くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

クレーマー扱いされないために(19)

2011-10-05 23:02:17 | 正しいクレームのつけ方
正しいクレームのつけ方【発言編】
その14. 会社は社長がすべてではありません。

偶然なのか、世の中そういう傾向になったのか、
最近、立て続けに「社長に会わせてほしい」と言う来訪者が続きました。

一人目は用件を尋ねると、「大きな仕事の話しがある」と言います。
当然、社長に会わせるはずもなく、名刺を預かってお引取りいただきました。
反社関連企業かどうかを照会しましたが、その記録はありませんでした。
社内では、M資金の類ではないかと疑っています。

その数日後、また受付から「社長への面会要求」の連絡が入りました。
「すわ、クレーマーか不当要求か」と身構えて会ってみると、
今度は真新しいスーツに身をつつんだ飛込みのセールスマンでした。

今年3月に卒業したものの就職が決まらず、
ようやく今の会社に試用期間で採用され、飛び込みのセールスをしていると言います。
試用期間中に一定の成績を上げなければ、正式採用にならないと泣きを入れます。
「どんな会社も、いきなり『社長に会いたい』じゃ相手にしてくれないよ」 
そう優しくアドバイスして、やはりお引取り願いました。

それから間をあけずに来社した三人目は、正真正銘のクレーマーでした。

「社長に会わせろ」と言う人には、二種類のタイプがあります。
ひとつは、「会社のトップと直接話せば、結論が早い」と考えるタイプ。
そしてもうひとつは、「社長に言うぞ」という心理的圧力をかけようとするタイプです。

しかし、個人経営の会社でもなければ、
社長みずからが個別案件に対応するわけはありませんし、
社長が何でも勝手に決めることができるわけでもありません。

会社では、仕事の話しであれば「営業」が話しを聞きますし、
売り込みの話であれば「購買」が対応します。
クレームであれば総務やお客様相談室の出番です。
それぞれ対応する部署があり、組織で対応し決定するから「会社」なのです。

そうであるにもかかわらず、いきなり「社長に会いたい」と言われれば、
企業の担当者は、「この人、どこかおかしいぞ」と身構えるのが普通です。

交渉に不利な先入観をもたれる言葉のひとつです。


政局茶番劇に見る上手なクレームのつけ方

2011-06-04 09:22:20 | 正しいクレームのつけ方
「自発的辞任の意思を引き出した」としてご満悦だった二日から一転、
翌日の菅首相の談話を受け、「話しが違う」と怒り心頭となった鳩山前首相。

報道を見る限り、菅首相は「すぐに辞任する」とも、「一ヶ月以内に」とも言っていません。
「一定の目処が立ったら」と言っているだけです。
「一定の目処」を自分の都合の良いように解釈したのは鳩山前首相のように見えます。

これをクレーム処理に置き換えてみます。

菅首相(クレームを受ける側)の視点。
「いまはいつとは約束できないから『一定の目処』と言っただけ。
 相手の言ったことを、自分の都合の良いように解釈して責め立てるのは、
 反社会的組織のやり方と同じ。とんでもない悪質クレーマーだ」

鳩山前首相(クレームをつける側)の視点
「あいまいな回答でその場をしのぎ、
 あとで自分の都合のいいように言い換えている。
 責任感も誠意もまるで感じられない、とんでもない会社だ」

クレーム処理的に見ても、永遠に平行線の泥沼に陥ったと言えます。
少し距離を置いて、客観的に見れば、
菅首相の発言は、のらりくらりと時間稼ぎをする悪質企業そのものですし、
鳩山前首相のそれは、物事を自分の都合のようようにしか解釈しない、
悪質クレーマーそのものです。

このドタバタを見ていると、クレームをつけるときの大事な教訓が見えてきます。

クレームに対して、企業の担当者がその場で結論を出すことはありません。
これは「先延ばし」ではなく、「組織の仕組み」ですから、
担当者を責め立てても、悪質クレーマーにされてしまうだけです。

大事なのは、その場で「いつまでに」という具体的な期限を「切る」ということにあります。
さらに、期限はクレームをつける側ではなく、相手に決めさせることが重要です。

回答期限、あるいは次の交渉日などを相手に決めさせることで、
相手は期日までに何らかの進展をさせるべく、真剣な対応をとらざるを得なくなるのです。

かつて鳩山前首相は普天間基地移設問題で、
「五月までに」という期限を引き出され、みずから墓穴を掘りました。
そして今回は、逆に相手からいいように言いくるめられた格好です。
おそらくこの人には、視野狭窄の自覚などないでしょう。

この人の「お人よしぶり」には、呆れるのを通り越して感心すらしてしまいます。


クレーマー扱いされないために(18)

2011-05-11 23:09:04 | 正しいクレームのつけ方
正しいクレームのつけ方【行動編】

その3.拘束時間はほどほどに

謝罪に向かった会社の担当者が、訪問先で長時間にわたって拘束され、
または軟禁状態で解放してもらえないことは時どきあります。

クレームの内容に相応の説明をしても、
「納得するまで」「一筆書くまで」は「帰さない」と言われることもあります。

玄関先で立たされたまま、同じ話しを延々と何時間も繰り返されたり、
座敷に通されて、数時間にわたって正座のまま足をくずせず、
苦痛に耐え続けるというようなことは、それほどまれなことではありません。

謝罪に来たのだから当然でしょうか?
担当者の判断で足を崩したり、辞去することは、誠意のない対応でしょうか?

