同期社員に昇進の先を越された後輩が不服そうに言いました。
「結局、会社では文章を書くのが得意で、
しゃべるのがうまい奴が出世するんですよね」
長い間、会社で人事評価の浮沈を見ていると、
出世する人には、ひとつの共通点があることに気がつきます。
それは、彼らが例外なく国語が得意だということです。
ガチガチの理系人間であろうと、バリバリの技術者であろうと、
会社の中で出世する社員は、例外なく国語が得意です。
「学生の頃は国語が苦痛だった」 という人はまずいません。
なぜならどんな仕事であってもその基本は、
相手の話や文章を正確に理解すること、
そして自分の考えや意見を相手に伝え、説明あるいは説得し、
了承してもらうことから始まるものだからです。
どんなに卓抜したアイデアを持っていても、
どんなに豊富な専門知識や資格を身につけていても、
この基本ができなければ、それは何もないのと同じなのです。
もちろん、それはあざとい文章や巧妙な話術を弄し、
思惑どおりに相手をあやつるという手練手管のことではありません。
自分の真意を的確にわかりやすく伝え、相手の心を動かすために、
どのように話題を構成し、どのような語彙や表現が適切かを考え、
状況に合った選択することができるということです。
「コミュニケーションがうまい」、ということとはちょっと違います。
あえて言うなら、「日本語がうまい」、とでもいうことでしょうか。
日本の会社で求められる国語力は、
同じ語学力でも、英語力とはまったく異なるものです。
日本の多くの会社では、
英語が苦手でも出世することは普通に可能ですが、
国語が苦手な社員は、まず出世することができません。
前述の後輩社員は海外勤務経験もあり英語もペラペラです。
そんな彼に思わずこう言ってしまいました。
「そこに気がついたのなら、クサってないで努力しようよ!」