのか理解できません。事実として複素数までの掛け算・足し算では交換法則が成り立ちます。なぜ算数の勉強で非可換を前提にしないとならないのでしょうか?格子状に並べて3×4も4×3も同じ結果になることが分かればそれで十分だと思います。
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Re:なぜ非可換であることを前提にしないとならないのでしょうか? (LogicalInSpace)
2015-02-22 22:19:43
★積分定数さんへ

> はじめまして
mixi で、さんざんやり取りをして、はじめてではないのでは!?

> 格子状に並べて3×4も4×3も同じ結果になることが分かればそれで十分だと思います。
mixi でも、何度も書きましたが、かけ算の交換法則(順序)は、肯定も否定もしませんよ。

どうでもいいですけど、何かの実験結果ではないので、「事実として」という言葉を使うのでしょうか?
「法則として」となぜ、書かないのでしょうか?

また、「掛け算・足し算」と学ぶ順番を逆に書くのは、何か意味でもあるのですか?
小学生で学ぶ順番は「足し算・掛け算」なので、日本語としては「足し算・掛け算」と書くのが一般的だと思いますけど。

小学生が分かり易い方法で、教えてあげればいいのでは!?
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