くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

ある日、病は突然に!(8)~アバスチンの効果

2014-05-12 21:15:21 | 健康のためなら死んでもいい!?
アバスチンを注射した翌日は、
眼球が炎症を起こしていないかを確かめるために検診です。

光干渉断層検査(OCT)の網膜断層写真を見ると、
昨日まであった浮腫はほとんど消失していました。
予想以上の効き目に驚いていると医師は、
この薬が効く体質の人は、翌日には効果が出ると言います。
やはり薬なので、人によって効き目が違うそうです。
とりあえず薬が効く体質で一安心です。

しかし、黄斑部周辺の腫れは少し残っており、
視野の歪み(変視症)や小さく見える症状(小視症)は、
まだほとんど改善されていません。

これから薬は更に効いてくるので、
更なる改善を期待しましょうということで、
一週間後の検診となりました。



ある日、病は突然に!(7)~アバスチン眼球注射

2014-05-11 19:12:34 | 健康のためなら死んでもいい!?
左眼網膜のレーザー光凝固をしてから二~三日すると、
施術する前よりも視力の低下が感じられました。
特に朝起きてからしばらくは視界のかすみが強く、
午後から夜にかけて少し改善するように感じられました。

レーザーから一週間目の検診では、
自覚症状に現れたとおり、黄斑部の浮腫が大きくなっていました。
但し、これはあらかじめサインした同意書に書かれていました。
レーザーの治療初期には黄斑部の浮腫が拡大し、
一時的に視力が低下することがあるそうです。
また、朝起きたときに視力が低下しており、午後になって回復するのは、
就寝時は横になっているので眼に水分が溜まりやすいためのようです。

このまま、しばらく様子をみるか、
もっと積極的に浮腫を抑える薬を注射するか、
どちらでも構わないと医師は言います。
前の病院では、二度の経過観察で鬱々とした毎日を過ごしました。
もうあのような鬱屈した日々はまっぴらごめんでしたので、
即座に、「注射してください」とお願いしました。

本来、「アバスチン」は抗がん剤として使われている薬です。
「がん」では、急速に増殖するがん細胞に栄養を供給するため、
新生血管を作る働きのある物質(AEGF)がどんどん分泌されます。
その働きを抑えるための薬が「アバスチン」なのですが、
眼疾患での新生血管や黄斑浮腫の発生もVEGFが関与していることから、
眼疾患の治療にも広く使われるようになったそうです。

抗がん剤として使用するときは点滴で全身に投与しますが、
眼疾患ではごく少量を眼球に注射するので副作用はほとんどありません。
ただし、本来は「がん治療」で保険診療が承認されているため、
眼疾患での使用は保険適用外となり保険がききません。

健康保険が適用される「ルセンティス」という薬もありますが、
こちらは保険適用後でも一回5万円以上もする高価な薬です。
これは「アバスチン」の数倍もの価格です。
(アバスチンは自費診療のため、病院によって費用は異なります)

医師は、「経験上、どちらの薬も効果は変わらない」と言います。
薬価が高い方が良く効くというわけではないし、
保険適用外だから感染症や副作用のリスクが高いというわけではないようです。
そもそも「ルセンティス」は「アバスチン」を元に作られた薬です。
製薬会社は、これまで広く普及していた安価な「アバスチン」を、
眼疾患の治療でも保険が適用されるように申請はせず、
新たに薬価の高い「ルセンティス」を眼疾患専用薬として申請したのです。
そう知ると、なんだか製薬会社の恣意的なものを感じます。

もちろん、保険適用外であるということは、
万一、不測の副作用が生じても自己責任だということです。
しかし、この病院では過去1000件以上の患者にアバスチンを注射しましたが、
感染症や重大な副作用は一件も発生していないと言います。
そこで同意書に署名し、「アバスチン」を注射することにしました。

