江戸東京博物館で開催中の「大浮世絵展」に行ってきました。
この企画展では、
国内外から300点を超える代表的な作品を一堂に集め、
浮世絵の原形となった江戸初期の屏風に描かれた風俗画から、
本の挿絵などに使われた単純な墨摺り絵に始まり、
やがて「彫り」や「摺り」の技術や染料の品質が向上し、
浮世絵全盛期の錦絵(多色摺り木版画)へと発展する過程を観ることができます。
「絵なんて写真で見ても同じ」なんて思ったら大間違い。
髪の毛一本一本の緻密さや色をのせていない空摺りの衣服の模様、
とても木版画とは思えない鮮やかなグラデーションなど、
実物でなければ決してわからない迫力が伝わってきます。
夜桜図〔絹本着色〕 葛飾応為(北斎の三女)の作
夜空に映る木々の影、ほのかな灯篭の灯、
明かりにに浮かび上がった色白の美女と色鮮やかな着物。
印刷物では決して伝わらない見事な表現力と技術力に、
多くの観覧者がため息をついていた作品です。
やはり印刷と違って、実物には描いた人の想いや息遣い、
その時代の空気のようなものが作品にこもっているような気がします。
作者が実際にこの紙に手を触れ、息を殺して技をふるい、
作者によって、作者よりも長い命を与えられた作品が持つ力です。
印刷物になってしまうと、それは半減してしまい、伝わりません。
ましてや電子媒体になれば、それは単なるデータ、記録に過ぎません。
本当は夜桜図のポストカードがあれば欲しかったのですが、
販売していないので図録を購入することにしました。
少々値段は張りますが、
会場には掲示されていない摺工程の説明や紙の判型、
絵師の生没年表などが掲載されており、
浮世絵についてさらに詳しく知ることができます。
また、展示替え予定の作品もすべて掲載されています。
「大浮世絵展」は東京会場閉幕後、
3月11日から名古屋、5月16日から山口でも開催されます。
「大浮世絵展」を見たあと、
常設展フロアで開催の特集企画「東海道五十三次」も見学。
ご存じ、歌川広重の浮世絵シリーズ「東海道五十三次」を中心に、
江戸時代に大流行したお伊勢参りと当時の旅事情を紹介しています。
展示会場の様子(こちらは写真撮影OKです)
古写真や当時の資料の展示。
東海道五十三宿場町の特産物や名物などというのもあって、とても面白いです。
広重が10歳の時に描いた「三保松原図」が初公開されています。
歌川広重の「死絵(しにえ)」
「死絵」とは、人気役者や高名な文人・画家が亡くなったとき、
追悼の意味をこめて作成された肖像画のことです。
展示されている広重の遺書には、
「髪がないので死後は剃髪など不要」などと書かれ、
なんだか広重の人となりを感じさせます。
両国の夕景(博物館に隣接する両国国技館)
東海道五十三次展もとてもおもしろく、
観終わったときには、すっかり日も暮れてしまいました。