いまの日本に求められているのは、
坂本龍馬や高杉晋作ではなく、勝海舟です。
幕末も現代も、政権が弱体化してがたがたしているのは同じですが、
幕末には「異国」という明確な「外敵」が存在しました。
だから当時の日本には「尊王」「佐幕」「攘夷」「開国」と、
さまざまな主義主張がありながらも、
人々は「独立国としての日本を守る」という共通の志を持っていました。
現代の日本には、そうした明確で統一された方向性がありません。
あるのは、「安心で安全な暮らし」とか「努力した者が報われる社会」とか、
漠然としたスローガンにすぎません。
「日本がなくなってしまう」
幕末と違い、いまの日本にはそういう心配がないからこそ、
政治家や官僚は、国民の耳に心地よいことばかりをならべて、
自分たちの保身や特権を守ることばかりに固執していられるのです。
いまの日本に必要なのは、政治家や官僚という、
改革すべき当事者のなかにあっても私心を捨て、
広く公のためにみずから損をかって出られる、
そんな気力と胆力をもった人物です。
幕臣であった勝海舟は、
徳川幕府が終われば、その職も失うことになるにもかかわらず、
日本の将来だけを考えて江戸幕府の幕引きに尽力しました。
そのため上司からは疎まれ、暗殺者には二十数回も命を狙われました。
それでも少しもひるむことがなかったのは、私欲がないからに他なりません。
自分の議席や議員特権を失う可能性があってもなお、
議員定数の削減に真剣に取り組む国会議員が何人いるでしょう。
自分の天下り先や高額報酬を失う可能性があってもなお、
公務員改革を当事者側から必要だと認め、協力する官僚が何人いるでしょう。
いまの日本に必要なのは、それができる政治家であり官僚です。
当然、そんな政治家や官僚は、仲間内から嫌われます。
誰もが賞賛するスーパーヒーローでは、日本を変えることはできません。
もとより、坂本龍馬の名を口にしたり、
騎兵隊を率いる高杉晋作を気取っているような、
格好だけの政治家では、何をかいわんやです。
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