前の病院で注射したステロイドは、
細くて長い針で眼の裏側に薬を注射するものでした。
今回は眼球に直接針を射し、眼の中(硝子体)に薬を注射するものです。

処置室の椅子に座って背もたれが倒されると、
麻酔薬が点眼され、目の周りを洗浄綿で消毒されます。
まぶたを器具で開いたままにされ、
さらに頭を横向きにして眼球を流水で洗浄されます。
洗浄はステロイド注射にはなかった処置です。
眼球に針を刺すので、より厳重な消毒が必要なのでしょう。
そして再度、薬を点眼されて顔をシートで覆われます。

眼を強いライトに照らされ、視界は真っ白です。
「左上を見ていてください」と言われ、
目を動かさないように必死で左上の空間を凝視していると、
「チクッ」とした痛みが眼にあり、針を刺されたことがわかります。
するとすぐに目の前に透明の薬品が広がっていくのが見えました。
まるで水の上に流された油が広がっていくようです。
ついつい、広がっていく薬に気を取られ、
眼球が動きそうになるのを必死でこらえます。

針が射されている時間はほんの数秒。
注射の後はすぐに軟膏らしい薬が塗られ、眼帯をされたので、
眼の中に広がった薬がどうなったのかはわかりませんでした。

その日は感染症予防のために眼帯を外さないよう指示され、
抗生物質の内服薬と殺菌点眼薬を処方され帰宅しました。
帰路、何度も何度も人や物にぶつかりそうになりながら。



ある日、病は突然に!(6)~レーザー光凝固

2014-05-02 00:27:39 | 健康のためなら死んでもいい!?
レーザー光凝固とは網膜にレーザーを照射して患部を焼く施術です。

前の病院では、
レーザーは血管が閉塞して血が通わなくなった無血管野領域に照射し、
悪質な新生血管が生じるのを防ぐために行われるもので、
私のような症例ではレーザーは意味がないと言われていました。

ところがセカンドオピニオンを求めた医師は、
それは教科書通りで間違いではないが、
レーザーで浮腫の原因となっている領域を焼くことによって、
溜まった水が自然に任せるよりも早く体内に吸収されることが期待できると言います。
要するに、レーザー照射のやり方の問題であると。

ただし、レーザーにはデメリットもあります。
網膜を焼きつぶすのですから、その部分の視細胞は死んでしまうわけで、
場所によっては視野欠損が生じることになります。

そこでどのくらいの視野欠損が生じるのかを尋ねると、
最初は視界の外側ぎりぎりの部分の網膜にレーザーを照射するので、
日常生活ではほとんど気がつかない程度だと言います。
そして様子を見て、効果がなければ、
さらに視界の内側に向かって追加の照射をすることになるのだそうです。

処置は点眼液の麻酔を注し、
レーザーを照射する機械の前の椅子に座ります。
機械にあごを載せて照射されるレンズを覗くと動けないように頭をベルトで固定され、
さらに看護師が手で頭を押さえます。
医師が機械の反対側に座り、「まっすぐ前を見ていてください」と言うと、
強いせん光が何度も放たれました。

最初は痛みも何も感じなかったのですが、
せん光の回数が増えてくると、眼の奥にズシーンとした重くて鈍い痛みと、
わずかな熱を感じ、網膜が焼かれているという感触が伝わってきます。
時間的には数分間でしたが、全部で600ショットのレーザーを打ちました。
一回で10ショット打てるそうですから、60回照射したことになります。

強い光を受けたせいで、しばらくは視界が赤く染まっていましたが、
それもすぐに元に戻り、レーザーを打つ前と同じ状態に戻りました。

レーザーが効いたのかどうかは、
一週間後の検診の結果を見てということになります。







ある日、病は突然に!(6)~セカンドオピニオン

2014-04-29 23:22:22 | 健康のためなら死んでもいい!?
いわゆる世間でスーパードクターと呼ばれる眼科医をインターネットで探し、
これまでの診療経過をメールで送ると、
「いつでもいらっしゃい」とのありがたい返事をもらいました。
そこで、前の病院の診療記録を作成してもらう期間も待てず、すぐに受診しました。

視力、眼圧、眼底検査、光干渉断層検査、視野検査など、
ひととおりの基礎検査を終えて下されたセカンドオピニオンは、
私の予想を超えた、かなりショックを受ける診断でした。

