正しいクレームのつけ方【発言編】
その14. 会社は社長がすべてではありません。偶然なのか、世の中そういう傾向になったのか、
最近、立て続けに「社長に会わせてほしい」と言う来訪者が続きました。
一人目は用件を尋ねると、「大きな仕事の話しがある」と言います。
当然、社長に会わせるはずもなく、名刺を預かってお引取りいただきました。
反社関連企業かどうかを照会しましたが、その記録はありませんでした。
社内では、M資金の類ではないかと疑っています。
その数日後、また受付から「社長への面会要求」の連絡が入りました。
「すわ、クレーマーか不当要求か」と身構えて会ってみると、
今度は真新しいスーツに身をつつんだ飛込みのセールスマンでした。
今年3月に卒業したものの就職が決まらず、
ようやく今の会社に試用期間で採用され、飛び込みのセールスをしていると言います。
試用期間中に一定の成績を上げなければ、正式採用にならないと泣きを入れます。
「どんな会社も、いきなり『社長に会いたい』じゃ相手にしてくれないよ」
そう優しくアドバイスして、やはりお引取り願いました。
それから間をあけずに来社した三人目は、正真正銘のクレーマーでした。
「社長に会わせろ」と言う人には、二種類のタイプがあります。
ひとつは、「会社のトップと直接話せば、結論が早い」と考えるタイプ。
そしてもうひとつは、「社長に言うぞ」という心理的圧力をかけようとするタイプです。
しかし、個人経営の会社でもなければ、
社長みずからが個別案件に対応するわけはありませんし、
社長が何でも勝手に決めることができるわけでもありません。
会社では、仕事の話しであれば「営業」が話しを聞きますし、
売り込みの話であれば「購買」が対応します。
クレームであれば総務やお客様相談室の出番です。
それぞれ対応する部署があり、組織で対応し決定するから「会社」なのです。
そうであるにもかかわらず、いきなり「社長に会いたい」と言われれば、
企業の担当者は、「この人、どこかおかしいぞ」と身構えるのが普通です。
交渉に不利な先入観をもたれる言葉のひとつです。