くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

「贖罪」~人は刑罰で更生するか

2012-02-20 23:56:26 | 書籍の紹介
言って聞かせてわかる者もいれば、わからない者もいます。
厳しく接しなければ自堕落になる者もいれば、ほめて励ましたほうがやる気を出す者もいます。
結局のところ大切なのは、自発性と自律性を引き出すことにあるけれど、
そのための方法に、万人に共通の王道はありません。

乱暴な例え方かもしれませんが、
犯罪者を矯正・更生させるのは、子供を育てることと同じです。
ひとりひとりに合わせた方法を見つけ、実践していくしかありません。
誰にでも当てはまるような正解などない。

そう思わざるをえない本でした。

 贖罪」 読売新聞社会部 著 / 中央公論社 刊

多くの受刑者が、刑務所では真面目に刑に服し、
被害者や遺族への償いを続けても、出所するとやがてやめてしまいます。
「人が人を裁くことの難しさ」 なんて言葉は裁く側の言い訳にすぎません。
「人だからこそ、反省して悔い改め続けることが難しい」 のです。

何の非もない命を身勝手な欲望で奪った罪。
永遠に戻らない命に対してできる償いとはなんでしょう。

以下、本書の目次です

第1章 量刑の真実
     (人間にしかできない作業;東名高速二児焼死事件の遺族と加害者の一〇年;
     連合赤軍事件とリンチ殺人犯の更生;介護殺人と執行猶予後の自殺;
     夫を殺した罪を償う;実刑志願した薬物依存者;経済事件での量刑;
     性犯罪再犯者に科す刑罰のむなしさ;裁判員の決断と裁判長の約束)
第2章 矯正の現場
     (徳島刑務所暴動事件;妻子を奪われたマブチモーター社長の訴え;
     極寒の刑務所で向きあった無期囚と刑務官;元労相が味わった屈辱;
     服役十二回でも反省は遠く;交通刑務所の開放的処遇;
     暴力に頼った少年院;被害者の苦しみと向き合う;刑務所に通う受刑者の母たち;
     所内放送に込めた僧侶の思い)
第3章 更生への険しい道
     (女子高生を殺した無期懲役囚の出所;続かなかった遺族への償い;
     経歴隠し孤独な日々;再犯防止プログラムとその限界;
     わいせつ繰り返す加害者と支えきれぬ家族;五千万円恐喝事件の元少年の明暗;
     満期出所から一週間後の強盗殺人;自立更生促進センターと住民の困惑;
     出所者を雇う社長たち)
第4章 明日の課題
     (無期懲役の終身刑化;放置される満期出所者;就労支援の様々な試み;
     ノルウェーの緩やかな刑罰;性犯罪者情報を公開する米国;
     英国が作った連携機関マッパ;処罰より治療目指す米国の薬物法廷;
     科学の力で再犯防止;加害者と対話する被害者の願い;
     刑罰は犯罪者を変えられるか)

蛇足ですが、一応、法学部出身の刑法専攻だったんです。


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