KONASUKEの部屋

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蟻の牧場(アメイロケアリ・ヤノクチナガオオアブラムシ)221204

2022年12月18日 | 昆虫
アリの牧場。
アメイロケアリがヤノクチナガオオアブラムシを飼い、甘露を得ています。

エノキの根元に、土を被せて作られた蟻道。

一部を壊すと・・・

アメイロケアリとヤノクチナガオオアブラムシが。
人間が家畜を飼う遥か以前から、この関係は続いていたのでしょうね。

蟻道を破壊されて、慌ててヤノクチナガオオアブラムシを安全な巣内に運び込もうとしています。

ヤノクチナガオオアブラムシは口吻が大変長く、体長の1.5倍もあるそうです。

画像中央の矢印部では、体長とほぼ同じ長さに見えますが、一部がエノキの根に差し込まれており、口吻のスタート地点も頭部の下の方でしょうから、相当な長さがあることが窺えます。

左端の個体の腹端より先に、口吻が出ています。
先が曲がっているので比較しづらいですが、体長に近い長さと思われます。
頭部の後方から体の下を通ってこれだけ余るのですから、全体の長さは推して知るべし、です。

これだけ口吻が長いと、自分で移動するだけでもひと苦労でしょうね。
実際、必ずアリを伴うのだそうです。
アリの世話なしでは生きて行けない、持ちつ持たれつの関係なのでしょう。

実は、ヤノクチナガオオアブラムシの口吻が長く進化したのは、アリが口吻の短いアブラムシを選択的に補食することによって引き起こされた可能性が示唆されています。
→日本生態学会

蟻道の上の方には、ヤノクチナガオオアブラムシの卵が多い傾向。
これは蟻道内に避難させる行動が見られませんでしたね。

ところで、一般的に、ヤノクチナガオオアブラムシと蟻道内で共生するのは、アメイロケアリではなく、トビイロケアリのようです。
(クロクサアリはヤノクチナガオオアブラムシと共生しますが、蟻道内ではない模様。)
ネット上では、アメイロケアリがヤノクチナガオオアブラムシと共生したという、ハッキリとした情報が得られませんでした。
どうやらレアケースのようです。

ここで気になるのがアメイロケアリの生態。
アメイロケアリは、トビイロケアリの巣を乗っ取って生活すると考えられています(一時的社会寄生)。
今回のケースの場合、ヤノクチナガオオアブラムシの牧場を作ったトビイロケアリの巣を、アメイロケアリが乗っ取ったのではないか、と思われるのです。

ビオトープ天神の里にて観察。

アメイロケアリ
分類:
ハチ目ハチ亜目アリ上科アリ科ヤマアリ亜科ケアリ属
体長:
働きアリ4~4.5mm
女王アリ7~8mm
オスアリ7mm
分布:
北海道、本州、四国、九州
平地~山地
成虫の見られる時期:
3~11月
越冬形態?
エサ:
アブラムシの甘露、花の蜜、腐果、虫の死骸など
その他:
働きアリは飴色。
小顎髭は短く、頭部と胸部の関節部には達しない。
腹柄節の気門は低い位置にある。
眼は小さい。
前伸腹節の後方の斜面はほぼ直線状。
(ヒゲナガアメイロケアリも同様、ミヤマアメイロケアリでは明瞭に弧を描く。)
腹柄節は横から見て細く高く、先端は尖る。
女王アリは黒褐色で、触角や脛節から先は橙褐色。
触角柄節は長く扁平で、多数の立毛が生えている。
(ヒゲナガアメイロケアリ女王は触角柄節が比較的短く円筒状で、立毛を持たない。
働きアリの区別は難しい。)
結婚飛行は7~8月。
結婚飛行を終えた女王アリは、トビイロケアリ、ハヤシケアリの巣に侵入、巣を乗っ取る(一時的社会寄生)。
直接寄主の女王を殺すのではなく、トビイロケアリの働きアリがアメイロケアリ女王を受け入れ、本物の女王を殺してしまうという観察がある。
女王アリは単独。
クロクサアリに一時的社会寄生される。
林床~林縁の樹木の根元に巣を作る。
稀に木造家屋の腐朽した土台や浴室土盛りに営巣することがある。
行列を作って樹木の幹で活動する。

ヤノクチナガオオアブラムシ
分類:
カメムシ目ヨコバイ亜目アブラムシ科オオアブラムシ亜科
体長:
5mm
分布:
本州、四国、九州
垂直分布?
成虫の見られる時期:
4~11月
卵で冬越し
エサ:
エノキ、ケヤキの汁
その他:
口吻は長く、体長の1.5倍~3倍もある。
アリが口吻の短い個体を選択的に補食することによって、口吻が長く進化した可能性が示唆されている。
体は灰褐色。
無翅型は暗褐色の斑紋があり、腹節ごとに黒色の紋が一対ずつある。
腹面には5個の長楕円形の斑紋を中央部に縦列する。
頭部は前胸と融合する。
触角は6節。
第3節はわずかに湾曲し、二次感覚器を欠く。
第4節は第5節よりも短く、二次感覚器は4個。
5月に現れる幹母と11月に現れる無翅♂は角状管を欠く。
エノキ・ケヤキの地際部の樹皮で、周年生活する。
常にアリと共生しており、蟻道内で見られることが多いが、キヅタを隠れ家にする場合もある。
(幹の太い株の樹皮に土塊で作られた蟻道を探すと見つけやすい。)
トビイロケアリの蟻道内で、エノキやケヤキの根元から吸汁する姿が見られる。
クロクサアリ、クサアリモドキと樹木上で共生する姿が見られる。
秋から冬に有性世代(産卵雌虫・雄虫)が出現し、樹皮下に産卵する。

参考:
学研の図鑑LIVE新版昆虫(学研)
アリハンドブック増補改訂版(文一総合出版)
アブラムシ入門(全国農村教育協会)
虫ナビ
日本生態学会
アリ飼いのための知識ノート
日本産アリ類画像データベース
ネコ虫
KAKEN
日本生態学会
科研費
ありんこ日記AntRoom
岐阜のアリ
節足動物園
生活110番
蟻のエンサイクロペディア
JP-ANT
株式会社三共リメイク
千葉県立中央博物館
はなもく散歩
自然観察大学ブログ
明石・神戸の虫 ときどきプランクトン
Nature Photo Y&Y
嵐山町web博物誌
ご近所の小さな生き物たち
植物防疫基礎講座
東京23区内の虫2
養老の森

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