確かに、直立不動や正座を崩さずに話しを聞いたり、
お詫びしたりすることは、ひとつの誠意の示し方ではあります。
しかし、それも程度問題です。

気持ちがおさまらないという心理は理解できますが、
一個人である担当者が肉体的・精神的に苦痛に耐えることと、
クレームに対して謝罪し、解決(損害賠償など)することとはまったく別問題です。

頭に血が上っているときほど、このことを忘れがちになるものです。

長時間にわたって担当者を拘束し、根競べをしても問題は解決しません。
それよりも、新たな折り合い点を提案するなどして、
さっさと社に持ち帰らせ、小刻みに対応させたほうが得策といえます。

「腹いせ」や「懲らしめ」の気持ちは誰にもあります。
しかし、そういうときこそ立ち振る舞いに気をつけなければ、
いつの間にか悪質クレーマーの仲間入りをしていることがあります。

ちなみに私の最長拘束時間は3時間でした。
相手は反社会的勢力で、場所はアダルトショップの事務室です。
「営業協力しろ」とも言われましたが、丁重にお断りしました。


クレーマー扱いされないために(17)

2011-05-03 22:01:49 | 正しいクレームのつけ方
震災でご無沙汰していましたが、久々の再開です。

正しいクレームのつけ方【行動編】

その2.主張の内容にふさわしい格好と態度で

このカテゴリーの(15)〔2011年2月19日〕で書いた、
悪質クレーマーのためのマニュアル本には、
クレームをつける会社へ出向くときの格好として、
このように書かれてあります。

「サラリーマンが普段ちょっと着ないスーツがベスト。
 歩き方一つでも大きく見せる、肩で風を切る歩き方でOK!」

何を着ようが、どんな歩き方をしようが、確かに個人の自由です。
「見かけで人を判断するとはケシカラン」とのお叱りは、
至極ごもっともなご意見です。

しかし、それは学校のl教室で行われる討論会での話しならば・・・です。
社会はそんなに単純なものではありません。

どんなに優秀な営業マンでも、
そのような服装や態度で顧客先を訪問したら、
契約をとれないどころか、下手をすれば出入り禁止です。

同じように、クレームを言うにしても、
上手にクレームを言う人は、「服装」や「言葉遣い」などに気をつけています。

服装や態度で相手に威圧感を与えたり、
心理的に優位に立とうとしたりする目的が見え隠れしていないだけ、
クレームを言われるほうも、その主張に真剣に耳を傾けられるのです。

また、威圧感を与えようとする意図がない場合でも、
物事にはそれにふさわしい格好と態度というものがあります。

過去に経験した例では、こんな人がいました。
ある中年の男性からクレームがあり、家に呼びつけられました。
指定された時間に訪問すると、その男性はステテコにランニング姿。
リビングに通されると、冷蔵庫からやおら缶ビールを取り出し、
一人でグビグビと飲みながらクレームを言い始めました。

交渉場所が自宅でしたから、ステテコにランニングが普段着なのかもしれません。
また、この人にとっては、ビールは水と同じ感覚だったのかもしれません。
しかし、訪問したのは身内や友人ではないのです。
その男性がクレームを言う立場であることを差し引いても、
とても交渉相手を迎える態度とは思えません。

酔いの回り始めた眼(まなこ)でクレームを言われても、
どこまで本心・本気なのか疑わしくなってしまいます。
それで「誠意、誠意」と口にされても、まるで真剣さが伝わりません。

「お客 対 店員(社員)」「苦情を言う人 対 言われる人」
この関係だけで自分が相手よりも上位であると考え、
立ち振る舞いに意を解さずにいると、
いつの間にか悪質クレーマーにされている危険があります。

「お客 対 店員(社員)」という関係である以前に、「人間 対 人間」なのです。



クレーマー扱いされないために(16)

2011-03-02 23:00:00 | 正しいクレームのつけ方
正しいクレームのつけ方【行動編】

その1.レシートや現品は捨てず・忘れず!

先日、このカテゴリーの(15)で書いた、
悪質クレーマーのマニュアル本には、こんなことが書かれていました。

「『レシートは、お手元にございますか?』と問われても、
  『なに言ってんの? あんた』って感じで『ないよ』でOK!
 最後まで一貫して、お客様であると堂々としていないと相手に舐められる!」

会社やお店が、クレームのもととなる現品やレシートを確認するのは、
最初から相手を悪質クレーマーだと疑ってのことではありません。
それは会社やお店が、自身の法的責任の存在を確認するようなもので、
相手が誰に限らず、もともと決められた苦情対応のルールに過ぎません。

普通の会社やお店であれば、仮に「ない」と答えられても、
購入時期や時間、買ったときの状況などを質問し、
会社(お店)の記録や社員(店員)への調査によって事実の確認を行うはずです。

会社やお店は、お客様が普通に受け答えしている限り、
レシートや現品がなくても、それで直ちに悪質クレーマー扱いすることはありません。

「なに言ってんの? あんた」という態度をとったり、
「客を疑うのか!」と声を荒げたりして、
はじめて悪質クレーマーの仲間入りをするのです。

しかし、購入時期や買ったときの状況を聞かれ、
この対応を「クレーマー扱いされた」と感じる人も多いでしょう。
レシートや現品がなければ、どうしても事実確認に時間がかかってしまい、
それで「疑われている」という気持ちになるのは当然だと思います。

したがって、そんな思いをしないためにも、
レシートや現品は保管しておく必要があります。

レシートや現品の有無で、対応の時間に雲泥の差が出てしまうのです。