朝、コンビーフを開けた。
おもしろい。
コンビーフの入れ物は、つねづね独特でおもしろいと思う。
その開け方は、母親から教わったのを覚えている。
缶詰を開けたことがない人にとっては、
コンビーフは難易度が高いかもしれない。
そもそも、いまは缶切りを使う機会がめっきり減ったのではないだろうか。
18歳のとき、缶切りを一度も使ったことがないという同級生がいたが、
いまでも疎遠なのかもしれない。
ところで、一般家庭において、
いつから肉が食べられるようになったのだろう。
そもそも、日本人は魚を食べても、
肉を口にする習慣はほとんどなかったという。
だから、朝からコンビーフを食べるなんて人は、むかしは滅多にいなかった。
そもそも、日本人が食していたのは鳥肉が多かった。
自宅でニワトリを飼っていて、卵を産まなくなると食用にしていたという。
卵は自宅で食べるのではなく、売りに出して現金収入にしていた。
だから、卵はごちそうで、
ハレの日や病気を患ったときくらいにしか口にできなかった。
ブタ肉を肉屋さんから買うようになったのは、
昭和30年に入ってからのことだ。
牛肉は昭和50年代になるまで待たなければならない。
もちろん、それまで食べる人がいなかったわけではない。
普通の一般家庭における平均的な話だ。
かつて、ぼくの実家でもブタを飼っていた。
物心のついた頃はすでにブタはいなかったが、
朽ちたブタ小屋はまだ残っていて、ちょうどいい遊び場だった。
いま思えば写真に撮って記録に残しておけばよかったと後悔している。
昔を懐かしむためのものではなく、
当時の生活を知る資料となり得たのだから。
ブタは飼っていても、ほとんど肉は食べられなかったという。
ニワトリを飼っていても、卵を食べられないのと同じだ。
ブタは「商売道具」であり、趣味で飼っているわけではなかったのだ。
幼い頃の父親は、朝に新聞配達をやり、
ブタのエサをやってから学校に行ったという。
兄弟も多かったから、労働が分担されていたのだろう。
高度経済成長に入り、物が溢れ、日本人の生活スタイルが変わり始めたとはいえ、
不思議と両親の「昔話」は景気の良さを感じさせない。
たまたまその部分の話がカットされているのか、
それが現実だったのか……。
あるいは、新旧が入り混ざる時代だったことを示しているのかもしれない。
現在、肉食は当たり前になっている。
牛丼は安価で食べられるし、
子どもたちはハンバーグやハンバーガーが大好きだ。
頻繁にあるわけではないが、朝にコンビーフを開ける日だってあるのだ。
いまや肉は日本人にとって欠かせない食材だ。
しかしその反面、肥満問題を引き起こしている。
食生活が見直されて久しい。
また、食の安全についてもしばしば議論されている。
飽食の時代だからこそ、そこにあるのが当たり前なのではなく、
食べ物のありがたさとあり方を、
改めて見つめることが大切だろう。
おもしろい。
コンビーフの入れ物は、つねづね独特でおもしろいと思う。
その開け方は、母親から教わったのを覚えている。
缶詰を開けたことがない人にとっては、
コンビーフは難易度が高いかもしれない。
そもそも、いまは缶切りを使う機会がめっきり減ったのではないだろうか。
18歳のとき、缶切りを一度も使ったことがないという同級生がいたが、
いまでも疎遠なのかもしれない。
ところで、一般家庭において、
いつから肉が食べられるようになったのだろう。
そもそも、日本人は魚を食べても、
肉を口にする習慣はほとんどなかったという。
だから、朝からコンビーフを食べるなんて人は、むかしは滅多にいなかった。
そもそも、日本人が食していたのは鳥肉が多かった。
自宅でニワトリを飼っていて、卵を産まなくなると食用にしていたという。
卵は自宅で食べるのではなく、売りに出して現金収入にしていた。
だから、卵はごちそうで、
ハレの日や病気を患ったときくらいにしか口にできなかった。
ブタ肉を肉屋さんから買うようになったのは、
昭和30年に入ってからのことだ。
牛肉は昭和50年代になるまで待たなければならない。
もちろん、それまで食べる人がいなかったわけではない。
普通の一般家庭における平均的な話だ。
かつて、ぼくの実家でもブタを飼っていた。
物心のついた頃はすでにブタはいなかったが、
朽ちたブタ小屋はまだ残っていて、ちょうどいい遊び場だった。
いま思えば写真に撮って記録に残しておけばよかったと後悔している。
昔を懐かしむためのものではなく、
当時の生活を知る資料となり得たのだから。
ブタは飼っていても、ほとんど肉は食べられなかったという。
ニワトリを飼っていても、卵を食べられないのと同じだ。
ブタは「商売道具」であり、趣味で飼っているわけではなかったのだ。
幼い頃の父親は、朝に新聞配達をやり、
ブタのエサをやってから学校に行ったという。
兄弟も多かったから、労働が分担されていたのだろう。
高度経済成長に入り、物が溢れ、日本人の生活スタイルが変わり始めたとはいえ、
不思議と両親の「昔話」は景気の良さを感じさせない。
たまたまその部分の話がカットされているのか、
それが現実だったのか……。
あるいは、新旧が入り混ざる時代だったことを示しているのかもしれない。
現在、肉食は当たり前になっている。
牛丼は安価で食べられるし、
子どもたちはハンバーグやハンバーガーが大好きだ。
頻繁にあるわけではないが、朝にコンビーフを開ける日だってあるのだ。
いまや肉は日本人にとって欠かせない食材だ。
しかしその反面、肥満問題を引き起こしている。
食生活が見直されて久しい。
また、食の安全についてもしばしば議論されている。
飽食の時代だからこそ、そこにあるのが当たり前なのではなく、
食べ物のありがたさとあり方を、
改めて見つめることが大切だろう。