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最近ちょっとお疲れ気味

ブラジルでの工場見学(その5)TOYODA KOKI DO BRASIL

2008-07-23 01:01:52 | 海外ものづくり事情
 久しぶりになりましたが、ブラジルでの工場見学の続きです。

 TOYODA KOKI DO BRASILは、トヨタ系の工作機械メーカー、豊田工機のブラジル現地法人です。今は自動車部品メーカーの光洋精工と合併して株式会社JTEKTになっていますが、ブラジル現地法人は今でもTOYODA KOKI を名乗っているようです。
 1973年に設立されたTOYODA KOKI DO BRASILは、約30年の歴史を持つ、旧・豊田工機グループで唯一の工作機械の生産機能を有する海外拠点であり、唯一の日系工作機械メーカーでもあります。なお、サンパウロに進出した外資系企業の多くが郊外の工業団地に進出している中、サンパウロ市内の住宅地に立地している同社は、工場も面積4,000平米と比較的規模が小さいこともあり、地域社会に溶け込んだブラジルの町工場といった趣です。

 現在、TOYODA KOKI DO BRASILはCNC研削盤と油圧式の研削盤の生産と、自動車メーカー向けの部品の切削加工や組み立てを行っています。1台約8万ドルの同社製の油圧式研削盤は、25年前の旧式モデルなのですが、ブラジルでは人気があるといいます。
 また、TOYODA KOKI DO BRASILによると、ブラジルには優秀な職人が多く、精度の悪い機械を用いても、それでいかに精度を出すか、ということに長けているといいます。実際、彼らは摺動面のキサゲ加工もこなしています。


職人さんです



キサゲ加工をやっています

 工作機械部門はこうした職人を中心とした勤続年数15~20年の熟練工が中心です。彼らは義務教育しか受けておらず、貧しくて進学できなかった者ばかりであり、同社としては彼らにできるだけ多くのチャンスを与えるため、熟練工については、これまでほとんど全員を日本へ技術研修に送り出したほか、若者については会社側が学費を負担して工業高専の夜学に通学させています。
 企業規模の小さい同社は、ブラジルの外資系企業の中では必ずしも給与や福利厚生の水準は高いとはいえないのですが、それでも従業員の定着率は高いそうです。その理由として、給料の遅配が30年間の歴史の中で1度もない(日系企業だったら当たり前と思われるかもしれませんが、かつてブラジルを襲った未曾有の経済危機の時に遅配が無かったということは実は大変なことなのです)、ということを同社は挙げましたが、前述の従業員の手厚い教育研修や、同社が従業員と地域社会との密接なコミュニケーションを重視していることも、従業員の高い定着率に大きく寄与しているものと思われます。
 同社では毎週金曜日の夕方は皆でサッカーのゲームを行い、その後は会社負担でささやかな宴会を会社の中庭で開いています。そしてその宴会には近所の住民も招き、地域住民とのコミュニケーションも図っています。同社の日頃からのこうした地道な取り組みが、従業員と地域社会からの信頼を構築し、30年間にわたるブラジルでの事業を支えてきたと言えるでしょう。

 本当に地域に密着している日系企業だな、と同社を訪問して思いました。

※なお上記の内容は2006年1月に同社を訪問したときに伺ったお話を基にしており、現在は事情が変わっている点があると思います

(その6に続きます)

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