「前の先生の診断を否定するつもりも、脅かすつもりもありませんが・・・」
厳しい表情でそう前置きした医師は、「私はもっと悪い状態だと思います」と言いました。

「これは静脈分枝閉塞ではなく、
 静脈の根元の部分が半分閉塞している半側網膜中心静脈閉塞症です。
 視神経乳頭に新生血管が発生していることからもそう判断します」

要するに、静脈の枝分かれした毛細血管が閉塞して出血したのではなく、
大元の静脈の根元部分が半分閉塞したため、眼底の下半分に広く出血したと言うのです。
完全に閉塞しなかったのは幸いでしたが、今後は新生血管が増殖し、
新生血管緑内障を併発して失明するリスクもあると言います。

「網膜静脈分枝閉塞症」と「網膜中心静脈閉塞症」とでは、
静脈の閉塞場所が異なるだけでなく、治療の予後に雲泥の違いがあります。
「中心静脈閉塞」「新生血管」「緑内障」「失明」など、
インターネットで見た恐怖の単語が医師の口から次々に飛び出します。
内服薬で様子見するレベルではないため、
次の三種類の治療方法と、それぞれのメリット・デメリットが説明されました。

①レーザーによる光凝固
②アバスチンの硝子体(眼球)注射
③硝子体切除手術

もともとこの病院に来たのは、
前の病院で硝子体切除手術しかないと言われ、
その前にできる治療はないのかどうかのセカンドオピニオンをもらうためでした。
その結果、前の病院の診断より病状は悪いと診断されれば、
できることはすべて試してみるしかありません。

その日のうちにレーザーによる光凝固を行い、
後日、アバスチンの硝子体注射を行うことに決めたのでした。




ある日、病は突然に!(5)~一か月後検診

2014-04-20 23:18:28 | 健康のためなら死んでもいい!?
一か月前にステロイド薬(ケナコルト)を注射し、
一週間で黄斑浮腫は三分の一になっていたものの、
その後、変視症(視界の歪み)と小視症(小さく見える)は、
ほとんど改善しませんでした。

そして不安を抱え、一ヶ月後検診の日を迎えました。

結果は、ステロイド薬を注射した一週間後と変わりなし。
黄斑浮腫は三分の一の大きさのままでした。
どうりで自覚症状にも改善がみられないわけです。

正常な右眼に比べ、
左眼で見るものは三分の二ほどの大きさに見えるため、
まるで極端に左右の度数が違うメガネをかけているよう。
眼精疲労が激しく、集中力も極端に落ちて、
仕事の効率もモチベーションも著しく低下してしまいました。

主治医は「う~ん」とうなってカレンダーを見つめ、
「まだ患部に薬が残っている時期なので、もう一か月様子を見ましょう」
と、また経過観察の診断です。

そして、
「一か月たってもこの状態なので、浮腫が今後自然に消える可能性は低いです。
 もっと強い薬(ルセンティス)も打てますが、手術も考えておいてください」
と、突然の手術宣告を受けてしまいました。

手術とは硝子体手術のこと。
眼内を満たしている硝子体というゼリー状の物質を切除し、
還流液という体内の水に置き換える手術です。
主治医が眼球の断面模型を使って説明するのですが、もう上の空です。
もっともこの一か月間、自分の病気について、
インターネットや書籍で調べるだけ調べつくしていたので、
主治医が説明する以上の知識が頭に入っていました。

振り返ってみれば、
初診で一か月間の経過観察になり黄斑浮腫が拡大、
ステロイド薬を注射して一か月間の経過観察になり、
充分な効果が出ていないので、いままた一か月の経過観察。
自分で勉強した限りでは、症状からみて教科書通りの対応でしたが、
すべて後手後手、裏目裏目に出ています。

「こんなんじゃ、このまま任せておけない」
そう考え、「セカンドオピニオンを受けたい」と申し出たのでした。

同じ専門医であれば、
自分が専門とする医療知識のレベルに大差はありません。
大きく異なるのは、これまでの経験に基づく判断力です。